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真夏のサクランボ

即答だった。食い気味の。


先週、NHKのsongsにbank bandとして櫻井和寿と小林武史が出ていた。

この2人は俺にとっては神様みたいな存在で、小学生の頃から何百曲と、彼らが作り出した曲を聞いてきた。同級生の中村から教えてもらったのがMr.Childrenで、俺が初めて買ったCD(アルバム)がKIND OF LOVE、初めて買ったシングルがシーソーゲームだ。それから30年近く、桜井さんの事を考えない日はない、と言っても過言ではない人生を過ごしている。

songsを見ていて思い出した事がある。
とても悲しい出来事だったので、記憶に蓋をしていたが、鮮明に思い出した。


3年ほど前、ap bank fesに行くチャンスを掴みかけた事があった。言わずと知れた、bank bankが主催する音楽フェスで、それまでなかなか縁がなく行った事がなかった。
しかしその年、先輩がチケットを取ったのだけれど都合が悪くなってしまったので代わりに行かないか、という吉報が舞い込んだのだ。千載一遇のチャンス、到来。

しかし、そこで問題が浮上した。
ap bank fesの行われるその日は、娘の小学校の夏祭りの日程と重なっていたのだ。夏休みの行事で、参加は自由。その点では、俺のap bank fesと、同じ条件だ。加えて娘は行く気満々。何なら俺も一緒に行く約束をしていた。まずい。分が悪い。

説得を試みる俺。娘とは普段から一緒にミスチルも聞いているし、話せばわかる相手だ。とにかく誠心誠意、伝えよう。この想いを。

「ミスチルの桜井さん知ってるやろ?うん、いつも聴いてるやん、あのミスチルな。あの桜井さんがやるフェスがあってな、けんめいくん行きたいねん。行きたいやろ?他にも色んなアーティストが出るしな、きっと楽しめると思うねん。きっと楽しいで?小学校の頃からずっと聞いてきてきてて、今回チャンスやからな、行きたいねんなー。今年しか行けへんかも知れんし、上小祭りは来年もあるやん?」

娘も一緒に連れて行こうという算段での説得。必死だった。

「で、どう?ap bankと上小祭り、どっち行く?」
「上小祭り」

即答だった。食い気味の。
聞き逃しそうになったくらいだ、早すぎて、そして真っ直ぐな答えすぎて。


真夏の空の下、「さくらんぼのタネ飛ばし」というぶっ飛んだアトラクションに興じる娘を視界の端に感じながら、俺は嬬恋に想いを馳せた。今頃、同じこの空の下で、桜井さんが歌っているのか。
本当に?本当なんだ、残念だけれど。

首筋を汗が流れる。さくらんぼのタネが飛んでいる。


今思えば、あの時意地でもフェスに行けばよかった。こんな世の中になると思っていなかったから。あんなに密な状態で発狂できるイベントは、もう二度と行われないかも知れない。
しかし、小学校の夏祭りもあれ以来、行われていない。ましてや、さくらんぼにタネ飛ばしなど、行えるはずがない。飛んでいるのは、タネか、飛沫か問題。とてもシビアだ。

そういう意味では、ap bankも上小祭りも、同じなのだ。あの日、娘は心の底から楽しんでいた。それでいいじゃない。


いやそれでもap bank fes行きたかった俺は。
#しつこい!!!

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