なぜ?肥満の方が心不全の生存に有利
はじめまして、医学研究者@ Dr_Tです。
今回初投稿に選んだのは、欧米でよく報告されている肥満と心不全生存率の関係についてです。
簡潔にまず結論をいうと、「肥満(BMI高直)であるほど、心不全の時に長生きする」ということが、2010ごろから欧米の医学研究者より論文が多く出ています。
おー、このお腹についた脂肪も無駄じゃなかった。と一安心する人もいるかと思いますが、最後まで読んでくださいね。
この話は、肥満の逆説(obesity paradox)として、循環器内科では有名な話になりつつあります。
この項では、この現象のメカニズムを解説します。
そのためにまず心臓の基本をお話しします。
基本的に人が生きるためには心臓は24時間365日休むことが許されません。そのため、ガソリン切れになることは、心臓が停止し、死を意味します。じゃあ、そのガソリンは何を利用しているのか?が問題になります。
基本的な心筋の80%以上のエネルギー代謝はは脂質代謝で行うように構成されています。
なぜ脂質かって思いますよね?
それは、①人間は皮下に脂肪常時溜め込んでること②脂質代謝から生み出されるエネルギーはその他のエネルギーと比べ物にならないくらい多いこと(糖代謝2ATP、脂質36ATP)が、挙げられます。
仮に、糖質をエンジンにしてしまったら、身体の糖はなんぼあっても足りなくて、長時間寝てる間に低血糖になって…大変ですよね。
そのため、脂質代謝でのエネルギー供給にて、人間の心臓は動いているんですね。
察しの良い方は、肥満の逆説(obesity paradox)との関連にちょっとピンときたかと思います。
話を戻しますと、心不全の状態になると、心筋が壊死したりすることで、通常よりもエネルギー飢餓の状態になり、とてつもない供給を求めます。全身性の脂質代謝が過剰亢進することが報告されています。
すなわち、肥満の人の方が、いくらでもエネルギー供給に対応できるってことですね。痩せの方々はその供給ができないので、不利になり死亡率が上がってしまう。その結果、肥満が心不全の生存予後に貢献している!と解釈されてきています。
先ほど述べたように、心不全の状態では、全身の脂質代謝の亢進します。その脂肪量減少は、体重が減少するの心不全の特徴でありますが、脂肪量の減少が急激な状態は心不全性悪液質と言って、より独立した生存予後の短縮因子となっています。
そのため、皮下脂肪が多い方が対応できるんでしょうね。
あー、これでダイエットしなくていいか!というわけにはいきません。
LDLコレステロール値などは、136以上で、心不全を含む血管系のリスクは非常にあがります。
肥満で不摂生が続き、心不全…
脂肪(蓄え)のアドバンテージがあってもその後の生活を考えると元も子もありません。
メタボリックシンドローム(生活習慣病)は、癌、脳卒中、心不全、糖尿病の全ての疾患の基盤となっています。
このような報告があっても、適性BMIに越したことは無いのは事実です。
みなさん身体に気をつけて過ごしていきましょう。
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