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第152話 シリウスクライシス


 数週間振りに観る画面の中の宇宙子さんは、髪の毛を真っ赤に染めていた。「今年の浄化は今年のうちに。」そう言って笑う彼女と共に、年内最後のセッションがスタートした。

 お互いに、何か大きなブロックが浮上してきているのを感じ取り、今日はそこを視ていくことになった。

「ひみさんこれ、何か視えますか?」

 さっきから私の眼球は、目を閉じた瞼の下でその“何か”を探して上下左右、視界を隈なくキョロキョロと動き回っているのにもかかわらず、画面一杯の真っ黒に阻まれ一切のものを感知できずにいた。
 二、三分粘ってみても結局視界は開けずに、「これがブロックなのか。」と思った。

 宇宙子さんに手伝ってもらいそのブロックを開けていくことで、ようやく視界が開けてきた。相変わらず初めのうちは色が真っ黒でしかなかったけど、それでも奥行きが広がったことを感じて驚いた。
「ここはどこですか?」との質問に対し、緩やかな丘の草原のビジョンを眺めつつ、「シリウスです。」と答えることができた。

 やがて、俯瞰視点でとある田舎の一軒家の天井付近から、一人の男の子の姿を発見する。幼稚園児くらいの年齢だろうか、ちょっと赤茶けた髪色のマッシュルームカットの後頭部が、お母さんだと思われる女の人の膝周りに纏わりついていた。

「この子はシリウスの私と、……そのお母さん?」

 地球でいう、カントリー調の狭い木造の家の台所では、鍋の中の煮込み料理が湯気と共にコトコトいっている。男の子は料理を作る母の傍ら、きっと甘えたくてくっついているのだろう。

 それからもう一つ、別のシーンが現れた。
今度はその同じ男の子がソファーによじ登ろうと、まずお腹と両手をついてから片足ごとに這うように身体を載せていっている。星が違えど、子供の仕草はどこであっても一緒だなぁと思ってしまった。その隣には、やはりその子のお母さんが座っていた。

 宇宙子さんは、段階的にブロックを解体しようとクッションとなる質問をしてくれたけれど、そのことに答える隙もないほど一瞬で、助けを求める闇の核心がいきなり展開してきたことで、私の全てが酷い悲しみで一杯になってしまった。

「お母さん行かないで!お母さん行かないで!」

 その男の子と同期した私が、何度も繰り返して泣き叫んでいる。そして同時に、“聞いてくれる大人”である宇宙子さんに対して事情を説明し始まる。

「おじいちゃんが病気だから、お母さん、真っ暗なところに行かなきゃならなくなってんだって。
僕は小さいから置いていかなくちゃいけないんだって。
おじいちゃんが病気で大変だから、お母さん、真っ暗のところに行くんだって。
でも僕お母さんに行ってほしくないんだよね。
僕お母さんに行ってほしくないんだよね。」

 シリウスの少年はわんわん泣きじゃくって、自分と母との惨状を訴えてくる。


『おじいちゃんが病気だからお母さんが真っ暗なところに行く。』

 彼は何度もそう言うけど、本当はこれが、宇宙戦争によるものなのだと直感が理解していた。

 宇宙子さんの助け船により、状況がより明確になる。
 このお母さんにとってのお父さん、つまり男の子にとってのおじいちゃんの置かれた戦況は芳しくなく、苦渋の決断の末、彼女は息子を置いて父を助けに行ったとのことで、そしてそれきり帰らぬ人となってしまった。

 幼すぎた男の子は訳もわからず帰ってこない母に対し、『会いたくて淋しい』、『悲しい』といった感情のほか、『捨てられた』、『裏切られた』と思っており、またおじいちゃんに対しては、『僕おじいちゃんのことが心配なんだよ。』と何度も何度も繰り返し、安否を気遣い苦しんでいた。
 その小さな心と体に有り余るほどの張り裂けそうな闇を溢れさせ、あまりに苦しく“当時の私”の魂はシリウスそのものに対して扉を閉めて鍵をかけたのだろうということがわかってきた。

「戦争でね。
あなたのお母さんも、その時できることを精一杯やった。決してあなたを捨てたかった訳じゃないよ。置いていきたくて置いていった訳じゃない。
本当はお母さんも、あなたと一緒にいたかった。
だけどあなたを戦場に連れていったら、小さなあなたが死んでしまうだろうことをお母さんはわかってたの。
だからあなたの命を守るため、お母さんはあなたを置いていったんだよ。
あなたのこと愛していたから、あなたには、何があっても生き残ってほしかったんだよ。」

 宇宙子さんのその言葉を、小さな“僕”は必死に理解しようとしていた。

「僕が嫌いになったんじゃなかったの?本当はお母さん、僕のことを守りたかったの?」 

 自分の中に、これほどまでの闇があったとは想像すらしていなかった。だけどそれらの酷すぎる苦しみを、たった数歳の子供に押しつけたまま“私”が生きてきたことに、心からの申し訳なさを感じた。
 泣きながら、徐々に感情が氷解していくのがわかった。もちろんセッションの時間だけで彼を癒すことはできないけど、こうしてブロックが外れたことで、セルフケアへと繋げられる。


 センタリングをして意識をこちらに戻してくると、私は宇宙子さんに聞いてみた。

「シリウスっていう星は、厳格な、威厳のありそうな“お爺さん”って感じがするんですけど、星自体そんなかんじですか?」

「シリウスはそうよ。私も同じ感覚。古い宇宙の“叡智”。」

……やっぱり。

 前にウニヒピリと上った階段の、その先の重厚な扉が開いていた意味がわかった。

 あの夢は、今日のこのセッションのことを指していたんだ。

 その扉の先が宇宙だったのも、このシリウスへと繋がることを示唆していたのだ。

 今日、私の過去世であるこの男の子に出会えたことに、心から感謝した。まだどうしようもないくらい次から次から悲しくて仕方がないけど、この子が再び平安を取り戻せるよう、私がこの子を愛し抜いていこうと誓った。



written by ひみ

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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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さて。晦日ですね。大晦日。
ここにきて怒涛の浄化をさせられている私は、連日のようにそれに比例して大アセンションして驚いています。私自身、2021に駆け込みでできるだけのことをやってしまおうよと、ケツ叩かれてる気分です。

……一応ね、節分までは、うっすら2021の余韻が無くはないと信じたいけどね……。 

それでも今回のクロージングに際しては、グレーゾーンが殆どないとの情報がすでに降りてきています。つまり、時間的にもすぐにでも次元間の行き来がしにくくなるということです。

私も彼も、冬至直前まで篩い分けをさせられていたようでした。最初、浄化かと思ったけど篩い分けだったね。(けーことツインくんもね。詳しくはこないだのアメブロ『ツインレイの彼のオトモダチ』参照)
もうね、これっぽっちしか五次元に行ける人の絶対数がいない中で、これからの地球を牽引しろと言われてもまったくわかりませんがね。
そんな中でみなさんよくこの篩い分けに耐え、meetooスパルタ道場に食らいついて残ってくれたよね笑

2021年は、どれだけみっともなくもがこうと、やり切った方おめでとう!本当にお疲れ様でした。
あと半日あるけどね。(←鬼)
そしていよいよ、個としての自立が求められる時代に入りました。そのために道場してきた、今までの奮闘があなたの糧になっていきますよ。 

ではまた来年♪2022にお会いしましょう!

(たぶんだけど私、明日もしれっと小説の続き掲げてそうな気がするわ笑
2021お疲れさんした私!卒論より遥かに書いたよ私!愛してる私!!)

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←今までのお話はこちら

→第153話 宇宙戦争と航海士

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