夢は誰かに宣言せずとも黙々と叶えられると思った話
「海賊王に俺はなる!」と某ゴム人間は言っているが、ああいう大声で夢を叫ぶのは、本当に勇気のある行動だと思う。
私は恐れ多くて言えなかった。自分よりすごい人たちがたくさんいる中で「デザインの仕事をしたい」なんて、夢のまた夢。
一介の文学部生だった私は「そんなチャレンジはむり。自分に合う仕事をしよう」とよくお客さんと話し、よく頭を使う仕事に就いた。
それは私のもう一つの大事なことである「誰かの支えになる」という軸を叶えるために選んだ仕事だった。
一社目で私は営業になり、日々お客様と対話し、それに合わせてひたすら様々な資料を作り続けた。大学時代、サークルで広報担当だったこと、プレゼンをよく行う機会があったこと、そういった中で培われたスキルを一生懸命活用した。
一生懸命作っていると、次第に自身のお客さんに使うシーン以外にも、上司が他社へ訪問するシーンなど様々な場面で使ってもらえるようになった。そしてさらなるものをとイラストレーターを契約してもらい、広報チラシなども遍く作るようになっていった。
今に至るまで、私のデザインに関する知識やスキルはすべてが独学だ。何かを作らねばならない場面に立ち会うたびに、調べ、模倣し、身につけてきた。なのでイラストレーターでは未だに使ったことのない機能がたくさんあるし、フォトショップの写真補正はどのパラメーターが何に影響するのか、あまり分かってないのでめちゃめちゃ勘でやっている。
それでも数をこなしていると、上手に機能を組み合わせられるようになるのだから、やはり経験する機会は豊富であればある程よいなと思う。
話が逸れたが、嬉しいことにそうやって数を重ねているとスキルは伸びてくるもので。転職して、2社目に移ったあとも社内の広報用バナー作成やチラシ、WEBデザインなどたくさんデザインする機会をもらえるようになった。
「プロに外注するまででもないが、ぱっとおしゃれにデザインをしたい」そんなときに社内にいるひよっこデザイン好きの私はとても重宝したのだと思う。
数を重ねると、それを見たり、聞いたりした友人の紹介で案件をもらえるようになったり、前職の先輩から依頼してもらえるようになったりして、気づけば社内の枠を出て、一人の「デザイナー」として案件を受ける機会が増えていた。
チラシなどのデザインができるだけでなく、wixなどで簡単なHPがつくれたことや、最低限のサーバへの理解などがあったことも、選んでいただけたポイントだと思う。
「ネットのことはわからないが予算もないので、デザイン以外もいっきに相談できる人にお願いしたい」というニーズに当てはまったのだった。
いずれの知識もただの好奇心、または子供の頃からパソコンをいじくっていた中で得てきた知識ばかりで、特別に勉強はあまりしていなかった。趣味で触っていたら覚えたのだ。
まさか、趣味が仕事に活きるとも思わず、人生何があるかわからないものだなぁとしみじみと思った。
そして、今年の春から私は気づけば「デザイナー兼WEBマーケター」なような立場で独立するに至った。
まさか自分がフリーランスみたいな生き方をするようになるとはちっとも思っていなかった。
しかも諦めていた「デザイン」の領域で。
大学を卒業するとき、私は確かに「デザインは趣味としてできる、程度に社会生活を送ろう」と思っていて、実際に最初の頃は「趣味程度ですけど、ちょっとだけできます」といって、引き受けていたのだ。
それが今では、まだまだ道半ばではあるが(というか一生道半ばだろうが)、「デザイナー」と呼ばれるものに私はなっている。
「デザイナーになりたいです」なんて私は言えなかった。
それでも着実に機会があれば手を伸ばし、一生懸命アウトプットし続ける、この繰り返しで今では養父市内や但馬内でぽちぽちとデザインのお仕事を頂けるようになっている。
こんなに嬉しいことはないなぁと思う。
この経験から、私には無理だ、そう思っていても、夢が叶うこともあると思った。他にすごい人がいっぱいいる、それは本当にそうだ。
私は電通のデザイナーには絶対になれない。あればっかりは天才か、本当にデザインに夢中になれる人、もしくは努力家しかなれない。
でも但馬のデザイナーにはなれた。しかも「誰かの支えになる」という信念も合わせて貫けている。私にしては間違いなく、上々の結果だろう。
夢中になる、とか、努力する、とかそんなんじゃなくて、ただ機会に対し「黙々と積み重ねること」これが生まれ持ったもののない、凡人が夢を叶える近道だと思う。
うちの弟が「僕はメディアの仕事につきたいが、僕より好きで熱中して頑張れる人はたくさんいるから、僕には無理だ」と就職を諦めていた話を聞いたことで、私はこの文章を書くに至った。
でもまだわかんないぞとお姉ちゃんは思うぞ。弟よ。
ルフィーになんかならなくていいぞ。
もくもくと頑張れ。
ほんとにほんとにありがとうございます…!