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紫電 04

相も変わらず陰鬱な世界だ。


 愛を下さい。形骸化した物では無く、純青で純聖で純正の愛を。


 それにしても何だこの重苦しい空は。前触れか。


 白鷺は嘸かし美しいのであろう。泥に塗れた人間よりも、遥かに美しいのであろう。


 六時を回った頃は空は藍色をしていた。それがどうだ早朝から朝を迎えれば灰色ではないか。


 湿気た世界に潤いを。それは賞の名を冠す名を轟かす文豪の晩年が最も相応しい。


 私は古典が不得手である。故に、古と新の織り交ざる近代の文を好む。


 黒鳥が大勢飛んで行った。愈々か。


 視力検査を嘲笑う。私の眼力は左右合わせても零と一にも満たぬ。良い所零零八といった所か。


 「残酷なまでにかようは月と太陽」月も太陽も見えぬでは無いか。


 「違うと願うのは後ろ向きの 唯一の救いであり」


 何度引用させて頂いたか分からない一文。これ程に素晴らしい歌詩を綴れる才能があれば。


 起死回生。鬼死怪生?


 朝の連絡を待つ。昼前になってしまう前に溶けて眠りたい。


 常用薬を飲まねばならぬが、生憎食欲が無い。


 電話が鳴るまでは待ってみよう。以後も無ければ、とりあえず朝の分は飲んでしまおう。


 口内環境が枯渇している。昨晩の副作用が。黒烏龍茶を流し込む。


 黒い烏と龍の茶。似合うね。


 廃棄屑を捨てに行ったら丁度烏が啄む所であった。私もそう大差無いのだとふと思った。


 転げ落ちる無人の乳母車。躱すでも受け止めるでも無く、ただ見つめていた。


 雨が降ったら洗車しようと思っていたが、生憎の雨上がり。降られたらそれはそれで文句を言うだろう。


 結局寝ちまったよ。携帯が震えることなく目覚めたのは十時。


 下ッ腹の痛みは消えた。まだ眠い。


 土砂降りの雨が降ったら、心を洗濯出来る気がしてならない。泥まみれの心。


 泥田坊、出来損ないの倅を呪う老爺。俺もいつか祟られるかもしれぬ。


多分続く。

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