【公認心理師】消去と代替行動について②
前回「【公認心理師】消去と代替行動について①」で消去のことについてお話をしてきました。その最後に、消去をするときには、その代わりとなる行動を伝えていく必要がある、と言う話をしました。そこで今回は、その代わりとなる行動、「代替行動」についてお話ししたいと思います。
代替行動とは、その名前の通り、代わりとなる行動のことを指します。何の代わりなのかというと、(不適切な)ある行動の代わりとなります。何が不適切な行動なのか(または適切な行動なのか)を考えると様々な議論がなされるかと思いますが、その文脈や状況、社会文化的に適応的ではない(適応的な)行動としておきましょう。
さて、今回も娘の例から考えていきたいと思います。「お菓子買って!の続きの話」で娘は、「お菓子買って!!」コールではない別の方法を試しました。それは説明と提案です。
と娘は伝えてくれました。
こうして、自分の今の状態と気持ちを言葉にして、どうしてお菓子を食べたいのかを伝えてくれたのです。まさに、これが「お菓子買って!!」の代替行動として出現した行動ですね。
「お菓子買って!!」コールと「説明提案」交渉には、ある共通の目的があります。娘にとって、この方法のどちらも「お菓子をもらう」ためにしている行動なのです。「お菓子買って!!」と叫ぶことも、「説明提案」して交渉することも、結果としてお菓子をもらえる、もらいたいと思っているからこその行動で、それが得られてはじめてその行動は「機能」したと言えます。
行動を考える時、この「機能」を考えることが大切になります。ある行動をした時に、結果としてどんな「良いこと」があったのか、もしくはどんな「悪いこと」があったのか、まずはそれを考えていきます。「消去と代替行動について①」でお話ししたように、行動はその結果によって増えたり減ったりするので、結果に注目することが大切です。
そして、その行動が文脈上あまりしてほしくない行動、不適切な行動だったとしましょう。その時に「良いこと」が起こっていた場合、似たような状況になった時にはまた同じ行動が繰り返される確率が高くなります。
代替行動はこの「良いこと」を変えずにに行動を変えていくようにします。結果として「良いこと」が起こるのであれば、どちらを選んで行動しても、それは嬉しいことです。そうすると、その人にとって行動のレパートリーが増え、いつも同じ行動しか取っていなかったのが、もう一つの行動をしてみようかな、と2つから選べるようになります。
この時に、最初の行動(不適切な行動)に対して「消去」を行って「良いこと」が起こらないようになっていけばどうなるでしょうか。想像できるように、「良いこと」が起きて欲しいので、不適切な行動よりも代わりの行動をする確率が高くなります。そうして、より適切な行動が形成されていきます。
一つ注意が必要なのが、「消去」と言っても本当に消えるわけではない、ということです。言葉から連想するとややこしくなりますが、その行動をする確率は少なくなりますが、行動のレパートリーとしてはずっと残ったままになります。ですので、何かのきっかけや、たまたまその行動を選択することも考えられるのです。ですので、不適切な行動が起こった時には「良いこと」が起こらないようにすること、適切な行動を選択したときに「良いこと」を起こりやすくすること、これの繰り返しが大切になります。
「良いこと」がどのような頻度や時間で起きれば良いのかはまた別の機会に話ができればと思いますが、その頻度や時間によっても行動の選択されやすさに差が出てくることも覚えておいてもらえればと思います。
ということで、今回は代替行動の基本的な部分について説明しました。消去と代替行動はセットで使っていくことを覚えておいてくださいね。
自分にできることが何かを模索しながら、とりあえずできること、発信できることから始めようと思います。少しでもリアクション頂ければ励みになりますので、よろしくお願いいたします。