いつも自信のないポーズをしてた『FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学』 ジョー ナヴァロ
図書館で3冊、元FBI捜査官のジョー ナヴァロ の本を借りてきた。お世辞抜きに面白い。ノンバーバルコミュニケーション(言葉を使わないコミュニケーション)がこれほど、自分や他人のことを能弁に語るとは、知らなんだ。著者は、人間観察を少年時代から続け、卓越したスキルを持つようになったため、FBIにスカウトされたという人物だ。多くの写真で、それぞれの動きが何を表しているのかを解説している。
3冊シリーズがあるが、最初に発刊されている「しぐさ」の心理学1冊読めばよいような気がする。ほかの2冊は、だいたい1冊目の情報をベースにして加筆したくらいの本だった。もし、まだ読んでいなければ「しぐさ」の心理学は、読んで損なしだ。この本は手元に置いておいて、時折、参照するのが良いかもしれない。
体で最も正直な部分
FBI捜査官が注目する体のパーツ。その人の本音が出る部分とはどこだろうか。最近、見たドキュメンタリー(参考:BS世界のドキュメンタリー「ウソについての本当の話」)でも表情に注目していたので、やはり顔か目だろうかと思っていたのだが、全然違った。
「ボディ・ランゲージを読み取ろうとするとき、相手の顔から観察を始め、上から下へと焦点を移動させていく人が多い。ところが、虚勢を張って本心を隠すために一番よく利用されるのが顔だ。だから私のアプローチはまったく逆になる。FBIで無数の事情徴取をこなしてきた私は、最初に容疑者の足と脚に注目し、そこから少しずつ観察の対象を上に移していって、最後に顔の表情を読み取ることを覚えた。正直さという点について言うなら、足から頭に移るにつれて誠実さは薄れていく。」(P66)
FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫) (日本語) 文庫 – 2012/12/5
ジョー ナヴァロ (著), マーヴィン カーリンズ (著), 西田 美緒子 (翻訳)
実は、人の感情は足・脚に出るのだという。著者は、ポーカーでラッキーなカードをそろえたプレーヤーの脚が「踊っている」のを見たと述べている。ポーカーフェイスと言われるように、顔の表情は意識でかなりコントロールできるが、足の動きは意識しない(ことが多い)ので、そこに感情が出てくる。
例えば、足の向きは、話している相手に好意があるのか、遠ざかりたいと思っているのかを明らかにする。両足を開いて立つのは縄張りの主張だ。足を交差して、不安定な状態で立つのは心を許している証拠。足の組み方ひとつで、相手との間に壁を作りたいと思っているのか、心を開いているのかも分かる。本人も意識していない(かもしれない)こうした足・脚の動きは、本音を読み取るヒントになる。
このことを考えると、今、オンライン会議が主なコミュニケーション手段になっている人は、なかなか相手の本音を感じ取りづらいと言えそうだ。情報を得る手段は、ほとんど表情しかない。人間は対面している時、体全体でコミュニケーションをしているのだから、オンラインコミュニケーションには欠けているところがあるのだと、初めて実感した。知見が広がったことに感謝したい。
自信のあるポーズ・自信のないポーズ
もう一つ、自分に関しての発見があった。それは、人が自信のある時にするポーズや、自信のない時にするポーズだ。例えば、話している時に、手指を突き合わせる「尖塔のポーズ」は自信がある人が、使うハンドサインだ。アメリカの大統領や演説家がよくやる動きだなぁ。
これに対して、もみ手や、祈りのポーズなど、手をこすり合わせるなど、手を組み合わせる行為は自信のない人が取る動き。不安をなだめる時の大小行動の可能性が高い。そういえば、私のデフォルトは、もみ手だ。ちょっと悲しい。このことを学んでから、意識して「尖塔のポーズ」をしながら話そうとしてみたけど、非常に話しづらかった。
自信を持ったしぐさに、慣れていないんだろう。
親指を隠す人
手の動きで言えば、親指が見えているかどうかは、その人が自信を持っているかを示す。親指を突き立てる動きはトランプ大統領がよくするし、あれは、まさに自信を表している。自信のある人は、ポケットに手を入れる時も、親指だけが出ているのだそうだ。しかし、自信不足の人は、親指だけがポケットに入っている(笑)。そして、残念なことに、私の癖は、親指だけをポケットに入れることだった。こういう動きね。
FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫) (日本語) 文庫 – 2012/12/5
ジョー ナヴァロ (著), マーヴィン カーリンズ (著), 西田 美緒子 (翻訳) P166
印象的なエピソードがある。あるホテルの支配人が、雇ったばかりの警備員が何かふさわしくないような気がして、著者に分析を依頼した。そうしたところ、彼がポケットに親指を入れていることを発見したのだ。まるで「母親から何かをしろと言われているのを待っている子供みたいに見える」ことが分かったのだ。そこで、さっそく指導を開始し「手を後ろに組み、顎を上げる」立ち方を指導したところ、警備員は警備員としての仕事をしっかり果たせたというのだ。
そういえば、私は、道を歩いていても、どんどん声をかけられる。なんで、人を引き寄せちゃうのかなと思っていたんだけど、実はノンバーバルに「私自信ないんですよね」というメッセージを発していたのだ。だから、「この人なら大丈夫」と思って、人が話しかけてくるんじゃないか。
うわ~、悲しいな。
しかし、これは発見でもある。つまり意識して、自信のある人がするポーズを取れば、その人は自信がある人に見えるということだ。そして、形は人を作る。自信がある人として扱われていると、やがて自信がある人らしく振舞うのが自然になるだろう。そして、いつの間にか自信が湧いてくるだろう。
まさか、こんなに「自信がない」メッセージを発しているとは思わなかった。あまりにも、正直な自分のカラダを再発見してしまった。
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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq)