いつか跳べるかな
私は普通じゃない。
生きにくい、と思う事が増えた。
沢山の病気を持っている。
心配はされたい。
同情はされたくない。
可哀想だと言われたくない。
普通じゃないと分かっている。
人とは違う存在でありたい。
けれど他人と同じでないと不安になる。
矛盾の中でもがいている。
私にはトラウマがあまりにも多すぎる。
人が当たり前にできることもできない。
電話。決まった時間に動くこと。スケジュール管理。起きたい時間に起きること。食事制限。普通に働くこと。面と向かって人と真面目な話をすること。辛い過去を忘れないこと。
特定の人に似た人の顔を見るだけで吐き気がする。
自分の中で嫌な思い出にしてしまっているから。
それなのに死にたくて仕方なかったあの頃にされた事も自分の気持ちも時が経つにつれて薄れている。
覚えていられなかった。
無意識に過去を美化していた。
どうして私は普通に生きられないのか。
自己嫌悪に苛まれて死にたくなる。
私は普通にこだわる。
普通に働くこと。
普通に人付き合いをすること。
普通に恋愛して結婚すること。
普通に子供を産んで育てること。
普通に生きること。
そのどれも自分にはできないと分かっている。
分かっていても考えてしまう。
普通にできない自分を責めてしまう。
普通ってなんだ?
そんな風に考える事もある。
生き方は人それぞれ。
自分らしくいればいい。
そう思っている。
でも自分を愛せないから自分らしくいられない。
太っている自分が嫌。
醜い自分が嫌。
生きにくい自分が嫌。
病んでいる自分が嫌。
普通じゃない自分が嫌。
普通なんて概念も人それぞれなのに。
私は普通に生きたいと強く思う。
それでも普通じゃない人生を楽しんでいる。
感情の起伏が激しい私はとても面倒だ。
人生って素晴らしい。
世界は美しい。
自分を愛して生きていこう。
なんて時もあれば、
なんで私はこんなに駄目なのか。
醜くて汚くていやらしい。
もう消えてしまいたい。
なんて時もある。
それがごく短いスパンで繰り返される。
死にたいと号泣した5分後にはけろっとしている。
気分の浮き沈みが激しい。
その上スイッチの切り替えが下手くそ。
一週間休まず大して睡眠も取らずに働いて
急にぷつんとスイッチが切れる。
そして一週間何もせず部屋にこもる。
そんな生活をこの一年続けてきた。
目標も希望も何もなかった。
やっとやりたい仕事を見つけた。
やらなければいけない事もできた。
忙しくて楽しくて充実していた。
それに身体は追い付けなかった。
頭で考えることに心が付いてこなかった。
やる事を紙に書いてスケジュールを立てる。
最初の一週間はスケジュール通り。
一日だけ休んだらあとはもう全部だめになる。
何をする気力も起きない。
ただ焦りだけが募っていく。
次第に何もかもどうでもよくなっていく。
楽しみだった旅行も行かなくていいや。
あの資格は来年取ればいいや。
全部今じゃなくていいや。
今はただ眠っていたいや。
痩せなきゃ。
働かなきゃ。
あれをしなきゃ。
これをしなきゃ。
焦って焦って焦って。
なのに体は動かなくて。
結局また何もしない一日が終わる。
虚無。
そんな一年だった。
これまでの人生を振り返れば色んなことがあった。
楽しかった事も嫌な事も辛い事も。
どんな時も痛みが伴った。
肉体的な痛みや心の痛み。
その痛みと共に生きてきた。
罪悪感や嫌悪感が常に付き纏っていた。
負の感情が私を覆い尽くしていた。
希望の光は不安にかき消される。
愛情は不満に押しつぶされる。
生きる活力は疲労に押し流される。
だからもう何も考えなくなった。
今を生きる。
ただそれだけ。
遠い先のことなんてわからない。
わからないことは考えない。
今の自分の気持ちに素直に従う。
自由気ままに生きていく。
そんな生活をしていた。
楽しかった。
心の重荷が少し軽くなった。
そして虚しくなった。
自分は何をしているのだろうか。
時間を無駄にしてるんじゃないか。
周りに遅れを取っているんじゃないか。
私は駄目な人間じゃないか。
自分を責めて泣いて悔やんだ。
どうせ寝て起きたら忘れているのに。
そんな事をしても意味なんてないのに。
自分で自分を追い込んでいった。
誰も私を責めなかった。
心配してくれた。
褒めて慰めてくれた。
他人は私に優しかった。
私は自分に優しくなかった。
どれだけ優しい言葉を己にかけても
もう一人の自分が私を罵る。
お前に生きてる価値はあるのかと。
私を優しさで包んでくれる私と
私を暗闇に突き飛ばす私がいる。
私はどちらの私も殺せない。
どちらの私の味方もできない。
けれど中立の立場でもない。
ただひたすら迷い悩み考える。
私はどう生きたいか。
分からない。
その時時によって変わるから。
私はいつも情緒不安定な私に振り回される。
でもそれでいいとも思う。
振り回されて吹っ飛ばされてもいい。
辿り着いた先に何があるかも分からないけど。
そこに幸せがあるかもしれない。
新しい何かと出会えるかもしれない。
そんな期待を胸に秘めて私は生きる。
おぼつかない足どりで
今日もまたふらふらと。