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父の命日と「赤とんぼ」

父の命日が近づいてきました。父と過ごした日々を思い出すと同時に、ある歌が心に浮かびます。

夕やけ小やけの 赤とんぼ
負われて見たのは いつの日か

山の畑の 桑の実を
小籠につんだは まぼろしか

十五で姐やは 嫁にゆき
お里のたよりも 絶えはてた

夕やけ小やけの 赤とんぼ 
とまつているよ 竿の先

「赤とんぼ」三木露風作詞・山田耕筰作曲

幼い頃からずっと知っている歌なのに実は歌詞を勘違いしていたとか深く考えたことがなかった、ということがたまにありますよね。例えば、この歌だと「負われて」を「追われて」と思っていた、とか「姐や」を本当のお姉さんだと思っていたとか。実は子守娘として雇われていた「姐や」に「背負われて」赤とんぼを見た記憶を歌うとてもノスタルジックな曲なんですね。

父の命日に「赤とんぼ」を思い出すのは、棺に入った父が家から旅立つ時にかかっていた曲だから。見送りに集まってくださったご近所の方々を前に、遺族として玄関先に立ったあの時見ていた景色が鮮明に脳裏に蘇り、耳の奥では「赤とんぼ」が流れます。大好きだったおじいちゃん・おばあちゃんの時も、そういえば同じ曲がかかっていました。

父が幼かった日に背負われて見たであろう「夕やけ小やけの赤とんぼ」。茶畑に囲まれた場所で育った父の、その茶畑を走り回った日々の遠い記憶が、幻のように、音楽にのせて、娘である私のまぶたの裏に広がります。

たった4節からなるこの歌には、長いようで儚い人生を振り返った時の、無数の記憶と想いがギュッと詰まっているよう。聴くたびに毎回そうなるように、今日もティッシュに手がのびてしまったのでした。

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