【鬼ごっこの結果発表】
いくつものスポットライトが私を照らすように視線を感じている。どの視線も不躾なのに勇気がないから声をかけられないの。私は心の中で笑っていた。
「チキンばっかり」
「みんな女々しくて笑っちゃう」
そんな挑戦的な気持ちを隠すように私はいつもおどおどしてみせる。指をこねこねさせて、ネックレスをねじねじさせて、何もわからないふりをしている。
よく考えてみて?何もわからない女が黒い服を着る?わからない女が真っ赤な口紅を塗る?わからない女が視線を合わせないなんてそんな高等技術あると思う?わからない女が無視するなってあると思う?
あなたほどのイケメンを
そう、私はあなたに会えて無視しているの。そうやって気を引いて、その気がないふりをしてあなたを振り回しているの。わかるでしょう?そのくらいに私はあなたの気を引きたいのよ。
あなたの名前は最初から知っていた。すごく好きな名前だった。
私はバカじゃないからすべて計算ずくだったし、すべて計画のうちに進んでいった。笑ってしまうほどにあなたは私の思う通りに動いてくれた。
バカにしながらもバカにされる関係性に承知の上で身を投じていたんでしょう?それがどれだけ私を焦がしたか、どれだけ自尊心を育てたか。
感謝している。あなたのような、どこにもいない素敵な男性を私が見初めたの。あなたがみつけたって有頂天になって、パトロンみたいな気分で喜んでいるんだろうけれど、はっきりと言っておく。あなたを飼っているのは私。私がご主人様なの。それがわからないようにしているのは私の恩情よ、感謝して。
嫉妬も一端にして見せた。でもあれも振り。そんなふうに進ませるための私の計画だったの。気づくこともなかったと今唖然としているでしょう。
女が夢を見させるというのはここまで完璧でなければいけないの。
だから、あんな女みたいに、あなたの奥様のように体当たり一辺倒ではだれも見向きもしないの。かわいくて、可憐で弱弱しければあなたを懐柔できると思っているのだから笑ってしまった。
それをあなたも知らないわよね。結婚しているくせにそのへんはまだ青いのよね。知っているから恥ずかしがる必要はないのよ。
私があなたを見初めたの。
いい?間違えないで理解してね。私があなたを見つけたの。
これからあなたには勝利が約束されている。私が見初めたのだから。
その秘密をこれから教えてあげる。私のまだ誰にも言っていない秘密を。
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