【ドローンにパイロットは不要】ドローンレースでもAIが人間に完勝
これまでもドローン(UAV)に操縦者は必要ないことをTwitterなどで再三再四述べてきたが、今回はDavide Scaramuzza教授率いるチューリッヒ大学Robotics and Perception GroupのAI(人工知能)制御自律型クワッドロータードローンがドローンレースで人間のパイロット(操縦士)に完勝。
『Science Robotics』に新しいアルゴリズムの論文『Time-Optimal Planning for Quadrotor Waypoint Flight』(DOI: 10.1126/scirobotics.abh1221)と検証動画『AI Drone faster than Humans? Time-Optimal Planning for Quadrotor Waypoint Flight』が公開された。
人間より優れたAIのドローン操縦技術
ドローンの高難度曲芸飛行(アクロバット飛行)におけるAIのドローン操縦テクニックは、既に人間の操縦者では実行できないレベルに達している。また、米国防総省国防高等研究計画局(DARPA)が実施した戦闘機(F-16)シミュレーションでのAI対人間のドッグファイト「AlphaDogfight」でもAIが人間のパイロットに5戦全勝したことは有名である。
ドローンレースでもAIが人間に圧勝
新しいアルゴリズムはウェイポイントから最速の軌道を見つけ出し、クワッドローター(クワッドコプター)ドローンを自律飛行させることができる。今回の自律型クワッドロータードローンを使用したドローンレースにおいてAIは全てのラップで人間のパイロットを上回った。
今回のAIベース自律飛行に残る課題
今後のAI制御によるドローン自律飛行の課題として、今回はまだ位置情報の把握を外部カメラとの通信に頼っていたが、今後はオンボードセンサーだけの測位による自律飛行を目指すことが求められる。また、汎用化のためには計算時間短縮のためアルゴリズムの効率化が必要と考えられる。
アップデート(Swiss Drone Days 2022)
「Swiss Drone Days 2022」(June 11-12)において公平公正なレース環境でのオンボードセンサーとオンボードコンピューティングのみのAI制御自律型ドローン(チューリッヒ大学)と人間の世界トップパイロット3人のドローンレースが行われ、ここでもAIが人間に圧勝した。
人間のトップパイロット3人には好きなだけ練習時間が与えられ、合計でコース700周以上の練習で準備してからの公平公正なレース環境での対戦となったが、AIは最速だった人間のパイロットに0.5秒差を付け勝利。通常のドローンレースではコンマ1秒単位で勝敗が争われるので、まさにAIの圧勝という結果だった。
自律飛行AI「Swift」システム
チューリッヒ大学Robotics and Perception Groupの自律型クワッドロータードローンには深層強化学習(deep reinforcement learning)によりオンボードセンサーとオンボードコンピューティングのみを使用してドローンレースコースを自律飛行するAI「Swift」システムが組み込まれている。
今後の課題
今後の課題としては、現状AIはコースを最適ルートで飛行することしか考えていないので、対戦相手の位置を把握して衝突を回避しながら飛行できるようにする必要がある。もちろん、汎用性を持たせるためにはロバスト化を進めなければならない。
アップデート(『Nature』2023年8月31日号)
「Swiss Drone Days 2022」の結果を踏まえた研究論文『Champion-level drone racing using deep reinforcement learning』(DOI: 10.1038/s41586-023-06419-4)が『Nature』(2023年8月31日号)に掲載されたことによるアップデート。
補足:オープンソース「Agilicious」
因みに、チューリッヒ大学Robotics and Perception Groupは未知環境でも敏捷飛行可能なクワッドロータードローン用ビジョンベース自律飛行ソフトウェアおよびハードウェアフレームワーク「Agilicious」をオープンソース化している。(『Agilicious: Open-source and open-hardware agile quadrotor for vision-based flight』DOI: 10.1126/scirobotics.abl6259)
オープンソース化が発表された際、日本の某ドローン専門メディア編集長にこれは興味深い大ニュースと伝えたが、全く取り上げられることはなかった。残念ながらドローン後進国にして衰退途上国の日本ではあまり認知されていないかもしれない。