恵まれないキャリアで良かった理由
恵まれないキャリアのおかげで独立できた
自分のキャリアを振り返ると、割に恵まれないキャリアを歩んできました。そもそも大学を出ておらず、最終学歴が高卒であるため就職先がかなり限定されてたのですよね。
知り合いのシステム会社でWebを独学で学びながら一通りのITスキルを身につけ、そこそこ大手の企業のWeb部門でアルバイトとして入りましたが、当時18歳だった私は時給1,000円の募集を時給800円で買い叩かれます(実際働いてみると、周りの誰よりもPhotoshopを使えたしHTMLコーディングが出来ていました)。
その後契約社員になり、転職して正社員となり、さらに数回転職をして、IT系の広告代理店を経て独立します。
独立してからは、そこそこ稼げるようになりましたが、独立して現在まで来られたのは恵まれないキャリアのおかげが大きいのです。
恵まれたキャリアの弊害
なぜ恵まれないキャリアによって独立ができたのか。その理由は、逆に「恵まれたキャリアの弊害」を考えると分かりやすいんですよね。
例えば、日本における恵まれたキャリアとは、名の知れた大学を出て、日本の大手企業(XでいうところのJTC)に入ることとされています。入社するとエスカレーター式に昇進し、どんどん賃金が上がっていく。これが一般的な「恵まれたキャリア」だと思います。
このキャリアを歩んだ場合の弊害は、「ブラックスワン」が起こることを理解できないという点です。「ブラックスワン」とは作家のナシム・ニコラス・タレブが定義した言葉で、予測不可能で極めて稀な事象が発生し、その影響が非常に大きい出来事を指します。
例えば、2008年のリーマンショックや2020年の新型コロナウイルスのパンデミックなどが挙げられます。
これを一個人に当てはめると、会社の倒産や突然の解雇などが該当するでしょう。
しかし、恵まれたキャリアを歩んできた人は、このブラックスワンが自分の身に降りかかるまでは、ただの幻想にすぎないと考えてしまうのです。
恵まれないキャリアで学んだこと
さきほど書いた通り、時給800円のアルバイトとしてスタートしましたが、その後転職を経て正社員となりました。
あるベンチャー企業に転職した年の冬、ボーナスが支給されないという通告を受けたんですよね。それまで、ボーナスというのは業績が悪ければ出ないこともある、と頭では分かっていたものの、実際に支給されないという経験は初めてでした。
転職時の想定年収には賞与額が含まれるため、当初想定していた年収が大きく下がることになりました。家庭持ちで住宅ローンを抱えていた人たちはもっと大変だったでしょう。
さらに数か月後、会社の資金繰りがさらに悪化していたらしく、末締めであった給与が15日締めに変更になることが通知されました。
これによって移行期間の1か月分の給与が半額になるという状況に直面します(その1か月の間、友達との会食はサイゼリヤか500円のラーメンでした)。
会社にとっては、キャッシュフローの流出を抑えるための措置だったのです。そして、ベンチャー企業のアラートとも言える状況が次々起こり、経理担当者や役員が次々に退職していきます。
このとき学んだのは、会社は資金不足になることがあり、その際にはキャッシュフローを抑えるために人件費を削るのだ、ということでした。当たり前のことなのですが、それが自分に降りかかるまでは実感できないんですよね。
このときに思ったのは、この船が沈むとしても、別の船に飛び移るだけの技量がなければ、自分も一緒に沈んでしまうということです。市場から求められるスキルを身につけなければいけないし、できれば会社という組織に頼らずに生きていく術を構築したいと思いました。
その後、さらに転職を重ねながら事業の立ち上げなどで経験を積み、独立して今に至ります。
「ブラックスワン」が起こりやすい現代
今でも大手企業は福利厚生に手厚く、賃金が高く、子育て支援も手厚く行われています。それは、その会社に多額の余剰資金があり、福利厚生や人件費に投資できる余力があるからです。
しかし、「ブラックスワン」的な突然変異はいつか起こります。誰も山一証券が破綻するとは思っていなかったし、シャープが鴻海(ホンハイ)に買収されるとは思っていませんでした。今好調な企業が、数十年先もずっと安泰だとは限りません。しかも、AIの普及により人件費に必要な投資は驚異的に圧縮されるでしょう。
そういう変化が起こりやすい現代だからこそ、組織から理不尽な処遇を受けた経験を持つ「恵まれないキャリア」というのは強みになるんですよね。「それ」が起こるかもしれないという覚悟ができているからです。
逆に、順風満帆でエスカレーター式に賃金が昇給してきた人は、たとえこの文章を読んだとしても、「それ」が起こるかもしれないことを、うまく飲み込めないと思います。
「ブラックスワン」にもありますが、クリスマスのガチョウは364日めまでは大切に飼われます。明日も今日と同じ1日が続くだろうと思っていたときに、いきなりクリスマスのチキンにされてしまうのです。
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