【空中スクリュー】レオナルド・ダ・ヴィンチのスケッチがドローンで実現
今から約530年前、1480年代にレオナルド・ダ・ヴィンチが描いた大きなスクリューの形をした「ヘリコプター」ような航空機のスケッチはあまりにも有名だが、寡聞にして実際に製作して飛行実験したという話は記憶にない。
それが今回、メリーランド大学(University of Maryland)航空宇宙エンジニアリング学部(Department of Aerospace Engineering)の大学院生Austin Preteらがデザインコンテスト「UMD Submissions to the VFS Student Design Competition」のために製作したクワッドコプタードローン「Crimson Spin」によって実現された。
最初に報道したのは『CNET』で「This drone flies using da Vinci's 530-year-old helicopter design」を書いたStephen Shanklandだが、記事も動画もその後の『Gizmodo』「This Working Quadcopter Drone Was Built Using Leonardo da Vinci's 500-Year-Old Sketches」が詳しいので本稿では後者の記事をベースとしつつ「Crimson Spin」を概観する。さらに、『The Drive』「DaVinci-Style Drone With 600-Year-Old Screw Rotor Design Actually Flies」で新たな資料が出てきたので動画と画像を追加した。
その後、メリーランド大学工学部が公式に記事「A New Spin on a Classic da Vinci Design」と動画「Crimson Spin: A New Take on da Vinci's "Aerial Screw"」を発表したので公式動画を追加した。
(尚、本稿では敬称などを省略することとします。)
空中スクリュー(aerial screw)
レオナルド・ダ・ヴィンチ(「ダ・ヴィンチ」は「ヴィンチ村の」「ヴィンチ村出身の」という意味なので以下「レオナルド」と表記)のスケッチした「空中スクリュー」(aerial screw)は、レオナルドが「アルキメデスの螺旋」(Archimedes' screw)に想を得たものだと考えられている。空気を掻き出すことで推進力を生み出そうとしていたと想像される。
空中スクリューが発生させる空気スクリュー
今回、メリーランド大学が実際にレオナルドの「空中スクリュー」を再現して判明した流体力学(取り分け空気力学)上の発見は「空中スクリュー」が空気を掻き出して推進力を生み出している訳ではなく、スクリューの外縁に沿って発生する「空気スクリュー」(空気の渦)が上向きの推進力(揚力)を生み出していることである。つまり、「クッタの条件」を満たし「循環」が起こっていると思われる(クッタ・ジューコフスキーの定理)。「空中スクリュー」が発生させる「空気スクリュー」が推進力を生み出しているのは何とも面白い。従来のプロペラよりダウンウォッシュが少なく、静かなのが「空中スクリュー」の特徴である。
飛行に成功した「Crimson Spin」
その「空中スクリュー」を4つ搭載したメリーランド大学のクワッドローター(クワッドコプター)ドローン「Crimson Spin」は見事にテスト飛行に成功した。そしてこの度『2022 Transformative Vertical Flight』で「Crimson Spin」の飛行動画が公開され、今回のニュースとなった訳である。
今後の課題とロマン
小型ドローンでは飛行に成功したレオナルドの「空中スクリュー」だが、大型化するには当時も現在も素材の比重が問題となる。また、空気抵抗も大きそうで側面などから機体が煽られないか心配でもある。しかし、今後研究が進めば新たな発見があり、改良されて実用化されるかもしれない。約530年前のスケッチが実現され、レオナルドの「空中スクリュー」が実際に飛行したことも、今後の研究がもたらすであろう何らかの進展も、まさにロマンと言っても過言ではない。