#読書感想文 猿渡由紀(2021)『ウディ・アレン追放』
猿渡由紀さんの『ウディ・アレン追放』を読んだ。2021年6月に文藝春秋より出版された本である。
最近、ウディ・アレンの作品がAmazon Primeで再び見られるようになってきた。2024年1月19日には最新作『サン・セバスチャンへ、ようこそ』が劇場公開される。
ウディ・アレンは、恋人であったミア・ファローの養女であるディランに性的虐待をしたとして、1992年に裁判が起こされ、その当時は無罪になっている。そして、昨今の#Metoo運動によって、再び映画界を追われることになった。息子のローナン・ファローが、『キャッチ・アンド・キル』でハリウッドの大物プロデューサーであるワインスタインを告発し、ピューリッツァー賞を受賞したこともウディにとっては大逆風となった。
ただ、その風向きが変わってきたようである。
猿渡由紀さんの本に答えがあるかもしれないと思い、読み進めた。本作はウディ・アレンの人生が恋愛遍歴を中心に語られており、その恋の多さに驚く。(ウディ・アレン程度のルックスでも、会話と作品が面白ければモテるのだ。まあ、俳優のキャスティング権があることによるパワーと権威、本人が恋愛体質ということも大いに関係しているだろう)
そして、ミア・ファローが趣味のように養子を引き取り、実子をかわいがり、養子たちには家事労働をさせ、身体的な虐待をしていた事実にも驚いた。すでに三人の養子が鬱による自死や貧困に苦しみ、若くして亡くなっている。
とはいえ、ウディ・アレンの養女(少女)に対する性的虐待は、やはり看過できるものではない。この一件が原因で映画界を追放されたしても仕方がない。
そんななか、ミア・ファローの養子であるモーゼス・ファローが、ウディ・アレンは無罪であるというブログ記事を2018年に発表した。
正直なところ、ウディ・アレンが無罪であるかどうかは、本を読んでも、息子のブログを読んでも、判断できない。才能がある人を特別扱いすべき、キャンセルカルチャーはよくないと単純化することもできない。
わたしはウディ・アレンの作品を集中して観ていた時期もあり、その昔、作品解説のブログを作っていたこともあるぐらい、彼のファンであった。そのブログは更新が面倒になり、「IMDbあるから、やる必要、なくない?」と思って、閉鎖してしまったのだが、監督としてのウディを嫌いになったことはない。
『泥棒野郎』『アニー・ホール』『ハンナとその姉妹』『カイロの紫のバラ』『マッチポイント』が今でも好きだ。
ただ、猿渡由紀さんの予測通り、ウディ・アレンの作品は復活(p.220)しており、ひっそりとではあるが、カムバックするのだと思われる。とはいえ、ウディは1935年生まれだから、2024年は89歳になる。これから、たくさんの作品を製作できる年齢でないことは確かだ。
そして、本作では、韓国の孤児で、ミア・ファーローの養子となり、のちにウディ・アレンの妻となったスンニ(スンイ)の存在感が圧倒的である。スンニを主人公にして一本映画が作られてもおかしくない。それぐらい波乱万丈な人生で、凛とした印象を与える女性だった。