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20年下半期|世界の植物性タンパク質業界ニュース 12選

はじめに

2020年下半期の世界の植物性代替タンパク質市場では、数百億円規模の調達や業界大手と植物性代替肉ブランド企業との提携等が注目を集めた。Oatlyなどの代替ミルクやImpossible Foods(両社とも直近約200億円調達)などの代替肉企業によるものが代表的。日本ではDAIZ社が味の素や兼松、丸紅、日鉄物産などの大手企業らと資本業務提携を発表。そのほか、Unilever社の植物性代替肉主力ブランド「The Vegetarian Butcher」の日本上陸や、ネクストミーツ社の代替肉が焼肉ライクにて全国展開、大手コンビニ惣菜への代替肉採用など、劇的に植物性タンパク質市場への注目度が増した印象である。

各国の官においても植物性代替タンパク質市場を後押しする動きがみられた。他国と比べ、新タンパク質源に対してコンサバティブな姿勢を見せる欧州にて、肉の加工食品に似せた代替肉食品の表示に、「ハンバーガー」等の名称を禁止する法案が否決された。中国においては外資の呼び込み対象分野リストに代替タンパク質の分野が追加された。また、日本では農林水産省が「フードテック官民協議会」を設立し、環境負荷に対する認証制度等について議論を開始した。

このようなトレンドのなかで、業界的にもしくは個人的にインパクトのあったニュースを次にご紹介する。

2020/07/08:Perfect Day がアニマルフリー乳製品開発のためにシリーズC調達額を$300m (約318億円) へ拡張

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・カナダ年金制度投資委員会(CPPIB)の投資部門であるThematic Investing (テーマ投資) グループの主導のもと、Perfect Day がシリーズC調達額を$300mへ拡張 (昨年時点では$140m)

微生物により植物由来の糖分を発酵させホエーやカゼインといったミルクに含まれるものと同じプロテインを生成・使用した点が、アーモンドミルクなどの植物性乳製品と異なる

・アイスクリーム (Smitten ice cream) やクリームチーズ (発売予定) などの乳製品を製造・販売

・同社は持続可能な食品を取り扱うThe Urgent Companyと共同で、アニマルフリーアイスクリームであるBrave Robot ice creamを発売

2020/07/14:スウェーデンのオートミルクブランドOatlyがBlackstone Growth を筆頭に$200m (約212億円)を調達

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・本トランザクションでc.10%の議決権を売却 (バリュエーション$2,000m相当)
・Oatlyは、食品市場に対して次の様々な影響を与えた企業としても評価された
 - 多くの小売にカーボン・フットプリントの表示を促した点
 - ドイツの議会に対して同表示を促進するように働きかけた点
 - Unileverが70,000もの食料品のラベリングに二酸化炭素排出に関する情報を入れるきっかけを作った
少数株主として、ハリウッド俳優のナタリー・ポートマン、元スターバックスの会長兼CEOであるハワード・シュルツ等も参画
あえて商品の至らない点まで公表、パッケージをメディアとして活用するなどのユニークなブランディング戦略が注目を集める

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GFIのレポートによると、植物性タンパク質専業企業への2019年の投資額は合計で$824mであることから、$200m規模の投資は業界においてインパクトのある数字といえるのではないか(ちなみに、2019年の最大の調達額はImpossible Food の$300m、次がBeyond Meat の$290mである。また2020年1Qの投資額は$741mへ急増)。

代替タンパク質商品の製造・販売を行うだけでなく、商品の生産にあたり排出された二酸化炭素排出量を公表するなど、サプライチェーンや生産過程の環境への影響についても配慮する点が興味深い。環境によい商品としての付加価値を上げるためには、商品の中身だけでなく、パッケージングや輸送、生産者の選定に関しても徹底的に「環境によいこと」を追求する姿勢が共感を生むポイントになりそうである。

Blackstone はプレスにて、サステナブルなフードシステムの需要は、主にミレニアル世代やZ世代に牽引されて高まっていることを述べたが、Bank of America によるとZ世代単独で2030年までには世界の経済力のc. 25%を占めることになるという。Oatlyへの出資は、そのようなシフトを視野に入れた投資であることが伺える。

本調達において、有名人を投資家に迎えたことは、Beyond Meat がレオナルド・ディカプリオやビル・ゲイツより出資を受けたことを連想させる。より多くの人に関心・共感を抱いてもらう戦略としても参考になりそうだ。

2020/07/27:チリ拠点の植物由来肉・乳製品メーカー The Not Company、$85m (約90億円) の調達ラウンドをまもなく完了

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・The Not Companyは代替マヨネーズ、アイスクリーム、ミルクなどを開発。チリ、アルゼンチン、ブラジル、米国などに展開。Burger Kingとサプライヤー契約を締結。報道によると、NotCoは1店舗1日あたり48個のハンバーガーを販売する契約で、これは店舗あたり販売数でImpossible Foodsを上回るとのこと

・関係者によると、本調達ラウンドにて同社のバリュエーションは$250mと評価されたとのこと

・本調達ラウンドでは、関係者によると、消費者ブランドに特化した未公開株式投資会社であるL Catterton Partnersや、Twitter の共同創業者であるBiz Stone氏が支援するFuture Positiveが出資した可能性が高いとのこと。既存の投資家に、Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏、英国拠点の CPG(消費者向けパッケージ製品)投資会社、The Craftory、IndieBio、SOS Venturesなど

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本文とは直接関係がないが、Burger Kingは、植物性タンパク質のパテ (Impossible foods のもの) を使用した”Impossible Whopper” を、(報道によると)“プラントベース”や“ヴィーガン・フレンドリー”に見えるような広告で販売し、イギリスの広告基準協議会 (ASA) により“植物由来”の誤解を与える広告を禁止されたことがあった(2020年4月)。

"100% Whopper, no beef"のキャッチフレーズで販売されていた”Impossible Whopper”だが、商品には卵が使用され、肉を調理した器具で調理がされていたことから、もともとビーガン向けの商品としては開発されていなかった模様。にも関わらず、広告に緑色の装飾を多様し、twitterの広告で”our first plant-based burger”と発信するなど誤解を招くPRがASAによって問題視された。

本件はもともと2019年11月に、ヴィーガンの消費者が肉を調理したグリルで商品を調理していたとしてBurger King を訴えたことがきっかけだった。

本ケースは、植物性タンパク質食品を提供する飲食店のオペレーションに少なからず影響を与えるものであると思料。

また、“環境に優しい”“SDGsに取り組んでいる”という発信も、例えば環境に優しい食材を使っているが運送や梱包方法が環境に悪い場合、消費者 (もしくは取引先、競合他社、NPO) の訴えによって“エコフレンドリー”発信を撤回させることができる可能性を少なからず示唆すると感じる (日本広告審査機構の方々にもご意見伺いたい)。

以上のようなリスク的側面を感じる一方で、各食品会社や飲食店のPR手法に関して新たな広がりを楽しみに感じた。

なぜなら、ヴィーガン向けでない植物性タンパク質メインの商品 (フードロスの観点で、植物性タンパク質の商品に、食肉加工プロセスで余るお肉の脂をまぜて旨味を残したものなど) を出す飲食店や食品会社が今後増加する場合、いままで「ヴィーガン等菜食主義者/それ以外の消費者」の2層と捉えれば済んだターゲットに「ヴィーガン等菜食主義者/環境への配慮により肉食を少なく済ませようとする消費者/それ以外の消費者」のようなグラデーションが生まれ、各層に合わせた“適切な”PR方法(や周辺のルール形成)が必要になる可能性が高いと考えるからだ。

2020/08/13:Impossible Foods がシリーズGの調達により$200m (約212億円) を調達(創業以来の調達額の総額は$1.5bn にのぼる)

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・同社のプレスリリース (8/13日公表)によると、本シリーズの調達はCoatue(テクノロジーセクター特化のヘッジファンド)が主導。既存の株主であるMirae Asset Global Investments(運用額$147bnのアセットマネジメント会社)やTemasek(シンガポール政府が保有する投資会社)に加え、新規にXN Capital (投資マネジメント会社) も資本参加した

本調達はR&D,生産拡大、小売におけるプレゼンスの拡大、Impossible Pork など今後の商品開発等を目的としたものである

・同社は2020年3月中旬に$500mの調達 (シリーズF) を終えたばかりである。3月の調達はフードテックスタートアップの中でも規模の大きい調達として注目された

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(オートミルクは、ミルクと呼ぶべきでない、という議論があるように) 植物性タンパク質商品を取りまく、「肉、ミートとはなにか」「ミルクとはなにか」の議論は、培養肉のルール形成にも大きく影響を与えると考えられる。

その議論の矢面に立つ植物性タンパク質商品の筆頭プロバイダーの動向 (特に市場に受け入れられるスピードや反発される場合の理由、各社がどの様に消費者とコミュニケーションをしているか) は今後も追っていきたい

2020/08/19:プラントベースの卵メーカー Eat JUST が2021末までに営業利益の黒字化の見込み、その後IPOを検討すると言及

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・サンフランシスコ拠点のEat JUST社は、緑豆ベースの代替卵商品をWalmart、KrogerやWhole Foods などの小売店に納品しており、プラントベース食品の小売店における売上増加の好影響を受けた

営業利益の黒字化を達成した場合、IPOを真剣に検討するとEat JUST社のCEOあるJosh Tetrick氏は語る。黒字化のタイミングやIPOの時期を示したのは本件が初めてである

・黒字化に向けたコストカットのためには、緑豆からより多くのプロテインを抽出することや、価格交渉力強化のためより多くの緑豆を西アフリカやアジアから購入する必要があるとTetrick氏はコメント。また同氏は、消費財会社、小売店や鶏卵サプライヤーとの契約も売上高向上につながると見ている

・リサーチファームのSPINSによると、新型コロナパンデミックの影響でプラントベース食品の小売売上は昨年に比べて11% ($5bn) の増加、プラントベースの代替卵市場は約3倍に拡大したとのこと

2020/08/25:ヴィーガンファーコートメーカー Apparisが$3mを調達、”Cruelty-Free” ファッションの展開を目指す

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・米国国内に加え、フランスなど12カ国、20のヨーロッパ小売企業へのライン展開に向けた調達を実施。新たな資金で企業はより伝統的高級服のメーカーとの提携によりソーシャルメディア上での売上拡大を目指す

・出資者にはKarlie Kloss (スーパーモデル兼起業家)、Cam Newton (米国のフットボールチームNew England PatriotsのMVPクオーターバック)などが参加。ほかThird Kind Venture Capital (米国拠点のベンチャーキャピタル) や Exor Seeds (オランダ拠点の投資会社のシーズ投資部門)が参画

・同社はフランスの女性2人組が共同創業(Lauren Nouchi氏とAmelie Brick氏)

売上規模は$7.3m (2019)、うち60%が小売向け

米国百貨店チェーンのBloomingdale’sや、Saks Fifth Avenueなどへ販売実績

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Apparis はウェブサイトにて次の目標を掲げている。
・2020年秋コレクションでは、デザインに100%リサイクル素材を使用。コートの裏地にはすべてリサイクル・ポリエステルを使用
・2021年秋までには、アクセサリーのパッケージにプラスチックを使用せず、リサイクル可能な素材、堆肥化可能な素材、生分解性のある素材のみを使用
意識の高いファッションを目指す

高級ブランドは10年以上保有すると考えると、現在よりもエシカル消費が進んだ10年後に「着ていて恥ずかしい」ものを購入することは避けたいと考える消費者は一定程度いるのではないか。

農林水産省の官民協議会に関する報道によると、今後国内にてサステナビリティの評価軸を策定するなどのルール形成が進められる可能性がある。これを期に、消費全般についてサステナブルかどうかの可視化をすすめる流れができるとより良いのではないか。

2020/09/04:「代替肉」普及へルール策定 認証制度が軸、官民協議会発足

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・農林水産省は、民間企業と連携し、大豆を主原料としながら肉のような食感の「代替肉」に関するルールづくりに乗り出す

・月内にも立ち上げる「フードテック官民協議会」では、食品メーカーなどが中心となって制度設計を議論する。品質のほか、環境への配慮を基準とすることが想定されており、民間企業などが認証の実施主体になる見通しだ


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「大豆を主原料とした代替肉」の普及のためのルール策定をする場合、代替肉の定義や表示義務に関しては消費者の今後の食生活のさらなる多様化を想定する必要があるかもしれない。

新型コロナの流行により消費者の食生活や価値観が大きく変化していることもあり、動物性タンパク質を一切食べない人や週に一度はお肉を避ける人、プラントベーストミートでかさ増ししてお肉の消費量を抑える人など、今後動物性タンパク質の消費への向き合い方の多様化がすすむと考えられる。

認証制度を作るのであれば、そのような意識的な消費者が安心して消費できる・選択の余地を与えるようなものであってほしいと個人的に願う。

2020/09/22:気候変動活動家が投資家向けのネガティブキャンペーンの対象を化石燃料企業から食肉・乳製品セクターへ切り替え

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投資家における食料システムの二酸化炭素排出量に関する意識が高まっている(国連の政府間パネルによると、世界の二酸化炭素排出量の37%を食料システムが占める)

世界的大手の金融サービス企業は、食肉・乳製品セクターへのエクスポージャーの削減に動いているわけではない。しかし、Deutsche BankやBarclaysなど一部の企業は今後状況が変化する可能性を認め具体的な対応策 (融資ポートフォリオ全体をパリ協定の目標に合わせる気候リスクの測定・管理方法の開発開始など) を検討

・食肉業界の大口機関投資家に関しては現時点では大きな動きは見られない模様

投資家への呼びかけ以外に、関連事業の売却や貸金の停止を求める環境活動家らの動きもある。しかし(信頼できる代替品がないまま)売却要求や貸金停止などの呼びかけに応じることは、既存の食肉業界からの反発を招き、農業技術の喪失や食料供給の脆弱化を招くという意見がある

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記事のタイトルとは裏腹に、各評価機関は現時点では環境負荷度合いの把握方法検討などにとどまるように読める

プラントベーストや培養肉など環境負荷の低い食分野への投資を促すのと、既存の畜産事業の売却を促すのは個人的には全く意味合いが異なり、後者を推し進めることのリスクは無視できないと考える。

理由として、記事にあるように、(とくに消費者の趣向が大きく変化する前に)無闇に肉・乳製品事業の売却を進めると、我々の食料供給を揺るがし、農業技術をそこないかねないという意見に私も賛成であるからだ。

今後も畜産の持続は必要と考える。肉食を行う人口は増えると予想されており、今後フレキシタリアンが増えて一人当たりプラントベースト食品を食べる頻度が増えたとしても、フレキシタリアンがベジタリアンに変化しない限りは肉の生産は必要だ。もちろん、培養肉の供給にも既存の畜産農家の方々の細胞提供が必要だ。

畜産農家の中にも持続的な畜産を行おうと活動している事業体もいるため、そのような畜産農家の事業を一方的に陥れることは、お肉はどうしてもやめられないけどなるべく環境に配慮した商品を選びたいと考える消費者の選択肢を減らす結果を招くのではないか

理想論なのかもしれないが、「持続可能な」食により多くの消費者を巻き込むためには、「お肉は環境に悪い」「プラントベースト肉や培養肉は環境に良い」とカテゴリーごとに区切るのではなくお肉の中でも環境に配慮したものとそうでないものがありお肉を食べる頻度を減らせなくてもなるべく持続可能な商品を選ぶことのできる環境が与えられていることが重要なのではないか。

そして、どうせ食べるなら環境に良いものを、と考える消費者がだんだんとプラントベーストや培養肉へも興味を持つようになればよいと考える。

2020/10/07:The Good Food Institute と Animal Legal Defense Fundが、ルイジアナ州によるプラントベース商品の名称に関する法律に対し起訴。表現の自由を理由に

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The Good Food Institute(プラントベーストとクリーンミートの推進を図る非営利組織)と Animal Legal Defense Fund(動物愛護団体)が、ルイジアナ州によるプラントベース商品の名称に関する法律に対し、プラントベース食品会社 (ターキーに似せた豆腐加工力品の製造販売を行うTofurky) に代わって裁判を起こした

両団体の起訴の対象となった法律は、「バーガー」や「ソーセージ」という用語を用いて売られているすべてのプラントべ-ストミート商品に対して1商品に付き1日$500の罰金を課すというものである(「ヴィーガン」「ベジ」「プラントベースト」と明記してある商品であっても違法として罰金を課される)。同法律は2020年10月1日に施行された

・両団体は、同ルイジアナ州の法律がTofurkyによる表現の自由を侵害しているとして起訴

・GFI は記事のなかで、米国のFDA (The Food and Drug Administration) はプラントベーストの商品に対して、その性質や原材料を明確化するような名称をつけることを求めており、「バーガー」や「ソーセージ」などもその商品の味や提供方法を示す重要な情報に当たる、とコメント。また、消費者がプラントベースト商品を肉製品と間違えることはないと主張

・ルイジアナ州の法律はアーカンソー州、ミズーリ州、ミシシッピ州などで可決された食肉表示に関する法律と類似しており、これらの法律の多くは同団体による同様の批判を受けている。例えば昨年同3団体(GFI、ALDF、Tofurky) とAmerican Civil Liberties Union (アメリカ自由人権協会)はアーカンソー州の同様の法律に対して違憲と唱え、勝訴している

・"消費者が植物をベースにした選択肢を選ぶのは、消費者が混乱しているからではなく、環境や人間の健康、動物の福祉にも良いからだということは、今のところ明らかです。"とTofurkyのCEOであるJaime Athos氏はコメント

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プラントベースト食品を動物性食品の代替物としてではなく全くの新しい食品として認識する消費者が増加すれば、既存名称の取り合いを避けることができるのだと思うが、プラントベースト商品の認知度向上に十分余地のある現段階においては難しいようだ。

プラントベースト商品に今まで触れる機会のなかった消費者の目線からすると、今までの調理・食事経験に基づき商品を選ぶことができるのは大変便利であると感じる。その意味では、文中のGFIがコメントしたように「バーガー」という名称が入っているほうが手に取りやすいのは確かだと思う。

2020/10/23:欧州委員会がヴィーガンやベジタリアン向けの肉を模倣した商品について「バーガー」「ソーセージ」といった名称の使用を禁止する改正案を否決

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欧州委員会(法案の提出などを行う欧州機関)の農業・農村開発総局が「ステーキ」「ソーセージ」「バーガー」などの呼び名の使用をベジ・ヴィーガン商品に対し制限する内容を共通農業政策(Common Agriculture Policy, CAP)に加えることを提案。欧州議会にて承認の是非に関する投票が行われ否決された。

・畜産・食肉業界は、プラントベースト商品であるにも関わらず肉を連想させる商品名を許すことは消費者を混乱させると主張。この主張の反対意見として、ベジバーガーなどの名称はすでに浸透しており、名称の変更こそ消費者の混乱を招くとThe Good Food Institute (米国拠点で代替肉・培養肉の推進をおこなう世界的な非営利組織) などは主張。WWF、Greenpeaceも本法案を通すことはEUの掲げる環境目標に逆行すると主張しCAPの改正法案に反対した

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代替肉について、日本でも「ブーム過熱も 肉代替食品 名称ルール必須 “本物”と誤認 加工団体から懸念」(日本農業新聞2020年9月20日)の報道のように、名称ルールの整備が叫ばれているが、特にプラントベースト食品に関しては本件の欧州議会の判断は先例として、ある程度の重みを持って受け止められるのではないかと思う。

本記事によると、欧州消費者機構(BEUC)は食品に明確に「ベジタリアン向け」などと記述があれば消費者が誤認することはない、「バーガー」や「ステーキ」といった表示は消費者が植物性食品を食生活に取り入れることに役立つ、と主張したもよう。

この主張がある種、欧州議会に受け入れられたということは、上の日本国内で言われている議論への反論にもなりそうだ。また、欧州司法裁判所は2017年に「誤解を招く」として「ミルク」「バター」「ヨーグルト」等の名称を植物性食品に使用することを禁じた例等がある。このように、今回の投票結果に逆行する先例があるにも関わらず、時代の動きを察知して本改正案を否決すると判断した欧州議会の動きは注目に値すると考える。

一つ残念なのは、本法案が否決されたからといって、特にEU所属国への強制力などは発生しないということだ。本議題(ベジバーガーをバーガーと呼んでよいかどうかなど)に関して、各国の今までの法整備状況は様々。例えばフランスはすでに同様の法律(肉の名称をベジタリアンや代替タンパク質商品に使うことを禁止する法律)を可決したが、ドイツは明確にヴィーガン商品と表示があれば「チキン」など肉に用いられる名称を使用することを許可した。

2020/11/20:Z世代の購買力が次の10年の投資ランドスケープを永久に変化させる(Bank of America)

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・Z世代の経済力が急成長しており、2030年までには$33Tn 以上の市場に成長し(成長率400%)、世界の総収入の1/4以上をカバーすると見込まれる。

2031年にはミレニアル世代の経済力を上回ると予想

・Z世代により、サステナブル、高級品、eコマース、新メディアやオンライン決済事業が新たな利益を生み、伝統的なタバコ、肉、旅行業界が新たな圧力に直面すると予想

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培養肉の普及を加速させるために、Z世代を中心としたターゲットにフォーカスしたコミュニケーションを日本市場でも(海外展開を見据えるならグローバルレベルで)意識する必要がある。

2020/12/28:中華人民共和国国家発展改革委員会が、植物性代替肉を含む1,235の外資呼び込み分野リストを公表

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・本発表で既存の1108の外資呼び込み分野リストに正味127分野が加わった

・新規に追加された項目は、「植物性代替肉」の他5G技術等があった

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アフリカ豚コレラの発生により、国の総在庫の40%分の豚肉が無駄になった経験などから、中国では抗生物質の乱用抑制など耐性菌の発生を抑え、動物間のパンデミックを抑える取り組みが進められている(動物間の感染症は人間に感染することもあり、こちらも深刻な問題として注目されている)。

本件はその取組に並行して、安定的なタンパク質供給のための技術や投資マネーを中国国内に呼び込むことで、その技術を学ぶ人材の獲得やビジネスの育成を加速させるという試みによるものであろうと推察する。

終わりに

以上をお読みになって、業界ご興味を持たれましたら、ぜひ筆者にSNS等を通じてお声掛けいただければと思います。また、他の視点もある、上の意見がずれているとお考えの読者様も、ぜひコメント・ご教示いただけますと幸甚です。

今後とも引き続きよろしくお願い申し上げます。

※サムネイル画像はUlrike LeoneによるPixabayからの画像です

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