オーバートレーニング症候群：アスリートの身に迫る悩み
オーバートレーニング症候群は、過度なトレーニングによって引き起こされる体の不調を指します。
この症候群は、長期間にわたるトレーニングと回復の不均衡が続き、疲労が蓄積し、結果としてパフォーマンスに悪影響を及ぼしたり、場合によっては日常生活にも支障を来すことで診断されます。
この症状には疲れやすさや疲労が抜けない感じ、食欲低下、不眠、動悸、下痢、うつ状態などが代表的であり、人によって異なる症状が現れるため、自覚することが難しく、医療機関での診断も困難を極めます。
なぜ過度なトレーニングが体調不良を引き起こすのかについては、ストレスが影響しているとされます。
トレーニングによる負荷は体にストレスを与え、脳がそれを受け止めます。
視床下部はホルモンや自律神経の調整を行う役割を持ち、そこでストレスが感知されると末梢にも影響が及びます。
個人によっては甲状腺や副腎などの内分泌臓器に強い影響を与える一方、自律神経系に刺激を与えることもあり、これによってさまざまな症状が引き起こされます。
このような症状の多様性が、オーバートレーニング症候群の自己認識を困難にし、診断を難しくしています。
通常の検査では症状がわからないため、他の病気の可能性を排除し、症状の経過などを考慮して最終的に判断する必要があります。
オーバートレーニング症候群の対処法と予防法については、MLBエンゼルスの大谷翔平選手のように睡眠を重視することが重要であると言われています。
トレーニング量が増えれば休養も同じくらい必要であり、休養は体だけでなく脳にも必要です。
トレーニング中は脳が緊張状態にあるため、その緊張を解放する時間が必要です。
休みの必要な量は個人差があり、ジュニア選手の統計からは週に2日の休みを取ることで心身がリフレッシュし、オーバートレーニングのリスクを抑えることが示唆されています。
トレーニング後には失われたエネルギーを摂取し、それに見合った休養を取ることで心身のバランスを保ちます。
このバランスが崩れると不調が現れます。
また、かつては持久系競技の女子選手に特に見られるとされていた「Female Athlete Triad（無月経、骨粗鬆症、摂食障害）」は、最近では性別に限らず広く認識されるようになりました。
「RED-S（Relative Energy Deficiency in Sport）」という言葉に集約され、エネルギー不足によって視床下部からのホルモン分泌が低下し、さまざまな症状が引き起こされるメカニズムが共通していることが分かりました。
同じトレーニングをしていても、なぜかオーバートレーニング症候群になる人とならない人がいます。
これには個々の性格や環境も影響します。
責任感の強い人やリーダーの立場にいる人は、自身が疲れたと感じてもなかなか休むことを言い出せないことが多いです。
トップアスリートは限界に挑戦するため、トレーニングを限界ギリギリまで行います。
しかし、オーバートレーニング症候群を予防するためには、現在のトレーニング量とスケジュールが自分にとって最適なものかどうかを考えることが重要です。
他人との比較に囚われず、自分自身の疲労感を正直に受け止め、休養をとることが求められます。
また、指導者側も個々の許容量を把握し、適切なトレーニング量を提供することが重要です。
アスリートは自身の体の声に素直に耳を傾けることが必要であり、指導者も適切な量のトレーニングを調整することで、オーバートレーニング症候群の予防につながります。
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