Uzabase取締役CPO/CAO松井しのぶさん 特別相談会レポート「攻めながら守る!スタートアップ/ベンチャー企業のコーポレートとは」
meeTalk×渋谷区×野村不動産でタッグを組んだ、女性起業家支援の場「W¹O」に、株式会社ユーザベース 取締役 CPO/CAO(Chief People & Administrative Officer)の松井しのぶさんをお招きし、経営を加速する「コーポレート(人事・労務、総務・庶務、経理・財務、経営企画、法務、情報システムetc.)」について、meeTalk代表取締役 山中直子がモデレーターを担当して特別相談会を開催しました!
松井さんはユーザベース社初の女性社内取締役になられ、また社外でも「パナソニック」やAI活用保育支援サービスを運営する「ユニファ」の社外取締役も務め、公認会計士でもいらっしゃいます。
スタートアップ/ベンチャー企業の経営をする女性、コーポレート(人事・労務、総務・庶務、経理・財務、経営企画、法務、情報システムetc.)を担う方、そして攻めの事業成長とコーポレートガバナンスの両立を考える皆様に参加いただきました。
・「今」と「これからの成長」のために必要なコーポレート部門の役割とは?
・限られたリソースの中でどうバックオフィス業務を実行すればいい?
・資金調達の進展や成長ステージに応じたガバナンス体制作りとは?
など、参加者それぞれの状況に紐づいた質問が寄せられ、経営者同士でも熱量の高い会話がたくさん生まれた当日の様子をレポート一部お届けします!
■ 今回ご参加いただいた皆様(順不同)
冨田 阿里さん / 株式会社スマートラウンド 執行役員COO
https://jp.smartround.com/
渡部 沙和さん / 株式会社空 バックオフィス担当
https://www.sora.flights/
山口 絵里さん / 株式会社FUN UP 代表取締役(monomy運営)
https://www.monomy.co/
阿部 愛さん / 600株式会社Employee experience担当執行役員/コーポレートマネージャー
https://600.jp/
奥 温子さん / 株式会社ChiCaRo 代表取締役社長
https://www.chicaro.co.jp/
■ 松井しのぶさんの今までの歩み、目指していることをご紹介!
公認会計士試験合格後、監査法人からキャリアをスタート。グローバルな税理士法人で税務コンプライアンスや国際税務アドバイザリー、税務デューデリジェンスなどを経験。
その後、夫の海外赴任に伴いイスタンブールで4年間過ごしたのち、2014年から株式会社ユーザベースへ。「経済情報で、世界を変える」をミッションに、原体験を原動力に世の中を変えたい!という想いが溢れた部分に共感し、従業員数5名くらいの頃に参画。当時はワーキングマザー第1号。IPO(2016年)も控え、多様な人が働ける環境を作るべく、バックオフィスとして「できることを全部やる」をパワフルに推進されてきました。2019年から再び夫の海外赴任に伴いバンコクに転居し、リモートマネジメントを経験。2020年に帰国し、2021年よりユーザベース取締役就任。また、パナソニックとユニファの社外取締役にも就任されました。現在、グループ全体の人事や組織設計などを担っています。
ユーザベースのグループ内には、エキスパートネットワーク企業(MIMIR)もあり、女性のエキスパートのネットワーキングにも、もっと力を入れていけたらと考えているそうです。
ご自身のライフステージの変化の経験も踏まえ、「多様なメンバーが、モチベーション高く、効率的・効果的に能力を発揮できる環境をつくること」に活かされてらっしゃいます。
■ 松井しのぶさんとの質疑応答
Q. コーポレートガバナンスはいつから、どこから始めましたか?
(阿部 愛さん / 600株式会社Employee experience担当執行役員/コーポレートマネージャー)
現在約20名、バックオフィスの体制はこれから強化予定です。最近リリース等の発表を出す中で、成長速度が上がりガバナンス体制を今から考えなければいけないのかな? とぼんやりと感じています。松井さんがIPOを迎えたタイミングで、社内・社外にどういう組織体制や専門家を頼ったかを、将来的な展望として伺ってみたいです。
松井さん:人数の状況によって変わってくると思います。ユーザベースへ入社した当時はCFOと2名でバックオフィス業務を行っていたのですが、経理だけアウトソースでしていました。とはいえ、決算が関わると経理は兼務であっても必要。例えば、IPOに伴う資料や規程を作るようなものは、IPOコンサルタント(※)への依頼など、アウトソースして整備できてしまう部分はあります。一方、社内のみんなを巻き込むような「制度や体制作り」は社内に1人コアとなる人がいて、色んな人をハンドリングしながら作る体制が必要です。
(※IPOコンサルタントは個人、法人、会計士の方などがいる)
Q. 採用(幹部CXO)について、近い未来の目標設定の仕方、組織の立ち上げ方法を知りたい!
(山口 絵里さん / 株式会社FUN UP 代表取締役(monomy 運営))
経営が得意な人を迎えたいフェーズなので探しているものの、自社にうまくマッチする人はどんな人なのか、そのような人とどう出会って、どうやって巻き込んでいくのか?をぜひ知りたいです。
松井さん:山口さんの会社の場合、ビジョンを描いたりモノづくりはご自身でできるけれど「経営管理や組織体制を整える人が必要」という認識であれば「COO」が必要という状況かも。確かに、エージェント経由で探すのも難しい領域なので、自分がお付き合いしている人の中でリファラルで捕まえるのが一番良いかもしれませんね!ちなみに、スマートラウンドの冨田さんはどうやって現職に?
冨田さん:経営者が信頼する人の紹介だったこと、また自身が興味のある領域だったことがとても大きいです。
松井さん:なるほど、経営者の人柄との相性が良い、かつ候補者の方の持つ興味の対象がマッチするところを狙って見つけるのがベストかもしれないですね。
Q. 採用をどうやって行っていくか?
(冨田 阿里さん / 株式会社スマートラウンド 執行役員COO)
現在9名。成長する中で、CTOとCEOと毎日必ず30分は採用に使っているものの、ピッタリの方と巡り合うのは至難の業だと感じています。
松井さん:とにかく繋がっておくことが大事。人材候補のプールをご自身で作っておくことが非常に重要だと思います。
冨田さん:人材候補の方と繋がる方法やコンタクト先の拡げ方とは?
松井さん:本当に、さまざまな場(飲み会含め)を人と繋がるチャンスにします。その時のその人のステータスでは転職を考えていなくても、自分のことを覚えていてくれたら来てくれる可能性だってあります。
プラットフォーム(例えば、WantedlyやBizReach、LinkedInなど)を経由しても、カジュアルでも良いので、どんどん会っていく機会を作る。私も、1日3時間くらいかけて色んな人に暇さえあれば声をかけていった時期があります。でも、(夜中にメッセージ送るとブラックかな? )とかも気にしながらやってました。
山中さん:ユーザベースさんでは、採用コンサルなど外部の方も活用していましたか?
松井さん:使っていないですね。
冨田さん:欲しかった人材が、他社にとられてしまうとかもありますか?
松井さん:ある。組織が大きくなったゆえの固定した給与体系や制度ゆえに難しいこともあります。
冨田さん:「こういう人が欲しい!」というイメージがある時はどうすればいいでしょうか?
松井さん:どんな企業で、どんなミッションでどうなりたいか? を伝える相手をたくさん作ることをおすすめしたいです。30分とは言わずもっとカロリーを割いた方がいい部分です。
Q. スタートアップのスピード感と熱量と、子育てをしながらの時短ワークをどう両立していますか?
(奥 温子さん / 株式会社ChiCaRo 代表取締役社長)
子育てロボットの会社ということもあり、メンバーの大半が育児中。子どもの急な発熱や行事などのため業務時間が確保できないときの理解はかなり深いけれども、それぞれの事情が重なると誰かにしわ寄せが行ってしまう点を解決したく悩んでいます。
松井さん:会社と社員はWin-Winじゃないといけないんです。アウトプットへのコミットに関してはフェアにドライに見ていかないと、組織がいびつになってしまいます。今の状況を鑑みると、従業員にダイバーシティを持たせた方がよいかもしれないですね。一般企業とは逆のダイバーシティになっているので、あえて違う視点のメンバーを引き入れるのもありだと思います。
奥さん:アウトプットへのフェアな扱い方ってどう作るのがベストでしょうか?
松井さん:後だしじゃんけんにならないように、納得できる説明と透明性を持つことが大切。今の課題とその改善策に加え、今後入ってくる人へ説明できるアウトプットと給与体系の整備をする必要があります。
奥さん:組織の仕組み化や整備ができる人も探しています。ちなみに、ミッション、バリュー等も社内で作ったのでしょうか?
松井さん:社内でコアの部分(大事にしているもの、目指しているもの)は作りましたが、コピーライティングはプロフェッショナルの方にお願いしています。会社の規模に関わらず、ミッション・ビジョン・バリューの策定を、経営合宿で行う会社も多いですね。
Q. 毎日多忙でタスクに追われる中で、自分の長期キャリア計画はどう考えていけば良い?
(渡部 沙和さん / 株式会社空 バックオフィス担当)
組織がピボットして人が入れ替わる中で、総務・人事・経理・労務等、どこに軸足を置いてやればいいのか?を悩んでいました。
先生をどのくらい頼って、バックオフィスとして何を自分で学ぶべきか? の優先順位付けに迷います。現状、「自分の将来の優先順位<会社経営を維持する優先順位」なのですが、このままで良いのでしょうか?
松井さん:私も、自分の経験や専門性をいかせば(松井さんの場合は)税務がいきている部分も一部はあるけど、それ以外は未経験のことへの挑戦がほとんどでした。会社が大きくなると、自分が直接見る範囲は絞られてしまうが、アーリーステージだと広い範囲を見られる醍醐味もあります。その2つのうち、「自身がどちらが好きか? 」によっても選択は変わるはずです。
Q. 自分の知識と専門家を頼る部分線引きはどうしていますか?
(渡部 沙和さん / 株式会社空 バックオフィス担当)
弁護士さんなど自分で見極めにくい専門家とのマッチングについて難しく感じています。どう工夫されていますか?
松井さん:専門家との関係構築は結構難しいですよね。相手の専門性もさることながら、自社の将来を買っていただく&応援していただけ、すぐ相談できるような人であるかどうかを重視してお付き合いしています。同じ目線で、横を走ってくれるような人がベストです。
■ 特別相談会後のこぼれ話
... 実際には、もっと具体的でディープな質問と、豊富なご経験を持つ松井さんだからこその回答に溢れた特別相談会。プログラム終了後行われたプチ交流会でのこぼれ話、感想も少しだけご紹介!
Q. そういえば、松井さんの採用面接ってどんな感じなんですか!?
松井さん:私は、何してきたのか、どんな人なのかをすごく聞くんですよ。
ユーザベースでも、今まで一次面接をめちゃくちゃたくさんやってて。どんな人か聞くのもさることながら、そこで弊社に”惚れて”欲しい!会社のアピールタイムだと思って、情熱を伝える機会にもしています。
Q. 組織の成長過程でぶつかる人数の壁=50人の壁問題について
松井さん:最初の正念場は30人だと思います。ちょっとだけセクショナリズムができるんです。みんな目指しているところは同じでも、登山路が違うみたいな違いが出てきます。次に、50人くらいだと1人の執行役員で10人~15人くらい見ている状況になります。ユーザベースでは、分担はしつつもチーム経営を意識して、困ったことをカバーし合って解消することにしていました。
Q. 松井さんでも辞めたいと思ったことはあるんですか?
松井さん:「辞めたい」というより「自分よりベストな人がいるかも」と思ったことはありますね。
Q. 松井さんみたいな方を採用したい人はいっぱいるんですが、どこで出会えるんだろう……
松井さん:経営者自身の人柄もかなりありますね。そこに対して、「何があっても一緒に添い遂げて行きたい! 」と思える人がマッチしていくのかなと思っています。
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■ 編集後記
予定時間を大幅に過ぎても話は尽きず… 最後には、参加者全員で記念撮影 📸
松井さん、ご参加いただいた皆さん、本当にありがとうございました!
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【松井しのぶさん Profile】
ユーザベース 取締役 CPO/CAO。公認会計士。
国内大手監査法人を経て、PwC税理士法人で国際税務のコンサルティングマネージャーに従事。
2014年ユーザベースに参画し、グループ全体の人事、組織設計、法務、コーポレート・ガバナンス、総務、情報セキュリティ、海外管理、広報ブランディングなどを所管。2021年から現職。家庭の事情で、タイのバンコクからのリモートマネジメントに挑戦し、2020年に東京に帰国。
ミッションは、ユーザベースグループのメンバーがモチベーション高く効率的・効果的に能力が発揮できる環境をつくること。
↑松井さんに関する記事は、こちらもおすすめ!ユーザベースで働くメンバーを紹介する社員紹介インタビュー、第40弾!!
【meeTalk(ミートーク)とは】
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ライター:平野陽子