#映画感想文『カモン カモン』(2021)
映画『カモン カモン(原題:C'mon C'mon)』を映画館で観てきた。
監督・脚本がマイク・ミルズ、主演がホアキン・フェニックス。
2021年製作、108分、アメリカ映画だ。
A24だし、マイク・ミルズ監督だし、モノクロ映画で、かわいい子役もいるから、最高に面白いだろう、と期待値が高すぎたせいか、あまりしっくりこなかった。
主人公のジョニー伯父さん(ホアキン・フェニックス)は、ちゃんと大人を演じて、大人の責任を果たす。子どもにうんざりはするものの、おかしなことはしない。子どもを兄に預けたジョニーの妹のヴィヴも、なんというか、真っ当なお母さんであり、いい人なのだ。
甥っ子のジェシーは、いたずらもするし、おかしなごっこ遊びも好きだし、ときどき辛辣なことは言うけれど、自分に友達がいないことを知っていて、孤独な少年なのだが、理解しがたいほど、乱暴なことはしないので、それほど、ハラハラもしない。
物語は、母親のもとを離れて、伯父さんと暮らし、再び母親のもとへ戻る、というあらすじで、これは映画を観る前から、わかっていたことなので、それほど、驚く要素がなかった、というのもある。
描かれているのは、子ども時代の生きづらさでもあり、わたしには、それほど懐かしく思えなかった。むしろ、思い出したくもない、という感じだ。
ジェシーを愛おしく見られるかどうかがある種の試金石になるかもしれない。それは大人、親の視点で見られるか否か、という問題だ。おそらく、号泣できた人は、親の目を持っているのではないだろうか。
わたしは『ベルファスト』の子どもの視点から見た世界と、ある種の理想的な子どもである主人公が愛おしく思えたのだが、『カモンカモン』のジェシーの世界はきつく感じる。むしろ、ジェシーの感覚は、わからなくもない。それゆえ、そのきつさも想像できるような気になるので、余計につらかったのかもしれない。
兄が、妹の子どもを通して、妹を知る、という側面も大きかったように思う。だから、子どもとの対話によって大人に変化が起こる、という先入観が邪魔になっていたような気もする。
印象に残っているのは、自分をよく理解できているのか、という問いである。これは大人であっても、子どもでもあっても難しい。でも、自分のことがわかっていれば、危険な物事を避けたり、問題が起きても対処の方法がわかるのかもしれない。
そして、ジェシーのようなふるまいをする男の子(成人男子)って、いるんだよなあ、という嫌な記憶も喚起されてしまった。かまってほしいくせに、すぐへそを曲げ、かまってあげないとキレる面倒くさい人。ジェシーが甘ったれた成人男性にならないことを祈りたい。
調子のいいときに、もう一度見たら、またいろいろ発見があるような気もする。
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