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生徒の「ありがとう」に私は喜べなかった②

私は大学院まで行っていたので塾講師のアルバイトは6年続いた。ただ三年目以降は点数を取らせることに苦労しなかった。
毎年同じ問題が出るので、毎年同じ教え方をして、成績が上がる生徒を毎年見続けていた。生徒の能力差はあるが教えるペースを変えるだけなのでそこに苦労はしなかった。

一年目、二年目は内容を理解させることに重きを置いていた。テストに向けての勉強ではなく、将来に使える知識として覚えてもらえるような授業をしていた。
ただその知識ではテストの点数を取ることは難しい。テストの点数を取る知識と実際に使える知識は違うからだ。読者の中でも一度は感じたことがあるであろう
「こんなの覚えて将来何の役に立つのか!」
という言葉は間違いではなく本当にその通りなのだ。

物理でいうならエネルギー保存則という言葉がある。世の中にあるエネルギーの量は有限で 新しく生まれることはなく、また消えることはない。姿形を変えて一定量で存在しているという考え方だ。
この考え方一つで世の中のエネルギー問題がなぜ解決しないのかある程度理解できるはずだ。
現在の日本で原子力発電や火力発電の代替を自然エネルギーで!という発想が難しいことはエネルギー保存則からでも分かる。今の日本のエネルギー消費量を自然エネルギーのみでは補えないのだ。ただ残念ながら高校を卒業している成人でもこの法則を理解している人は少ない。

学生にエネルギー保存則を教えるとき最初私はこのように教えていた。ただこの知識で点数は取れない。

点Aに置ける運動エネルギー+位置エネルギー=点Bに置ける運動エネルギー+位置エネルギー

テストの点数を取らせるにはこれだけでいい。あとは問題に慣れてもらえれば点数は取れる。教える側も教えられる側も面白くない。しかし点数を上げたいと思っている生徒とその親、点数を上げることが仕事の塾。私が本当に教えてあげたいことというのはどうやらこの両者にとって必要のないものだった。

③に続く

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