『陥穽 陸奥宗光の青春』辻原登著を読了|幕末から明治を生きた政治家の波瀾万丈の人生
辻原登著『陥穽 陸奥宗光の青春』を読了しました。
本書は、2023年3月1日から2024年1月31日まで、日本経済新聞の朝刊に連載されていた小説です。
私が気づいたときは、すでに連載が進んでいたので、書籍化されたら必ず買って読もうと思っていました。
そして、今年の7月に「丸善 丸の内本店」で並んでいるのを見つけて、手に取りました。
エピローグまでの本文が559ページまである、辞書のような分厚い本で、最後まで読み切れるか、少し不安があったのですが、3ヶ月間以上かかって、ようやく読み終えました。
こういう本を読了すると、達成感があり、知識が深まった気がします。
陸奥宗光は、外務大臣として、明治政府の重要課題であった日英通商航海条約の改正を実現したことで有名です。
しかし、その人生は波瀾万丈です。
紀州藩の下級藩士として生まれた陸奥宗光ですが、父の失脚により一家は窮乏の生活を強いられます。
それでも、勉学に長けた陸奥宗光は、高野山江戸番所の寺男として江戸に出ます。
そして、桂小五郎(木戸孝充)や伊藤俊輔(伊藤博文)らと交友を持つようになります。
また、亀山社中や海援隊のメンバーとして、坂本龍馬とも行動を共にしました。
維新後、明治新政府に加わりますが、西南戦争のときに土佐立志社の政府転覆計画に関わったとして、禁錮5年の刑を受けて投獄させられます。
刑を終えて出獄してから政界に復帰しますが、その後の政治家としての活躍が凄まじいのです。
日本史を学んでいて面白いのは、なんと言っても戦国時代と幕末です。
しかし、戦国時代は今から400年以上も前のことで、小説や映画などはフィクションの部分が多く、エンタメ性が高くなります。
戦国時代に比べて幕末は、まだ150年ほどしか経っていないため、史料もたくさん残っており、事実関係が確かなため、現在に繋がっているという実感が湧きます。
本書を読み終えて、こんなに激動の人生を送った人がいたということに驚いています。
また、陸奥宗光のような政治家の活躍があったからこそ、現在の日本が存在しているということも、改めて感じました。
現在の政治家の中で、陸奥宗光のように交渉力があって決断力のある人物が、果たしているのでしょうか。
この先150年後にも、語り継がれている政治家が現れることを期待してしまいます。
見出し画像出典:国立国会図書館「近代日本人の肖像」 (https://www.ndl.go.jp/portrait/datas/199/)