#読書感想文 筒井康隆(1978)『ウィークエンド・シャッフル』
筒井康隆の短編集『ウィークエンド・シャッフル』を読んだ。
わたしが読んだのは、1978年3月に出版された講談社文庫版である。
13編の短編小説が収録されており、どれもシニカルで現代批評的な趣きがあった。
特に「佇む人」「さなぎ」「旗色不鮮明」はディストピアで、ジョージ・オーウェルの『1984年』のような世界なのだが、こんな世の中になったら怖いよね、とは思わなかった。すでに、そのような世界に突入しつつあるので、ゾッとしていない自分がいる。「ジャップ鳥」なんかは、今の日本にも通じる話で、まったく違和感がない。
表題の「ウィークエンド・シャッフル」は、ブラックコメディなのだが、醒め切った女性の視点と、あっけない結末で、読後感がよかったとは言えない。
1978年は今より戦後に近く、全体主義に対する恐れのようなものが、共有されていたのだろう、と思う。正直、令和の現在は、GoogleやAmazonに個人情報を握られ、国民は貧しくなり、防衛費を目的とした増税が叫ばれており、現実がディストピアを追い越してしまうのではないか、という怖さがあるせいか、SFをSFとして素直に楽しめなかった。まったく絵空事だとは思えなかった。
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