そろそろ「詩」の魅力を味わってみたい方へオススメしたい2冊
「詩」に馴染みはないけれど
そろそろ
「詩」の魅力を味わってみたい…
そんな方へ、オススメしたいのが
「瞬間」/ヴィスワヴァ・シンボルスカ
1913年にポーランドで生まれ
2012年に亡くなるまで
ポーランドで過ごした
ノーベル文学賞を受賞作家(1996年)
シンボルスカ。
彼女は、決して「濫作しない」ため
5年、時には10年に1度
くらいのペースでしか詩集を出さない。
しかも、散文を依頼されても断り
もちろん、派手な広告もなければ
マスコミに顔を出すようなこともしない。
商業作家が多い中で
あるべき姿を貫いている
彼女の生き方が
わたしは、大好きだ。
各種エピソードも含め
彼女がとても禁欲的であるが故に
堅苦しい詩を紡ぐかと思いきや
実際は、その真逆で
とても親しみやすく
平易な言葉遣いで、簡潔。
詩にありがちな
特殊なリズムや押韻もなく
自由な表現で、確信をついてくる。
描かれるものは
ほぼ、わたしたちの日常に
寄り添っていて
詩に慣れ親しんでいない
わたしのようなものでも
スッとココロに染み込んで
詩の魅力を味わわせてくれる。
シンボルスカは
国際的にとても著名な詩人で
欧米のほど詩が日常に根付いてない
日本においても
1997年に発行された
「終わりと始まり」は
多くの読書家を引きつけた。
(日本では2002年発行)
かくいうわたしも
この「終わりと始まり」は
折に触れてその扉を開きたい宝物だが
新たに発行された
「瞬間」もまた
引けを取らない、特別な1冊となった。
「瞬間」には23の詩が
綴られている。
わたしのココロを捉えて離さず
何度も読み返したのは
「魂について一言」
この感覚は
いつもどこかで
感じていたものだけど
シンボルスカが
文字に落としてくれたことで
腹落ちしたというか
その文字を読むことで
あらためて、
その感覚がなんたるかが
分かったという感触を得た。
毎日食べるように本を読んでいても
これまでの人生において
衝撃を受ける作品は
正直なところ
そうそうあるものではない。
しかし
この「魂について一言」は
棺桶にまで持っていきたい
私的に貴重な作品のひとつとなった。
これから、
何度も繰り返し読んでは
深いため息を漏らすことになるだろう。
また、本詩集中の
「とてもふしぎな三つのことば」
「すべて」
の2つの詩は
いずれもとても短い作品ながら
簡潔に重要なことを言い得ている。
「言葉はいつも思いに足りない」と
よく言われるように
わたしも日頃から
言葉というものの
過不足感を感じる者として
この2作品は、とても好ましく感じた。
人間を人間たらしめている
言葉というのは
とても危うい。
詩は、欧米諸国に比べると
日本であまりポピュラーなものではない。
わたし自身も、馴染みが薄い。
しかし、
シンボルスカの詩は
とても日常的で
同じ目線に見える世界を
平易な言葉で描いているから
素人でも、ハッとさせられる。
加えて、
「終わりと始まり」も「瞬間」も
各詩集内の全ての詩に
「沼野充義」氏の解説がついている。
沼野氏は
ロシア・ポーランド文学の第一人者。
東京大学でロシア文学を学ばれた後
ハーバード大学でMBAを取得され
その後、さまざまな大学で
教鞭をとられてきた68歳(2022年現在)。
なんと奥様までも
ロシア文学者という
人生丸ごと
ロシア・ポーランドという先生。
そんな沼野氏が
詩に馴染みのない
わたしたち日本人ために
ひとつひとつの詩に
深みを与える解説を
添えていただいているのだから
翻訳本のありがたさを痛切する。
そんなおトクな
「付録付き」な部分も含めて
ぜひ手にとって
読んでみてほしい一冊なのです。
最後に
現代ロシア文学の第一人者である
「リュドミラ・ウリツカヤ」は
彼女の作品「緑の天幕」の中で
「詩について」綴っている一文を紹介したい。
わたしのウリツカヤの紹介は、こちら。
わたしもまだ「詩」に
馴染みがあるわけではないけれど
「詩」の持つ底知れぬ魅力に
ようやく気が付いた。
そろそろ
「詩」を味わってみたいなっと思っている人は
その最初の一歩として
ぜひ、シンボルスカを手にとってみて欲しい。
最後までお読みいただき
本当にありがとうございます。
わたしの
本や読書についてのコラムは
こちらにまとめてあります。
よろしければご覧ください。