精神的ストレスは筋力トレーニングに影響を与える
昨今、筋トレはストレス解消に効果があると言われている「セロトニン」という物質が生成されることで人気に火が付きました。
精神的なストレスを感じたら「とりあえず筋トレ」という発信も人気に拍車をかけた要因でしょう。
しかし本当に、誰もが同じ内容のトレーニングをすれば、誰もが等しく良い効果を得られるのでしょうか?
本記事では、「ストレスと筋トレ」の関係性について解説いたします。
ぜひ、最後まで読んでいただき、ストレスと筋トレの関係性を正しく理解していただければ幸いです。
筋トレをおこなうメリット
まず、筋トレをおこなうことで得られるメリットをご紹介します。
筋トレは現在でも人気なので、メリットに関してご存じの方は多いのではないしょうか。
ストレスの解消
睡眠の質を向上させる
「こり」「むくみ」の改善につながる
基礎代謝がアップする
美しい姿勢をキープできるようになる
筋トレをおこなうと、ストレス解消に効果が期待できる「セロトニン」の分泌が促進されます。セロトニンには脳を覚醒させる効果や、体の活動性を高める働きがあるため、筋トレがストレス解消に良いと言われています。
また、セロトニンはメラトニンという物質と密接な関係を持っており、セロトニンは気分を安定させる働きがあるのに対して、メラトニンには脳の覚醒を抑制し睡眠を促す働きがあります。
セロトニンとメラトニンは拮抗関係にあるため、セロトニンを増やす効果のある筋トレをおこなうことで、夕方以降にメラトニンが多く分泌されるようになり睡眠の質が向上するのです。
精神的なストレスによって筋力の向上に影響がでる
ここまでの内容のように筋トレをすれば体力がついたり、ストレスも軽減できたりと多くのメリットがあります。
しかし私たちは、筋トレ以外の生活においてさまざまなことを考えたり、刺激を受けたりしています。また、その刺激がストレスと感じる場合も。
それらを踏まえ、誰でも同じ内容やルールを守れば、同様の効果が期待できるのでしょうか?
結論、誰でも同様の効果が期待できることはなく、精神的ストレスが大きい場合、筋力の向上および適応能力が低下する可能性があるのです。
表のように、精神的ストレスを多く感じている人は、精神的ストレスが低い人に比べて筋肥大の反応も低いと数値で表されています。
筋トレをおこなうことで、「精神的ストレスが軽減される」「メンタルが強化される」という効果よりも、日常のストレスが筋トレの効果を低減させていることが明確に分かる研究結果となっています。
精神的なストレスは筋トレ後の回復を阻害する
精神的ストレスは、筋トレに効果にも違いが生まれますが、筋トレ後の回復にも影響が生まれてしまいます。
表のようにストレスレベルを3段階にして調査したグラフであっても、結果は一目瞭然です。
筋トレ直後でも差がありますが、60分後には大きな違いがあります。
このように精神的ストレスは、筋トレの回復力にも大きな影響を生むのです。これは筋トレだけに限らず、ケガや病気、手術からの回復にも影響が出ることが研究結果から分かっています。
日常的なストレスである仕事や家庭環境、睡眠不足なども「精神的ストレス」です。
その精神的ストレスを感じている状態で筋トレをおこなっても、思いのほかパフォーマンスが良くなかったということを一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
一例として、年末年始が多忙で、年末年始にいつもと同じ筋トレをおこなっても、同様の効果を感じられないということも実際にあり得ることなのです。
まとめ
筋トレは、人体にさまざまなメリットをもたらしてくれますが、精神的ストレスが強ければ強いほど、筋トレの効果や回復力に差が生まれてしまいます。
筋トレを書籍やSNSなどの情報通りにおこなえば、誰もが同じような効果を得られるというわけではなく、その人それぞれの精神的ストレスの大きさによって筋肥大の効果も回復力にも大きな違いが生まれます。
同じ量の筋トレをおこない、同じクオリティの筋トレをおこなえば、誰もが等しく同じ効果を得られるとは言えないということです。
これらの内容から、自身の生活に合わせた筋トレがもっとも効果的であり、筋トレ以前に整えられる精神的ストレスはできるだけクリアにすることで、本来得られるであろう筋トレのメリットを体感しやすくなるということでもあります。
筋トレはいつもと同じ量を続ければ良いというわけではなく、自身の精神的ストレスを出来るだけ軽減したうえでおこなうことが一番効果が期待できるのです。
引用参考
[1] Bartholomew JB, Stults-Kolehmainen MA, Elrod CC, Todd JS. Strength gains after resistance training: the effect of stressful, negative life events. J Strength Cond Res. 2008 Jul;22(4):1215-21. doi: 10.1519/JSC.0b013e318173d0bf. PMID: 18545186.
[2] Stults-Kolehmainen MA, Bartholomew JB. Psychological stress impairs short-term muscular recovery from resistance exercise. Med Sci Sports Exerc. 2012 Nov;44(11):2220-7. doi: 10.1249/MSS.0b013e31825f67a0. PMID: 22688829.