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冷たい真冬の海。 空も海面も真っ暗に淀む中、僕は静かに浮かんでいた。 自ら好んで入ったわ…
僕は世界の音という物を知らない。 言葉がどんな音で聞こえるのか、音楽がどんなものか知らな…
「ねぇ、一つ頼みたいことがあるの」 付き合っている彼女がそう言った。 「私、明日から海外…
それは仕事を終えて、家に帰る途中のことだった。 「おい、お前」 頭上から声が降ってきた。…
最近引っ越しをした。 築年数5年以内の、綺麗なマンション。 駅近で、見晴らしもよく、日当…
駅の改札の側の壁に、ポスターが貼ってある。 ダイエット食品のポスターだ。 ポスターの隅が…
その日は薄曇りの空だった。 けだるい朝、外に出るのも億劫。 しかし、行かなければ、社会的な信頼を失うだろう。 その日必要な書類を持っているのは私だけなのだから。 原付きで片道30分。 いつもの道だ。 通いなれた、なだらかな下り坂。 緩やかなカーブに合わせてハンドルをきっていた。 つもりだった。 タイヤは道に沿って大きなカーブを描くガードレールを目指していた。 近付いてくるガードレールの凹みまで、数えられるくらい、緩やかに時間が流れた。 気付いた瞬間にハンドルをきっ
少し悩んでいることがある。 それは我が家での出来事。 大きめの部屋に一人暮ししているのだ…
部屋の蛍光灯がチカチカと点滅し始めていた。 少し前からやばそうだな、と思っていたが、この…
マンガとかでさ、よくあるじゃん。 『タイムリープ』 主人公とか主人公に近しい誰かが、特殊…
面倒臭がりな私は、自分のメールアドレスを電話帳に登録している。 友達に教えたりする時、管…
ある朝、ネコの鳴き声で目が覚めた。 うちにネコは居ない。 近所で時々見かけるが、そんなに…
時間って奴は、消費すればいいだけのものだ。 そのうち無くなって、自分がこの世から消えれば…
月に一度、僕の地元では骨董市をやっている。 駅の近くにイベント広場って場所があって、そこに市が立つ。 古着物に古い置物、掛け軸に食器。確かに骨董品だと思う古い物からそうでないものまで、若干フリーマーケットも混ざったような、そんな市だ。 僕はその市によく足を運んだ。何か面白い物に出会えそうな気がして。 古びた空気が広がった世界の一角で、僕は足をとめる。 硝子細工の置物が目についた。 干支の動物を象ったものから、一角獣に麒麟など、透明な動物たちが紫色の布の上で遊んでいた。