【韓国】水素燃料電池ドローンなどゼロエミッションで世界をリード
世界初の水素燃料電池VTOL固定翼ドローンを開発したことで知られる韓国の斗山モビリティ・イノベーション(Doosan Mobility Innovation)社の水素燃料電池ドローン「DJ25」が「Drones & Unmanned Systems」部門で、水素燃料電池ドローンによる太陽光発電施設の検査・点検ソリューションが「Sustainability, Eco-Design & Smart Energy」部門でそれぞれ『CES 2022 イノベーション賞』(CES 2022 Innovation Awards)を受賞した。
斗山モビリティ・イノベーション(DMI)社の親会社である斗山(Doosan Corporation)を含めた斗山グループでは「廃プラスチックの熱分解による水素製造技術」(Hydrogen production through pyrolysis of waste plastics)、世界初の全電動建設機械(全電動コンパクトトラックローダー)「Bobcat T7X」(Bobcat T7X -- Redefining the Construction Work Machine)、パターンフラットケーブル「Doosan PFC」(Patterned Flat Cable)、カメラロボットシステム「Doosan NINA」(Doosan New Inspiration New Angle)と合計6つの技術と製品で『CES 2022 イノベーション賞』を受賞し、そのほとんどがゼロエミッション(カーボンニュートラル)に関連した環境負担(環境負荷)軽減に貢献するテクノロジープロダクトとなっている。
水素燃料電池VTOL固定翼ドローン「DJ25」
『CES 2022 イノベーション賞』「Drones & Unmanned Systems」部門を受賞した世界初の水素燃料電池VTOL固定翼ドローン(hydrogen fuel cell VTOL fixed-wing drone)「DJ25」はDMI社の水素燃料技術をベースに中国JOUAV社の協力で2021年に開発された。
DMI社の水素PEMFC(Proton-Exchange Membrane Fuel Cell)技術をVTOLエアフレームに組み込むことに成功し、最大航続距離500km、最大飛行時間5時間30分、最大ペイロード4kgを実現。静音性にも優れた機体(UAV)となっている。
水素燃料電池ドローンによる点検ソリューション
「Sustainability, Eco-Design & Smart Energy」部門で『CES 2022 イノベーション賞』を受賞したDMI社の水素燃料電池ドローンによる太陽光発電施設の検査・点検ソリューション。
水素PEMFC(Proton-exchange Membrane Fuel Cells)技術を活かした最大飛行時間120分(2時間)を誇るDMI社の水素燃料電池マルチロータードローンにより1回の飛行で数十万枚のソーラーパネルを撮影し、12MWクラスの太陽光発電所を監視することが可能となっている。収集されたデータはクラウドに送られAI(人工知能)によって分析されたレポートがユーザーに送信される。
水素燃料電池ドローンの特徴
水素燃料電池ドローンの特徴は、バッテリーによる電動ドローンより最大飛行時間と最大航続距離が長いことにある。殊にマルチローター(マルチコプター)ドローンではその傾向が顕著であり、バッテリーによる電動ドローンの最大飛行時間が一般的に数十分であるのに対し、水素燃料電池マルチロータードローンの最大飛行時間は2時間を超える。
ただし、ハイブリッド(hybrid)マルチロータードローンは最大飛行時間10時間オーバーを達成しているので、水素燃料電池ドローンおよびバッテリーによる電動ドローンの最大飛行時間と最大航続距離はハイブリッドドローンに劣る。
しかし、排ガスが出るハイブリッドドローンに対し、水素燃料電池ドローンはグリーン水素を使用した場合、バッテリーによる電動ドローンはグリーンエネルギーでバッテリーを充電した場合においては環境負担がほとんどないのがメリットとなっている。
そのため水素燃料電池ドローンは環境負担を低減するためのゼロエミッション(カーボンニュートラル)実現に向けた推進システムを搭載するエコでクリーンなドローン(UAV)として注目されている。
ゼロエミッションハブでもリードする韓国
DMI社の水素燃料電池ドローンだけでなく、環境負担軽減のためのアドバンスドエアモビリティ(advanced air mobility)およびそのサブセットであるアーバンエアモビリティ(urban air mobility)で所謂「空飛ぶクルマ」と呼称されるエアモビリティ(air mobility)に必要不可欠となるVertiport(垂直離着陸用飛行場)でも世界初となるゼロエミッションハブ(ゼロエミッション空港)「Air-One」などのコンセプトをイギリスUrban-Air Port社と共に提示したのは韓国の現代自動車であり、ゼロエミッションハブでも韓国が世界をリードしている。(以前の記事『【エアモビリティ】空飛ぶクルマ、乗用ドローン、eVTOLは何が違うのか?』を参照ください。)
イノベーション指数で世界TOPの韓国
水素燃料電池ドローンやゼロエミッションハブなどエアモビリティ分野でも環境負担軽減のビジョンとコンセプトで世界をリードする韓国(South Korea)は、『Bloomberg』のイノベーションランキング「Bloomberg Innovation Index 2021」で世界第1位となっている。因みに、日本はTOP10圏外の第12位である。
日本の水素燃料電池ドローン
日本の水素燃料電池ドローンでは、英国(イギリス)インテリジェント・エナジー(Intelligent Energy)社の水素燃料電池を搭載した株式会社ロボデックスのヘキサロータードローンが経済産業省と国土交通省の許可を受け、2021年11月18日に日本初のテスト飛行に成功した段階である。
ロボデックス社以外では、シンガポールH3 Dynamics社のAEROSTAK水素燃料電池システムと日本のJFEコンテイナー社が開発した小型の高圧水素用複合容器を搭載したドローンワークス株式会社のクワッドロータードローンが経済産業省の認可を受け、2021年11月29日にテスト飛行に成功している。
ビジョンが欠落した日本のゼロエミッション
以上の事例から明らかなように日本の水素燃料電池ドローン開発はいずれもテスト飛行の段階と出遅れているだけでなく、管見ながら日本独自の水素PEMFC(Proton-exchange Membrane Fuel Cells)技術を使用した水素燃料電池ドローンがテスト飛行に成功した事例はまだ存在しない。
そんな中、DMI社はこの数日だけでも、Iris Automation社およびDrone America社、Southern California Gas Company(SoCalGas)、42air社などと提携し、着実に世界で拡大を進めている。
残念ながら日本はゼロエミッション(カーボンニュートラル)に取り組むビジョンとコンセプトの世界に対する発信が致命的に欠如しているのが現実である。
ビジョンとコンセプトを発信できる日本へ
日本企業は今更カーボンニュートラルや再生可能エネルギーへの取り組みを誇大宣伝し出したが、EUが原子力発電と天然ガスをグリーンエネルギー(持続可能な経済活動)に分類するEUタクソノミー方針を示したように世界から完全に周回遅れとなっている。つまり、日本企業のゼロエミッションに対する取り組みはグリーンウォッシング(greenwashing)でしかない。
ゲームのルールも理解できず、ビジョンとコンセプトさえ世界に発信できなければ翻弄されて没落するだけである。ゲームのルールを変える力がなく変更できないのならせめて枠組の中でビジョンとコンセプトを打ち出す必要がある。
どんどん後進国となり衰退の末路を辿りはじめた日本。今日は「成人の日」ということもあり、新成人をはじめこれからの日本人が世界にビジョンとコンセプトを打ち出せるようまずはSDGsに向けて私も適度に頑張って発信を続けたいと思う。
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