台風19号を体験して、急に自分ごとになった治水の歴史。関連本&資料まとめ。
巨大な台風は各地に甚大な被害をもたらしてしまいましたね。
この度の被災に対し、心からお見舞い申し上げます。
自らも自宅で待機しながら刻一刻と変化する状況を固唾をのんで見守る、そういった実体験によってようやく自分ごとになったと言うか、今回の経験を経てこれまでの治水の歴史などに興味を持った方も多いんじゃないだろうか。
Twitterなどを見ていると、そもそもダムというのは、と言う話から、江戸時代からの東京の治水史に想いを馳せる人など、色々な話が飛び交っていた。かく言う自分もこれまでほとんど関心がなかったのだけど、今回の台風でこの分野に一気に興味を持ったのでした。
と言うわけで読んでみたいと思った治水関連本のまとめ。
伊東潤『江戸を造った男』
元禄期の豪商で、全国各地で治水・灌漑・鉱山採掘などの事業を手がけ、その知恵と胆力で次々と難題を解決していった人物の物語。河村瑞賢という人物自体知らなかったので、気になったのでした。
門井慶喜『家康、江戸を建てる』
これも江戸を舞台にした話ですがもう少し時代は遡って家康時代。テーマは治水にとどまらずのようだけど、利根川の東遷を手がけた伊奈忠次のエピソードも書かれているらしい。利根川東遷のこと自体よく知らなかったのでやっぱり気になったのでした。
竹林征三『物語 日本の治水史』
そのものズバリのタイトル。「神話・伝説に始まり、武田信玄、加藤清正、明治以降の田辺朔郎、青山士らの名治水家の歴史的・社会的背景との関連で書き下ろされた物語」とのことで、まさに治水の歴史を概観できそうな本。まずはこれから読んで大きな流れを押さえるのもいいのかもしれない。
高橋哲郎『評伝 技師・青山士の生涯―われ川と共に生き、川と共に死す』
パナマ運河工事に携わったただ一人の日本人技師、荒川・信濃川治水の大プロジェクトを完遂した最高の技術官僚、この方のことを呟いている方もちらほら見かけた。そんな人がいたことも知らなかったので読んでみたい。この本は手に入りづらい状況なのだけど、同じ著者でもう1冊出ている。
高橋哲郎『評伝 技師 青山士―その精神の軌跡 万象ニ天意ヲ覚ル者ハ…』
こちらは鹿島出版会から刊行されている模様だけれど、品薄かも?
青山士はクリスチャンでもあったそうな。
一般社団法人ダム工学会『ダムの科学 知られざる超巨大建造物の秘密に迫る』
こちらはダム関連のお仕事をしているという方がオススメされていたダムの基本を知るための本。ダムってそもそもなんなの?知ってるようで知らないことを基礎から学びたい。
大熊孝『洪水と治水の河川史―水害の制圧から受容へ』
こちらは東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。工学博士。というわけで学者の目線での治水の歴史。「自然との共生をめざす治水のあり方、「溢れても安全な治水」とは何かを追究した画期的著作。」という紹介文に好奇心が刺激される。残念ながらこちらも手に入りにくい状況のようだ。平凡社さん、せめてkindle化できないかな・・・。
----------以下追記-----------
より現在進行形の問題としての治水行政に関しては、まとまった書籍が見当たらず、むしろ各自治体の資料が色々と教えてくれる。自分が住んでいる地域の自治体のホームページで防災対策、みたいなコーナーを覗いてみるのおすすめ。
品川区が取り組む浸水対策事業
品川区の場合、下水が処理しきれずに溢れるケースが最も可能性が高く、雨水貯留管や雨水バイパス管の整備で劇的に水害が減ったことが説明されている。これくらいわかりやすい説明がいいよね。
文京区地域防災計画
自分が住んでいる文京区はちとお固い文書。それでも神田川の対策として以下のような施策を行ってきたことが明記されている。
神田川流域では、調節池9か所と分水路4か所が完成し、現在、文京区内では船河原橋から江戸川橋の間において、護岸整備・橋梁架替工事を進めている。
また、環状七号線の地下に内径12.5mのトンネルを設置した(環状七号線地下調節池)。この調節池は、早期に事業効果を発揮させるため、第一期、第二期に事業を分割し、整備を進めてきた。第一期(延長約2.0㎞、貯留量約24万㎥)が平成9年4月、第二期(延長約2.5㎞、貯留約30万㎥)が平成17年9月より取水を開始し、下流域の水害軽減に大きな効果を発揮している。
フィクションドキュメンタリー「荒川氾濫」
Yahoo! JAPANのCSO、安宅さんのtweetで存在を知りました。
もしも荒川の上流に500mmを越える豪雨が降ったならば・・・という状況下で荒川が氾濫したらどうなるか、という動画。恐ろしいです。
バーツラフ・シュミル『エネルギーの人類史』
そもそも地球温暖化って話が裏にはあるわけで、そこにはエネルギーと人の歴史があるわけです。で、このバーツラフ・シュミルの本はビル・ゲイツがおすすめしている本。これに限らず、ゲイツはバーツラフ・シュミルの本をかたっぱしから読んでいるみたい。その辺の話はNetflixのドキュメンタリーで語られてる。
このドキュメンタリー、本当に面白いからオススメです。
何が面白いって彼が今やっている財団のプロジェクト、全然順風満帆じゃないんだよ。ポリオ撲滅とか、下痢で死ぬ子供を無くす!とか。色んな困難と挫折に見舞われている。でも、諦めないで前に進み続ける姿には脱帽。あと圧倒的かつ継続的なインプット。凄い。