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#読書感想文

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文芸書から自己啓発書まで、読書感想文として書き留めています。ご参考になれば幸いです。
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#角田光代

#読書感想文 角田光代(2016)『坂の途中の家』

#読書感想文 角田光代(2016)『坂の途中の家』

角田光代の『坂の途中の家』(2016年,朝日文庫)を読んだ。

里沙子は三歳になる娘の文香を持つ、三十三歳の専業主婦。夫の山咲陽一郎は会社員。里沙子は子育てと仕事が両立できないのではないか、という不安から会社員を辞め、家事と子育てに専念している。そんな彼女のもとに裁判員の候補者になったという通知が届く。候補者になっただけだと安堵したのも束の間、裁判員の補充裁判員として、裁判を傍聴することになってし

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#読書感想文 角田光代(2008)『おやすみ、こわい夢を見ないように』

#読書感想文 角田光代(2008)『おやすみ、こわい夢を見ないように』

角田光代の『おやすみ、こわい夢を見ないように』 (新潮文庫)を読んだ。

角田光代の文章は、あまりに読みやすくて、毎回恐ろしい。一度もひっかからず、ページをどんどん繰ることができる。誰もが知っている平易な言葉を使って、誰も知らない描写に仕上げて見せることができる傑物なのだが、それをひけらかしたりはせずに、こっそりやってのけている。彼女の小説を読むたびに、その手練手管と技巧にわたしはおののく。

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#読書感想文 角田光代(2009)『しあわせのねだん』

角田光代のエッセイ『しあわせのねだん』を読んだ。

2009年に新潮文庫、初出の単行本は2005年に晶文社から出されている。30代半ばの著者の日々が、お金という観点から綴られている。

読んでいて、刺さったのは、20代のお金の使い方がその後の人生を決める、というものだった。p.169からの「一日」の章に書かれている。

20代のわたしは、ほとんど可処分所得がなかった。ゆえに自分自身を形成するほどの

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