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キャスリーン・フリン(2019)『サカナ・レッスン 美味しい日本で寿司に死す』の読書感想文
キャスリーン・フリン著、村井理子翻訳の『サカナ・レッスン 美味しい日本で寿司に死す』を読んだ。2019年6月にCCCメディアハウスから出版された本である。
わたしは外国の方の日本滞在記、エッセイなどがあるときまでは結構好きだった。イザベラ・バードの日本紀行なども楽しく読んでいた。ただ、ネトウヨ本が書店に並び、日本スゴイ!系の日本礼賛本が乱発されるようになってからは、むしろ手に取らないように気を付けていた。人間、落ちるときは反省せず、自己陶酔と自己愛で自己防衛をするのだなあと暗澹たる気持ちになった。
本書は外国人に日本を褒めてもらう系の本ではない。この『サカナ・レッスン』の冒頭には、魚をさばくことが苦手な日系アメリカ人の女性が登場して、魚料理が苦手であることに負い目を感じていることが語られる。その描写を読んで、わたしは「えらいなあ」と思った。
わたしは魚料理をまったくしない。サバの味噌煮は缶詰やレトルトしか買わないし、刺身は回転寿司でしか食べない。鮭は瓶詰のほぐしてあるもので済ませるし、ふりかけで十分だとも思っている。
怠惰なふるまいは魚だけでなく、調理全般に向けられている。そもそも、一人暮らしで、誰かに出す料理ではない。料理をするのに1時間かけて、10分で食べ終わるので、何というか、タイパ(タイムパフォーマンス)が悪いよね。(最近、知った言葉を使ってみました)ただ、タイパが悪いと思うのは、心根が貧しく、実際的に貧乏だからだと思われ、それはまたの機会に考えたい。
というわけで、アメリカ人の料理作家であるフリンさんが、魚を学んでいくエッセイであるならば、わたしにとっても勉強になるだろう、と思って読むことを決めた。
本書を読めば、魚の取り扱い方の基本はわかるし、築地市場の最後と、豊洲市場の始まりを知ることもできる。宇和島屋はすごい。とても勉強になった。
しかし、わたしが魚料理に挑戦することはないだろう。時間とお金がないこともあるが、それをする心の余裕がない。ミニキッチンなので、作業が困難を極める、という物理的な課題も抱えている。
著者の魚と料理に対する真摯な向き合い方は、清々しい気持ちになるし、前向きで明るいキャラクターなので、読んでいて心地よかった。食文化の本でもあるし、評論家ではなく、実践として、段階的にチャレンジを続ける著者を応援したくなる。
そういえば、先日、回らないお寿司屋さんの1,000円ランチを食べた。ネギトロ丼だが、おいしくて驚いた。回転寿司で食べても、1,000円前後にはなったりするので、茶碗蒸しと味噌汁がつくなら、回転寿司よりむしろ安いではないか。大人の階段を一歩上った。多分、ここが行き止まりだとは思うが、魚との向き合い方を改めて考えるきっかけになる一冊でもあった。
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