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第198話 性を奪還せよ


 次の宇宙子さんとのセッションでは、再び表面までたくさん浮上してきた義行と、一度はゆっくり蓋をした、その母であった過去世を視ていくことになった。

 初めて親子と分かった時には幼児だった義行は、先日少しだけ成長した姿で現れた。それが今日のセッションで視えた“今生の別れのシーン”では、六、七歳の年齢は殆どそのままに、カーキの上下に身を包んだ坊主頭の姿となっていた。
 太平洋戦争は、その終盤の局面へと近づいてきていた。

 疎開して一人生き延びるくらいなら、死ぬかもしれなくてもお母さんと一緒にいたいのに……。

 こちらに背を向けて横になり、私に涙を見せまいと布団で堪える息子の姿がそこにあった。
 さらに彼自身の持つ記憶が入ってくると、胸が苦しくて仕方がなかった。母である私と離れ新たな移住先へと向かうため、誰と喋る訳でもなく真っ暗い汽車に揺られている。
 ビジョン全体がほの暗く、また窓の景色もトンネルの中のように漆黒に視えるのは、まだ幼くして別れを経験しなければいけないことによる悲しみや淋しさ、そこに付随する怒りなど、闇の感情に飲まれているため。

 最初はそれらを直視することすら厳しかった。痛くて引きちぎれそうな義行の母の感情は、“逃げ”と“麻痺”、つまり更なるブロックを渇望していた。
 ハイヤーセルフとガイドたち、それに宇宙子さんと一緒になって光を当てるとやがては少しずつ落ち着いてくる。
 それによって母親としての愛情が泉のように湧いてくると、“私の小さい男の子”はやがて立派な青年となった。
 背も高く声変わりもとっくに終わり、だけど時代的にカーキの服の色はそのままに、大きくなった義行からこう言われると泣いてしまった。

「産んでくれてありがとう。」

 向かい合うと、当時の私はすっかり背丈を越されていた。義行の母と統合が始まった私の意識はようやく少し微笑むと、「この子の母でよかった。」と、『別離そのもの』をも受け入れられるようになってきた。

 するとお腹がボコボコと動き時間軸が移動して、新たな闇が溢れてきた。

 義行と入れ替わりで、現在までも私に憑依しているヤマタ先生の意識が出てくると、同じ魂であっても義行とは別物のエゴだということに気づかされる。
 かつての母子とわかってすら、彼は未だに私を性的に求めることに執着していて、およそ魂の分離、分裂というものを改めて理解するに至った。

『それはそれ、これはこれ。』
だからこそ一貫性のないエゴは支離滅裂にも程があり、指摘されるとムキになる。
 性犯罪は魂の殺人だという考えが世に出て久しいが、殊、個人的な思念が絡み、尚それが三次元の“肉体次元”での接触ではないとなると、人は簡単にしらを切れる。

 宇宙子さんのハイヤーセルフが、彼女に方策を伝授する。

「ひみさん、“性を盗られた”って口にするよね。
それ、盗られたなら取り返しに行きましょう。」


 ここからのセッションは風変わりだった。
憑依されている私自身は無となって、巫女としてヤマタ先生の意識を入れると宇宙子さんとの直接対話を展開していく。

「“彼女”がね、あなたに性を盗られたことで、どれほど苦しんでいるのかわかる?
 彼女、あなたをとても怖がっているよ。『もう肉体なんか要らない』って言ってるよ。」

「えっ?(そんなつもりじゃない。)」

 ヤマタ先生が私の口から喋る中、同時に彼のエゴが何を考えているかが伝わってくる。宇宙子さんも、私の深いエゴの本音を逃さず拾って伝え出す。

「もうね、彼女、『生きていたくなんかない』って言ってるよ。あなたがそこまで彼女を追い詰めているんだよ。」

 嫌だ、嫌だとヤマタ先生が首を振る。
“この人の性を奪ってしまえば自分の物にできるんじゃないか”と勘違いのまま暴走し、それでもまだ来ないなら、もっと盗らなければとそんな思いでいたのがわかる。

「嫌だ(だから僕から逃げたの?)、
嫌だ(性を取ったから嫌われたの?)、
嫌だ(これを持ってれば僕のところに来てくれると思ってたのに)……。」


 自分のことながら、悲劇だと思った。
私の大切な命を人質に、そんな欺瞞(ぎまん)でエゴのためにおびき寄せられようとしていたなんて、恨みと悔しさが溢れると共に“人間意識”が虚しかった。

「盗った性を、彼女に返して。」

 やがて観念したかのように、彼は“私”を差し出した。
 くるくると右手が高次元を掴むと、戻ってきた性が左手の掌の中に吸い込まれていく。それを何度か繰り返すと、本来の私が微笑んでいた。

……

「凄かったねー。今までの私のセッションの中で、今日のが一、ニを争うと思う。ひみさん一人で全部持っていったね。地球が一段上がっちゃった。」


 今回私が浄化した二つ、“愛する人との別離の闇”と、“命を盗られた女性の恨み”。
 これらは私の闇であると同時に、同じ経験を持つたくさんの人の悲しみそのもの。昼間のセッションで宇宙子さんが「全部持っていった」と言ったように、近しい経験に苦しんでいた周辺意識に溺れる闇を今日でごっそり浄化させたことになる。

 その日の窓の外から見える夕日の美しさは格別だった。
 この景色が地球から私への贈り物だと気づいた夜、けーこからもLINEが届いた。そこには彼女が夕方撮影したという金色の空が写っていた。





written by ひみ

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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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この日、けーこからもらったLINEです笑


男性でも女性でも、耳の痛い方が少なくないんじゃないかと思います。
妄想で性を盗った自覚のある方、それはその相手の命そのものです。あなたこそ現在進行形で憑依体です。
心を込めて謝罪して、きちんとお返しくださいませ。

ちなみに私、このセッションのあと、片っ端から「お前が盗った性を返せ」と回って歩きました。
相手がわかっちゃうってやーね笑

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←今までのお話はこちら

→第199話 想い合う。支え合う。

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