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#映画感想文234『幻滅』(2021)

映画『幻滅(原題:Illusions perdues)』を映画館で観てきた。

監督・脚本はグザビエ・ジャノリ、原作はバルザック、出演はバンジャマン・ボワザン、バンサン・ラコスト、グザビエ・ドラン、セシル・ドゥ・フランス。

2021年製作、149分、フランス映画。

本作では19世紀前半のパリの新聞社や出版社といったメディアと閉鎖的な宮廷社会、貴族たちが描かれている。

当時のメディアと現在のメディアの手法がそう変わっていないことに驚かされた。

一つの会社が複数の新聞を所有し、ある舞台劇をA新聞では絶賛し、B新聞では酷評し、C新聞で追撃を行ったりする。論争を作り出すことで話題になるよう仕向け、稼ぐのが常套手段なのだ。批評家やライターの半分は買収されており、編集意図(発注)に合わせて記事を書く。実入りのいい仕事であるため、詩人や小説家を志していた主人公のリュシアンも、あっという間に記者になって生計を立てるほうを選んでしまう。パリで夢破れるの、早すぎる。

また舞台劇の観客の拍手やブーイングまでもが売り買いされ、仕込みの観客によって、評判や売り上げがコントロールされている。

やっぱり、ステルスマーケティングや炎上商法って昔からあったのだ。

編集長のルストーは「どんなに面白い記事だって、次の日には生ごみを包むのに使われて終わりだ。誰も事実かどうかなんて気にしちゃいない」と平然と言い放つ。そうか、情報の鮮度なんて1800年代と2023年も、そんなに変わらないのか。

ラストの「幻滅してはじめて、息が吸えるようになる」というのは、なるほどと思う。人間は何もかもに嫌気がさして、あらゆることに絶望して、厭世的な気分を知ってから、本当の人生が始まるのだ。さすが、文豪バルザック。

わたしも今、息が吸えているような気がする(笑)

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佐藤芽衣
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