ふしぎ生物:ハナアルキ。謎多き孤島で発見された驚愕の生態
タイトル:
鼻行類
キーとなる言葉解説:
ハイアイアイ群島:1941年、日本軍の捕虜収容所から脱走したスウェーデン人によって発見された。
鼻行類:ハイアイアイ群島の生物たち。移動、捕食、求愛なんでも鼻で。
フアハ=ハチ族:ハイアイアイ群島の原住民(ポリネシア系ユロピド)。武器を持ってない。主に木製器具。22人の首長と約700人の島民。
ナゾベーム(Nasobem):原住民の言葉。鼻行類のこと。
本の要点:
鼻で移動する哺乳類たちの観察記録。
1941年、日本軍の捕虜収容所から脱走後、周囲から完全に孤立したハイアイアイ群島に漂着したスウェーデン人。彼によって発見された固有種たち。その観察記録が本書です。
第2次世界大戦の影が色濃く反映された世界線。偶然発見された大小30の島から成る群島は、少数民族と貴重生物の楽園でした。
鼻行類って?
ハイアイアイ群島に生息するミジンコからマンモスまで。ほとんど全てが鼻行類。鼻で歩き、鼻で浮き、鼻で飛び、鼻で捕食する。肉食性な鼻行類は、待ち伏せと毒爪。モンスターか?!
外見は、ただ面長のネズミ。常に逆立ち状態で、後肢は退化するケースが多い。
鼻は単数か複数。
鼻単数は、地面に突き刺さって移動しない種。伸縮性のあるバネか、節が存在してトビネズミのようにジャンプする種など。
そして複数の鼻を持つ鼻行類たちは、本来骨格を持たない鼻が充血によって強化され(?)、触手のようにしならせてホイミスライムかタコっぽく歩く。
また違う鼻行類同士で、獲物の授受や授乳による共生関係が確認されています。
鼻水で釣り
水辺で生活するハナススリは、ハツカネズミと同じ4~8cm。水際の枝に掴まって、釣竿のような長い鼻から粘度高めの粘液をスルスル垂らし、水棲の虫などを粘着させて食べる。
個人的には、とてもマネしたくない食事マナーを実践する輩。
ハナモドキは花もどき
お花に擬態して、昆虫を捕食するフシギハナモドキ。キンポウゲのお花畑に生息し、6つの鼻を花びらに擬態させて虫を誘い込む。尾は植物の茎のように地面に突き刺さっている。幼獣は尾が短いので、キンポウゲの花を折って茎に掴まり、お花のフリをしている。控えめに言って可愛すぎる種。
1日中、お花のフリをして、口を開けて虫を待つ。
また彼らには亜種がいる。
ノロマハナモドキとナマケハナモドキは、尾が無い。なので茎に掴まってフリをするのではなく、花の横でゴロゴロしているハナモドキらしい。なんてこったい。やる気スイッチがオフになってそうなのに、余裕で生きてる。きっと哲学者。何かを悟ってそう。
鼻行類の飛行
地上に暮らす、一本鼻のトビネズミ。硬鼻類のダンボハナアルキ。鼻は関節があって折れ曲がり、バランス感覚全開で立っている。耳は飛行機の主翼のように開き、滑空を可能にしている。後足は、完全に消滅している。不要なのかも。
彼らは大抵臆病で素早いので、捕獲も飼うのも難しいらしい。クリクリな目を持つ逆立ちモルカー。可愛さのツボを的確についてきますね。
その後の鼻行類
神秘の群島、ハイアイアイ。
豊かな自然と原住民の平和は、訪れた渡来人によって、時を止めてしまいます。渡来人は、偶然にも流感(風邪)を持ち込んでしまいました。隔離されていた土地。疫病など存在しない僻地は、抗う術がありませんでした。鼻行類も原住民も、わずか数ヶ月のうちに消滅してしまいます。
そして島に残るのは、原住民が残した木製の器具のみ。なんというロストワールド。
もっと鼻行類を知りたい!そんな方は、荒俣ワンダー秘宝館をお勧めします。ハナアルキの模型があります(上部の写真)。
ご興味ある方は、ぜひ東所沢まで。
鼻行類の筆者ゆかりの地、オーストリアにも展示コーナーがあるそう。
鼻行類
鼻行類は、もちろんフィクションです。ハイアイアイ群島もありません。
1961年の出版当時、本物っぽく書かれて、実在するのかしないのかザワついたそうです。
ターゲットとしてる人達:
変な生き物にヌマってる方々
荒俣ワンダー秘宝館(角川武蔵野ミュージアム)が好きな方々
心に刺さった内容:
おそらく彼がハイアイアイの秘密を知っていて、それを自分の死とともに葬り去ってしまったのであろう。(p13)
こんな書かれ方されたら、気になってしょうがない。
読了日:
2022年3月