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紫電 12
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14:13起立。農耕車の轍を烏が歩く。
朝、卒論を読み返してみた。思えばこの時から既に狂人化は始まっていたのかもしれない。
Electronic Dance Musicに心を委ねる。外に出ようか、執筆を行うか悩む。南風が吹いている。
委ねる。ユダ寝る。キリストを裏切ったとされる使徒の名。今朝の会話を思い出しながら、靴紐をきつく蝶結びにする。
思っていたよりは冷たい南風であった。坂を登る。
青い彼岸花とハングマンズ・ノット。この結び方を私は出来ない。
足袋屋を登った。坂上へ登る小川の上を歩いたが、紅葉吹雪は無く、誰が待っているでも無かった。
坂上という苗字はどうにも好まない。
柚子の根元に単二乾電池が二本、小綺麗に捨てられていた。竹林の門番は不気味な小人達だった。誰も近寄るまい。
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枯れた紫陽花の枝。
壮大な墓地の果てにその寺は佇んでいた。食う寝るを繰り返し牛に成り果て沼に喰われた坊主の故郷の寺。
寺を出て真っ先に目に入ったのは私の父方の苗字で、私の苗字。暖かな西陽と裏腹に何か不吉な気がしてならない。
寺を去る。巣払いは持っていない。
鍛冶屋を下る。棒切れを巣払い代わりに拾って持っている。老婆とすれ違った。微かに安堵を覚えたが、その老婆か老爺か分からぬ人は、私を追い抜いて鍛冶屋を下って行った。
空気が一気に冷えた。
最後に下った時は梅雨の明けるか明けぬかだった。天敵が群れを成して巣を張っていたので緊張したのをよく覚えている。
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湿湿としていた。こんなにからっからに渇いた日だというのに。
鬱蒼とした道を歩く。紙煙草を咥える。
庭球を楽しむ人々を見ていた。脇の小路から、先程の老人が降りてくるではないか。結局通過する列車を見る事は叶わなかった。
酒缶の積もった廃墟の中で老人がカップ焼きそばを食べながらテレビを見ていた。酒を止めようと更に強く強く感じた。
紙巻煙草は、紙と葉は自然に還るがフィルタァは永劫そのまんまと誰かが言っていた。私はフィルタァだけは必ず持ち帰って捨てる。
富士の下踏切。この何処に富士があると言うのだ。
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常陸と磐城を貫く常磐。時は令和であるのに相も変わらずこの鉄道には平成十年代から惹き付けられて堪らない。
ブラック・デビル。名と黒装束の外見に反し甘密の香りと味。唇が滑らかに甘くなる。
煙管に細切れの平和の塔を埋め込んで燃やした。重厚な焼け跡にこれまた甘い香り。
太陽が雲隠れした瞬間、玉座を降りた。
羽虫が活性化してきた。明日も気温は高いらしい。防虫は大丈夫だろうか。
猫払いのCDが宙吊りでくるくるまわる。括ってしまうとあんな風になるのかなぁ。
窓硝子に映る青空は黒く輝いていた。
黒ベリィの蕾達。
生姜焼きの香り。
銀イオンは良い香りがして落ち着かせてくれる。無性に筆を進めなければならない心地なのだ。これで失礼するよ。
続