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#映画感想文209『すべてうまくいきますように』(2021)
映画『すべてうまくいきますように(原題:Tout s'est bien passe)』(2021)を映画館で観てきた。
監督・脚本がフランソワ・オゾン、原作がエマニュエル・ベルンエイム、主演はソフィー・マルソー。
2021年製作、113分、フランス映画。
映画館は満員で、ご高齢の方がとても多く驚いた。やはり、人間は自分と同年代が描かれている物語が観たいのかもしれない。
(わたしは映画が始まる前の予告編で、日本の高校生の恋愛映画の宣伝が流れるたびに反吐が出るのだが、あれはどうにかならんのかね。わたしが十代の頃より、ひどくなっている。作品のテーマやモチーフがクソみたいなものばかりで、20代男性と女子高校生の恋愛ものがあったりして、倫理観がヤバいものまで流通しちゃっている。いい加減、大人になれよ、と思う。永遠に成熟を拒否するのは若々しさではなく幼稚なだけである。おそらく、日本の映画会社には、一種類の人間しかいないのだろう)
フランス映画が成熟しているとは言わないが、何のためらいもなく幼稚さを開陳したりはしていない。この映画も、ソフィーマルソーが、毎日薬を飲み、コンタクトレンズを剥がすのに手間取ったりする、年相応の女性の日々が描かれている。(猟奇的なゾンビ映画を大好きと爆笑しながら観るシーンは何だったのだろう)
84歳の父親が脳卒中で倒れ、体が不自由になってしまう。うまく食べられなかったり、お漏らしをしてしまったことに絶望をした父親は安楽死がしたいと言い出す。娘二人は戸惑いつつも、父親の意志を無視できなくなっていく。
現在に焦点が当たっており、その日々が中心にあるのだが、もっと家族の過去を描いてくれていたら重層的になったかな、という気はする。
この家庭はとても裕福なのだが、小さな問題はあった。実業家として成功した父親は、実は同性愛者で恋人がいて、そもそも妻の両親は結婚を反対しており、結婚式にすら来なかった。妻は自分の世界を持っている芸術家で、他人とは距離を保ちたい人。でも、きっと、夫は同性愛者ではあるものの、妻のことも愛していて、妻の愛が欲しかったのだろうな、と思わせる。娘たちとの関係もすべてがうまくいっていたわけではない。
だからといって、娘たちは安楽死に賛成することはできない。しかし、父親を止めることもできない。
父親は「貧しい人たちは死を待つしかないのか。それは残念だ」と嘯く。金持ちだからこそ、自分の「死」を選ぶこともできる。でも、85歳になったら、わたしも彼の気持ちがよくわかるのかもしれない。年を取っても、死にたくない、毎日が最高じゃんって言える人生だったら最高だけれど、それって相当難易度が高いのだろうな、とも思う。
ちなみにフランスでは安楽死は認められていないので、スイスのベルンに移動して、という話だった。
日本で安楽死が認められたらどうなるかは、早川監督の『PLAN 75』で描かれている。死ぬことは決まっているのに、自分の死を経験することは絶対にできない。だからこそ、わたしたちは「死」について考え続けてしまうのだろう。
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