可哀想。だから好き。と言った母
前回の記事で、母が「自分より不幸せな人の話が好きなんだろうなって思うのよ。人の幸せな話は、好きじゃないようだ。」と書いたが、それに気付いた時の事を思い出した。
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私が高校生の時に、仲良かった中野ちゃんというクラスメイトが居た。
中学は学区が違っており、高校に入学して出会った。
中野ちゃんは、かわいくて面白かった。
当時の流行の雑誌ポパイやオリーブを見てファッションの研究したり、昨夜のMTVで見た洋楽の話や、恋バナで盛り上がっていた毎日だった。
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高校2年の時に、中野ちゃんのお母さんが急死した。
脳溢血だったと記憶している。
担任の先生と他の仲の良かったクラスメイトとで、中野ちゃんの自宅で行われていたお通夜にへ行った。
中野ちゃんは号泣していて、とても声がかけられる様子じゃなかった。
前日は元気だったし、その時の中野ちゃんとお母さんのやりとりを聞いている。
「お母さんが私の髪の毛をセットする時、髪を引っ張りすぎて痛いのよ。もーはらたつわw」って笑いながらいつものエピソードを聞いた。
それを回想して、いたたまれない気持ちで帰宅したのを覚えている。
中野ちゃんは一人っ子だ。
お兄さんがいたと聞いていたが、中野ちゃんが生まれる前に亡くなったそうだ。
中野ちゃんのお父さんは耳が聞こえないし喋ることができないから、いろんな手配をするのは当時高校2年の彼女しかいなくて苦労したって後で聞いたっけ。
お通夜から帰宅したら、母が中野ちゃんのことを聞いてきた。
その当時の私たち母娘は、友達みたいな関係で結構なんでも喋っていた。
現代で言う【友達母娘】の意味とは少し違うけれど、そういうのをイメージするのでほぼ合ってる。
「中野ちゃん、可哀想ねぇ。なにかしてあげたいわ!」
母が言う。
この口調に違和感を覚えた。
ん?気のせいかな?嬉しそうに言ってるな…。
そう思った。
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当時(今もだが)、親は正しいという刷り込みがあり親が人の不幸を喜ぶなんてことしないと思っていたんだ。
ここで昔を振り返って、私に反抗期があったのだろうかと考えてみる。
一般的な反抗期と言われる時期に、私はどうだったか。
一応、親に反抗はしてみるものの、様子を見ながらだった。
母の機嫌の悪い時は絶対に反抗的な言動はしない。息をひそめて部屋にこもる。
母が機嫌がよさそうな時にだけ、冗談っぽくばばあ呼ばわりしてみたりして、
あなたの娘の反抗期がこれですよ
的に【表現】していた。なんの小芝居だよ(笑)
話を中野ちゃんの頃に戻す。
「中野ちゃん、可哀想ねぇ。なにかしてあげたいわ!」
この母の嬉しそうに聞こえた言葉に対し、私は
それは本心?
と訝しく思った。
そして、手助けをしたいと言った割には、その後一切母から中野ちゃんに何かをすることも、話題にすることもなかったんだけど。
あの子はこれから大変よ、○○(差別用語)だから。
でも、顔がキレイしなんとかなるか( ◠‿◠ )
私ね、中野ちゃん好きよ。
お母さん亡くなって、お父さんアレだし、可哀想な身の上よね。
かわいそうでしょ、だから好きよ。
半笑いではっきりこう言った。
○○って差別用語を出した手前、弁解の意味と自分を擁護するためにいろいろ言葉を並べて余計な言葉が出たのかどうかわからんけど、その当時16,7歳の私は
ないわーない。ない、ありえない、このひと。
と思いながらも、黙って聞いていただけ。
差別用語が出るのは仕方ないさ、そういう時代だったもの。
そういうことじゃなくてさ、可哀想だから好きってなによ、人が不幸の中にいるから好きだとか言うなんて!仲良い友達のことなのにって思ったあの時のことを、今鮮明に思い出したよ。
中野ちゃんを憂う気持ちと母への嫌悪感で複雑な感情だった。
だからって、反論はしなかった私は、やはり母が怖かったのだ。
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noteのいいところってこういうところ。
文章にして、活字にして、書き終えるあたりで、一度読み返す。
客観的に読み、手直しをしながら、心の奥底にずっと仕舞ってあった黒いものを出せる行為。
ここまで書いて、やっと、母も他の人と同じように、不出来でしょうもない大したことない、愛すべき人間だってことがわかった。
母に対して、敬うべき尊敬すべき立派な人間だと思わなきゃいけないって思い込んでいた。
そう思うことを重ねてきた今まで。
母に腹が立つのは、思い描いていた敬うべき母とは違うから。
親だからって立派な人間なわけじゃない。
人の不幸を喜びがちな性質を持っているのは、もう仕方ないわw
母はどうしようもなく他人の不幸が楽しいと思うんだし、それによって優越感を感じるし、心の底から湧き出る感情がぽろっと口に出るのだろう。
世間にはこんな人ごまんといるし、私もそういう人と出会ってきたし母だけじゃないのはわかってる。
私も曲がりなりにも人の親だけど、自分が人間として立派だとは毛頭思っていない。
私だって気に入らない人間に対してとても冷淡な部分があるし、簡単に人との関係を切る。
お互い様やんな。
今まで親のことをほぼほぼ信じて、過剰に期待しすぎてたなって思った。
こうやってnoteに吐いている間はリセットできて、よっしゃ!もう平気って思うのだけどね、実際親を目の前にすると色々鬱積するのよねw
51歳にして反抗期か(笑)