映画『モガディシュ』(2021)の感想
韓国映画の『モガディシュ(原題:Escape from Mogadishu)』を映画館で観てきた。
監督・脚本は、リュ・スンワン、出演はキム・ユンソク、チョ・インソン、チョン・マンシク、ホ・ジュノとおじさん濃度濃いめの121分であった。
この映画の試写が終わった後、キャストがリュ・スンワン監督のところへやって来て、「この映画は映画館で観るべき映画ですね(配信にすべきではない)」と言ったとおりで、銃撃戦や爆発音がすさまじく、映画的エンターテイメントにあふれていた。そして、ずっとハラハラしてしまった。
舞台は1990年のソマリア内戦から、駐在外交官である韓国と北朝鮮が脱出する、という物語である。
いやあ、すごかった。死体はそこらじゅうに転がっているし、子どもがにこにこ銃でごっこ遊びをしているのかと思いきや、乱射し始める始末で、人間の怖さ、不気味さも、要所要所に挟まれ、飽きさせない。
主人公たちはソマリア駐在の外交官(公務員)なので、ソマリア内戦で死ぬわけにはいかない。「ここで死ぬのは嫌だ」という思いが滲み出ており、その感情を共有できたからこそ、運命共同体としてひとつになれたのだろう。
興味深かったのは、若い外交官たちのほうが、両者とも愛国心が強く、互いのイデオロギーに攻撃的で、野心的であるという点であった。韓国のハン大使と北朝鮮のリム大使は、自分たちの立場をふまえつつも、しょせん仕事という雰囲気もあり、「家族もいるし、生活もあるから生き残らねば」というおじさんの義務感と哀愁があった。だからこそ、協力し合えたのだろう。大使のおじさん二人のほうがずっとリアリストにも見えた。(緊急事態のときに後悔しない選択をして、最善の結果を出せる人はすごい。)
ソマリアの政府軍と反乱軍のキャストを揃えるのは大変だっただろうな、と思う。群衆の描写もすごかった。
食事のシーンは、食文化が同じだからこその箸使いがあったし、最後の別れのシーンには泣かされてしまった。よい映画だった。
ジャンルとしては、『トップ・ガン マーヴェリック』と同じだと思う。アクションとエンターテイメントで、おじさんが大活躍する。
監督は『ぼのぼの』がお好きなのだという。ちゃんと見たことがないので、見てみようかしら。