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旅立った息子

 圭は自慢の息子で去年からオランダの芸大に通ってる。少し遅いスタートだったけど、やりたい事が見つかったみたいでキラキラしてる。良かった。彼の一番良いのは、おっとりと冷静なのに堂々としているところ、それに優しい。人や物をちゃんと観察していて、いつも中々良い判断をしている。私より優れているのはパパの影響。親がそんなに褒めるのはいけないかもしれないけど、親が子を一番知っているし、私が褒めなきゃ誰がする?
 
 二人でいる時は殆ど哲学的な会話。人生について、木と木は地下で繋がってるとか、もしかしたらパラレルワールドがあるかもとか、人との関係についても、とにかく世の中で起きている全ての事を話す。うちの家系はみんなアートに携わっていた人が多かったから、割と自由だったけど、こんなに色んな事を話せるのはどうしてだろう。他の親子と比較した事がないから分からないけど。きっと気が合うんだね、幸いにも。
  
 圭がまだ小さい時に小児科の先生に頭脳テストされた事があって、丸い紙と四角い紙と三角形の紙を出してきて、これはなーに?って順番に訊かれた。
 圭は困った感じで先生を見てたけど、私は圭の事を良く知ってるから黙ってた。普通のお母さんだったら、ちゃんと助けてあげなくちゃいけないのにね。
 そしたらいきなり シェイプ、形?って先生に言った。
天晴れな答えを出した圭にびっくりした先生は後ろから大きなガラスのジャーを出してきて、ブドウ糖でできた飴をどうぞって圭に渡した。圭は嬉しそうに、その中のたった一つだけ取り出した。それにも先生はびっくりして、今度は先生がそのジャーに手を突っ込み、圭のカバンにごそっとたくさんの飴を入れてくれた。

 毎回違うシチュエーションで、思いも付かない答えが出てくるのはワクワクするし、インスピレーションを貰う。誰からも影響を受けずに自分の意見を言える大人になってほしい、だなんて思って教育してきた訳でもないのに、そうなっているのが面白い。


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