#読書感想文『ネガティブな感情が成功を呼ぶ』
ロバート・ビスワス=ディーナーとトッド・カシュダンの共著『ネガティブな感情が成功を呼ぶ』を読んだ。草思社から2015年6月に出版された本である。
本書を雑に要約すると、幸福を追い求めると不幸になるし、ネガティブな出来事を避けていると鈍感になってしまう、ということであった。全体性(ホールネス)が大事なのだという。
わたしがなるほどな、と思ったのはこの一文である。
わたしは今転職活動をしているのだが、うまくいくだろう、という楽観性はなく、落ちてへこむのが面倒くさいな、と思っていたりする。でも、落ちることの不快にも慣れつつあり、落ちたからといって寝込んだりはしない。意外と平気だったりする。ただ、応募する前は、落とされたときのダメージを大きく見積もってしまう。自分は弱い、耐えられないだろう、と考えてしまうのは、やはり傷つきたくないからなのだろう。しかし、そのように予防線を張ることで、行動を抑制して、何かを得られるかというと、現実的には何も得られない。落ちることで軌道修正ができたりもする。
「人は皆、自分が将来どれほどの幸せを感じるのか予測できない」(p.25)というのも、よくわかる。きっと幸せになれるはずだと思って、行動を開始するが、それが叶ったところで、幸せになっているかどうかは、また別の話で、新たな問題が生じて苦境に陥る恐れもゼロではない。
不当な扱いを受けたときに怒りを押し殺す人々は気管支炎や心臓発作を起こす確率が高く、寿命も短くなる(p.109)という。おそらく、そのような人たちにつけこむ悪い奴らがいるので、日々の小さなストレスも多いのだと思われる。だから、その感情を否定したり、なかったことにするのは得策ではないのだ。
幸福度の高い人たちは身の回りに注意を払わず、目の前で起きていることもよく見ていないことが多い(p.146)という部分には、笑ってしまった。幸福な人には観察能力が失われ、気が付かなくなるのだ。(気付かないから幸せだとも言えるかもしれない)著者はこのような「知的ショートカット」は、時間とエネルギーの節約になるが、大きな過ちにつながりかねない(p.147)と警告している。
ピーター・ドラッカーの「幸福(ハピネス)はもういいから、やるべきことをやれ」(p.166)の言葉もわからなくもない。幸せは何かを行うときのプロセスに生じるのであって、それを目的にしてはいけないのだ。結果的に幸福になることは、もちろんあると思う。青い鳥症候群に陥ってはならない。
わたしの場合、新たなチャレンジを阻むのは、予想可能な失望、つまりネガティブな感情に襲われることを過剰に恐れてしまう、ということだと気付いた。もちろん、恥をかいたり、後悔の種を自ら積極的に作りたい人はいない。しかし、動かないことには何も起こらないし、チャンスもやってこない。
悲しみ、怒り、失望、苛立ちといったネガティブな感情はあるもので、避けられない。その感情に振り回されるのではなく、避けられないものを冷静に眺めて、受け止めていくことが、人生を乗りこなしていくためには必要なのだろう。
自分にとって嫌な出来事、嫌な感情を過剰に恐れないこと、怖がらないことがこれからの課題だなと思う。転職活動も、感情の起伏に振り回されたくないので、作業として、行動ベースでこなしていくしかないのだろう。経験が足りないからと見送ってばかりいても、結局、経験なんて詰めないのだし。
嫌な出来事を恐れるな。陳腐な言い回しだが、何もしなかったことを後悔する未来の自分を恐れよう。