SUMMER SONIC 2023
SUMMER SONIC 2023 に行ってきた。
感想を書く。相変わらずクソ長いです。
Day1
SUMMIT All Stars → Newjeans → Shygirl → [ALEXANDROS]
→ HOLLY HUMBURSTONE → GABRIELS → HONNE → BLUR
Day2
NOVA TWINS → w.o.d. → THE SNUTS → WILLOW → FLO
→ INHALER → LIAM GALLAGHER → KENDRICK LAMAR
1日目
ちなみに一日目は半分ほどひとり参戦です。
SUMMIT All Stars
JXDNというアメリカ出身のシンガーソングライターが急遽キャンセルとなり、代打としてサマソニに集合したSUMMIT All Stars。
私はSUMMIT所属のOMSB,そしてC.O.S.A.というラッパーがめっぽう好きで、特にOMSBがマリンステージのようなどでかいステージでマイクを握ることがとても嬉しかった。だからこの代打のSUMMIT出演は正直沸いた。
AM10時頃、マリンステージ側からチケットを2daysリストバンドを交換した。荷物も最小限で来たので、クロークなども使う必要がなかった。
そのまま10時半頃にはマリンステージでSUMMITの出番を待機。
11時。冷えピタを額に貼ったPUNPEEを筆頭にSUMMIT All Starsが姿を現した。そのライブではSUMMITのメンバーたちが次々とマイクを回し合う。それはサイファーのような自由さであった。それでいて如何に自分のラップの方がフロアを沸かせられるか、メンバー同士でスキルを見せ合い、互いに切磋琢磨し、しのぎを削っているかのようなバチバチさ加減でもあった。しかしながらSUMMITメンバー。あくまでメンバー全員で一つのグルーヴを作り上げる。互いのラップに呼応し、絶妙な合いの手を入れ込むことでAll Starsならではの、この日限りのステージを作り上げる。代打でやってきたとは思えないほど、マリンステージの空気をHIPHOPで一色にした。C.O.S.A.のMikiura聴けたのが嬉しかった。
Newjeans
本年のひとつの目玉、Newjeans。彼女たちの快進撃は言うまでもない。私も彼女たちの楽曲のクオリティの高さには毎度舌を巻いてしまっている。
私はあまり彼女たち自身には興味がない。彼女たちの名前についても全く知らなくて、本日のライブで初めて名前を耳にした。
SUMMIT All Starsからの転換時には彼女たちの楽曲が流され、その時から既に合唱が聞こえてきた。周りにはNewjeansのグッズを持っている人も多く見られ、サマソニ公演に対する期待度の高さをひしひしと感じ取ることができた。
12時。NewjeansのSEが流れ、彼女たちが姿を見せる。瞬間に湧き上がる黄色い声援。なるほど、ものすごい人気であるなと実感した。
私はK-POPに代表されるようなアイドル文化に詳しくない。ライブを観るのも、彼女たちのライブで初めて。
正直に言えば、こんなものか〜という印象だった。彼女たちの楽曲はダンスミュージック寄りの低音を響かせているのが特徴の一つだと思うのだけど、ステージではそこまで低音が響いているわけでもなく。Newjeans本人たちのカリスマ性とでも言うのだろうか。圧倒的なビジュアルとパフォーマンスでマリンステージを圧巻していた。音楽の圧が少し物足りないように私は思えてしまった。
彼女たちは、かなり勉強したのであろう日本語を巧みに操り、観客とコミュニケーションを取っていた。お見事な日本語だった。
ただしかし暑すぎた。Newjeansのメンバーもかなりしんどそうで、本調子かどうかと言われれば明らかに否であろう。私自身も途中から暑さによる身の危険を感じて離脱をした。息苦しくて、胸に圧迫感があった。私はそこそこ前方で彼女たちを観ていたのだが、無理である。死ぬ。
マリンステージは人工芝である。芝を傷めないために、スポーツドリンクや塩タブレットなどは全て持ち込み不可。当日は35度近くの炎天下であった。そんな環境下でさえ、Newjeansほど世界的に人気が爆発しているアーティストがステージに立つこととなれば、人はその場に集う。人は密集し、環境は最悪そのもの。数多くの人間がマリンステージから明らかに辛そうな形相をしてリタイアしていった。
このままではサマソニでいつか死人が出ると思う。来年は塩タブレットくらいは許可してはいかがなものかと思う。
話がそれた。ステージから離れ、給水を行った後はスタンド席から彼女たちを観た。1階スタンディングは入場規制がかかっていた。
彼女たちはデビューからまだ一年ほどである。おそらくライブもそこまでこなせてもいないと思うので、まだまだ伸びしろがあるのではないだろうかとは思った。誰目線だよというツッコミが来そうだが許してほしい。
音源が本当に良いと私は思う。もっと彼女ら自らのカリスマ性に負けないくらい、会場全体を躍らせるくらい音楽で観せるライブを観たいと思った。
Shygirl
slowthaiがキャンセルとなり、ソニックマニアのみの出演のはずだったが代わりにShygirlがサマソニにも登場。私は彼女のことがかなり観たかったので正直かなり嬉しかった。
ライブ素晴らしかった。彼女の曲はうねるように鈍い低音を響かせたダンスビートでありながらもキャッチーで、Shygirlのパワフルさを存分に感じることができた。SONICステージは彼女の登場と共にダンスフロアへ早変わりした。それは反秩序的でありながらも彼女の前ではセーフスペース。人種や性別はそこには存在しないかのよう。音楽に身をゆだねることによる連帯感だけがそこにあった。バックで流れる映像も相まって、没入感溢れる圧巻のパフォーマンスであった。
とは言ったものの、Shygirlは女性へのエンパワーメント、クィアの文脈を孕んでいるアーティストである。演奏途中にも、「ここにいる全ての美しい女性たちへ」といった前口上から演奏を始めたシーンもあった。だからShygirlの音楽の方向性としては透明化されたクィアの人たち、そして抑圧され続けた女性たちである。
私は多少性愛について癖があるとはいえ、クィアであるとは言えないなと思っていて。そして私は男だから、そのような彼女の曲たちをどのように受け止めればいいんだろうか、などとその時考えたりした。
音楽の前では性別は関係なくとも、彼女の曲が好きである男は何をすればいいのだろうか。社会に対してどのようなアクションを起こせるのだろうか。私自身の勉強が足りないかもしれない。
[ALEXANDROS]
スピッツのライブの感想を見ると、ライブが音源のまますぎるなどと絶賛されているのを見たことはないだろうか。
それの対極、逆音源ままアーティストが[ALEXANDROS]である。
彼らのライブはちょくちょく観ている。ワンマンにも行ったことがある。そのたびに彼らのライブはアルバムの音源と全く違うなと絶対に思っている。
今回もそうだった。
[ALEXANDROS]の出しているアルバム、及び全て音源はライブの予習用ってことはご存知だろうか。
彼らはライブでアレンジがありすぎてアルバムの音源が全く役に立たないのである。音源上では洗練されていて主張をしない楽器隊は、ライブでは荒々しいロックサウンドを掻き鳴らし、その存在感を露わにする。
ドラムに至ってはキックの音が大きすぎてバックDJが低音を増幅した打ち込み音を鳴らしているのかと思ったほどでかい音が響いていた。
しかしながら、ボーカル川上洋平はどこまでも軽やかで、それでいて爽やかであった。どでかいステージが良く似合う。サマソニに似合う邦楽アーティストと言ったら[ALEXANDROS]が筆頭ではないかと私は思う。本日のトリ、BLURと同じステージで演奏できていることを嬉しそうにしていた。これを読んだ人はこれだけ覚えて帰ってほしい。
ドロスは生のライブに限る。
ここから友人と合流する。
HOLLY HUMBURSTONE
他ステージ、GABRIELSが観たかったので数曲だけ見た。
Twitter(現X)のフォロワーさんが激推ししていたので気になっていた。
ボーカルの声に伸びがあってキュートであった。テイラースウィフトの影響を受けているかのようなポップスさ加減を持ち合わせているが、その世界観は少しダークだ。歌声だけで会場を掌握できるかのような力強さもあり魅了された。最後まで観たい気持ちがやまやまだったが泣く泣く断念。
1月?にまた来ますと言っていたそうなのでその時に観れたら嬉しい。
GABRIELS
実はかなり楽しみにしていたGABRIELS。本日のベストアクトであった。
ヴォーカルであるジェイコブはクラシックなタキシードに身を包んで登場。スポットライトが当たっているかのように、彼の真正面からピンポイントに強く風が吹き、その黒いタキシードとマントをなびかせる。彼はまさしくDIVAであった。
すぐさま会場に耽美的で力強いファルセットを響かせ、会場の空気を瞬間に掌握する。
そして彼はまさしく表現者であった。彼の指先はファルセットのゆらぎと同期するかのように、彼の発声と同様に、繊細に震えていた。対照的に身体全体で演技をするかのようにステージ上で舞うアグレッシブさは私たちに高揚感を与えた。その佇まいや所作には一貫してソウルミュージックへのリスペクトがあって、観るものを魅了した。本当に素晴らしかった。
途中、ジェイコブがステージ上からしばし無言でこちらを眺め続けているシーンがあった。その表情は茫然としているかのように見えた。
私としては、GABRIELSは非常に楽しみにしていたステージではあったが、どの程度人が集まるのか未知数なところもあった。洋楽がヒットチャートにランクインしない国で、しかも洋楽の中でも彼らはソウルミュージシャンであるから。しかし結果的には良い意味で裏切られた。会場はかなり盛り上がっていた。ジェイコブの一挙手一投足に会場は沸き、その音楽を全身で受け止めていた。
彼ももしかしたら同じ気持ちだったのかもしれない。まさかここまで盛り上がるとは思わなかった、と。
絶対にまた来日してほしい。最高だった。
ところで、彼の所作というのも何かに基づいた行動だったりするのかなとかライブ中考えていた。
例えば、メタルバンドとかで良く見ると思うのだけど、ヴォーカルがシャウトをするときにお立ち台に片膝載せて身を畳みながらシャウトしているような写真を見たことないだろうか。あの姿勢には理由がある。シャウトするときって腹に相当な力を入れて発声しなければ綺麗なシャウトにはならない。
あの前傾姿勢は腹に力を込めるのに都合が良いのだ。発声方法として理にかなっている姿勢がたまたまあの形になり、象徴的な姿勢のひとつとして今に至る。
サックス奏者とかも表現として身体を使っている。伸びやかで、音程の動きが少ない時はゆったりと横に揺れ、サックスの音域、音色に合わせて身体の動きは大きくなる。あれもおそらく身体の使い方で息の量を調整していたり、力み具合をコントロールしているのだと思う。
ジェイコブの手の震えとかも、例えば音域をコントロールするのに手を動かすとしやすいとか、声の伸びをキープするのに都合が良いとか、そういう理由があるのかもしれない。技術に裏付けされた身体表現って美しいなと思った。
HONNE
初見。思った10倍くらいハッピーなバンドなのだなと思った。観客のシンガロングがマウンテンステージに響き渡り、多幸感あふれるフロアになっていた。FREE LOVEという曲を初めて聴いたがとても良かった。ステージ後ろのスクリーンに流れるゆるいキャラクターたちが繰り広げる映像たちとHONNEのステージとの相性はとても良く、その場にいた人全員が笑顔になれる空気感を作れるアーティストも稀だと思う。正直全然聴いたことなかったので、これを機に聴き始めてみたい。
ここで友人と別れる。また一人。
BLUR
一日目のトリ。BLUR。
数多く音楽を聴いてきたが、BLURは手付かずだった。ブリットポップが全然分からない。UKロックは好きなのだが、何度聴こうとチャレンジしてみても結局聴き続けることができなかった。
しかし生音、ライブには魔法がある。音源だと分からなかった質感、空気、情緒というものは確実にあって、そのライブをきっかけに聴くようになったバンドも私は数多くいる。BLURも、ブリットポップもその魔法にかけられて聴くようになるのではないかと思っていた。
しかしライブを終えてみればやはりブリットポップは全く分かりませんでした。ギターとかは本当にブリブリで異次元的にかっこいいなと思ったのだが、なんか心にグサッと刺さるような感覚があまりなかった。これ将来的に良さが分かるようになるのだろうか。その良さが分かったときにこの日に観たBLURを一生後悔する気がする。誰か良さを教えてください。ウーフーの曲は知っていた。
しかしながら歴史が長いバンド。彼らのバンドメンバーとのドラマについては多少知っている。過去に作った曲たちが、彼らの足跡になり、彼らを象徴する楽曲になってきていて。楽曲も歳を重ねて深みが出てきている。人間と同じだ。年齢を重ねることによる良い循環というものが生まれていると思う。BLURのような素敵な年齢の重ね方というものは私もしたいものだなとライブを観ていて心から思った。
2日目
ちなみに2日目も半分はひとりです。
物販
KENDRICK LAMARのマーチがどうしても欲しくて、早起きして物販チャレンジをした。会場には8時前には着いた。そして着いたと同時くらいにリストバンドの交換が始まった。私は2daysリストバンドを交換済みだったので列に並ばずに済んだ。リストバンド交換列はそれはもう長蛇の列で、並んでいるだけで熱中症になるのではないかと思えるくらいに途方もなかった。
その列を横目にゲートをくぐる。一目散に目指すはマリンスタジアムにある物販コーナー。列に並んだ時には前に50人ほどいただろうか。そしてプラチナチケットを持っている富裕層たちが多分20人、30人くらいいた。
このままいけばおそらく買えるであろうと思った。しかしながら、目の前で買おうと思っていたフーディはXL、Lともに売り切れ。TシャツはXXL、XLが売り切れ。早かった。目の前に並んでいた男2人組を恨む。なぜならその男どもがもたもたもたもたもたもたもたもたもたもたもたもたもたもたもた買い物していたせいで、そいつらが捌けるまでに他の列がそれぞれ4人ほど捌けていたから。ちゃんと買う品決めてから来いよタコって言いたい気持ちを抑えながら並び続け、私の番。TシャツのLは確保することができた。しかし、私の買ったものがおそらくラス1くらいで、本当にギリギリだった。物販が確か8時半くらいにスタートして、ここまでの所要時間は20分に満たない。
その後、某フリマサイトによりケンドリックやブラー、リアム、キッドラロイのマーチの転売が横行していたことを知る。
転売ヤーよりもダンゴムシの方が社会に貢献しているのではなかろうか。
社会の大多数から後ろ指を刺されながらも、のうのうと生きていられるずぶとさはゴキブリよりも生命力高い。それによって金儲けてるのも明らかに気に食わない。サマソニは公式で対策するべきだと思う。
そもそもケンドリックやリアムに関しては初日から物販を売っていたというのも良く分からない。それらのアーティストを観たい人が集っている2日目に全数出すのが筋ではないか。明らかにグッズの母数が少なかったし、そもそも転売が横行するというのは始まる前から分かりそうなものだが。
とにかく、サマソニは絶対に個数制限等を設けるべきだったと思う。
ケンドリックのTシャツだけでも買えてよかった。
転売ヤーはゴミ以下なのでそんなヤツらから転売されたグッズは買わないでください。
NOVA TWINS
NOVA TWINS。ギター1本ベース1本でここまで厚みがある音が出せるのか……と驚嘆した。かっこよすぎる。
特にあのベースかっこよすぎる。うねるように地を這い、会場にいる人の身体を次々と貫通する。ハードロックでありながらもその姿は凛々しく、そして美しかった。メロディとリフを担当しながらも観客を煽り続け、場を作り上げるあの姿は誰かのベースヒーローになりえるのではないかと思うほどに様になっていた。個人的に、音楽性だけではなく彼女たちみたいにファッションなども一貫してスタイルがあるアーティストがとても好きで。
本当にかっこいい。単独ライブ行きたかった。絶対また日本来てください。
ライブも非常に盛り上がっていて、ハードロックのライブでここまで盛り上がるものかと私は思った。次に続くももクロファン、モノノフたちが場を盛り上げてくれていたと気づいた。本当にありがとうございますという気持ちでいっぱいである。
w.o.d.
何気に初めて観るw.o.d.。初っ端にやった1994がフルで聴けなかったのが少し残念。
日本産グランジの新星w.o.d.。バンドとしてのクオリティの高さはさすがで、凶悪なベースライン、タイトなドラム、そしてメロディアスなギターで力を示していた。NIRVANAに代表されるグランジというジャンルで、ここまでパワーが溢れるバンドが日本から出ているのは素直にすごいと思う。3人すべての楽器の音が個性が強いのにも関わらずしっかりとまとまっている。アニメ「BLEACH」OPとしてのタイアップもするなど日本の音楽シーンに風穴を開け始めている。とにかくこの爆音は最高だと思う。サマソニに合う。
THE SNUTS
おそらく本日のダークホースであるTHE SNUTS。
アークティックモンキーズやリバティーンズに影響を受けたスコットランド出身のバンドで、洋楽好きからの期待値が高いからか会場にはパンパンに人が入っていてびっくりする。
彼らはまさしく上述した偉大なるアーティストの系譜であり、UKロックの遺伝子を存分に感じることができた。
ライブで化けているとでも言うのであろうか。パンパンのステージではシンガロングの連発であった。ポップな親しみやすさはあるものの、その姿勢は一貫してギターロックであり、UKロックは死んでいないことを声高に叫んでいるようである。私は濃厚なUKの風をライブ中に思った。
場の熱狂は凄まじく、これから始まる伝説の序章を見ているかのような気分になった。このようなバンドが周期的に出てくる音楽的な土壌ができている彼らの国が羨ましい。THE SNUTSが今年のサマソニベストアクトだと主張する人もおそらく多いのではないだろうか。とてもかっこよかった。
WILLOW
ウィル・スミスの娘。このアクトもとんでもなかった。
2000年生まれ。昨今の音楽的流行りは明らかにHIPHOPやR&Bでありながら、彼女が奏でる音楽はポップパンクである。
しかしその音楽は強烈で、ロックを愛する気持ちを存分に感じることができた。そもそも彼女がポップパンクをやっているのも、彼女の音楽的ルーツがロックにあったことに由来する。そして、ロック音楽の白人至上主義的な価値観への反骨精神である。
その音楽は非常にパワフルで、彼女自身が何よりもライブの時間を楽しんでいたように思えた。アヴリルラヴィーンのようなスター性も彷彿とさせる振る舞いはとてもかっこいい。バックにあるスクリーンに「この文字を見たら、とても大きな声を出してね」など、積極的に私たちとコミュニケーションを取ろうとするその姿勢にも、彼女の人柄が表れているようだった。
会場には黄色い声援が飛び交い、初来日とは思えないほど熱狂に包まれていた。兄のJADENもサプライズで登場し、兄妹で楽曲を演奏する。
ウィル・スミスの娘という肩書はそこにはなかった。ロック音楽への圧倒的なLOVEと、確かな音楽的実力でマウンテンステージを掌握している1人のアーティストがそこにはいた。
ブラックルーツの女性がロックを奏でていること、それによる偏見を完全に跳ね返したWILLOW。人種への偏見はかなり根深いが、彼女のステージを見たらそんな偏見に立ち向かうための勇気がもらえるようだった。ポップパンクの魂を感じた。
FLO
三人組のTHEが付くかのようなDIVA。英国初のR&Bグループ。
TLCやDestiny's Childの影響を濃厚に受けているかのような圧倒的なグルーヴの連続で、祝祭を挙げているかのように華やか。
歌唱力の高さはもちろん、それらが折り重なることにより生まれる色彩豊かな情景は非常に艶っぽく、間近で花を香っているかのように濃密であった。
客層も若い人が多く、それぞれが思い思いに身体を揺らしており、FLOの持つ力強さが観客全体に伝染していっているかのよう。
特に女性の割合が見たところ非常に高く、女性のエンパワーメントを主とする彼女たちのアイデンティティが見事に体現されていた。
その音楽性は彼女たちが育ってきた環境に由来しており、当事者として赤裸々に綴っている音楽には確かな説得力と温かみがある。圧巻のステージであった。
友人と合流する。
INHALER
サマソニラインナップ解禁の時からずっと楽しみにしていたINHALER。
その音楽はまさしくといった具合のUKロックで、どこか懐かしさを感じる。それはTHE SNUTSのように、脈々と続いてきた偉大なUKの遺伝子を彼らも受け継いでいるからであり、抗えない強大な背骨の存在を感じるサウンドになっている。
ヴォーカルはU2のヴォーカルの息子であるが、親の名の力には頼らない圧倒的な演奏力で会場を沸かす。Dublin In Ecstacy、My Honest faceは私が大好きな曲で、今回のサマソニでやってくれた。生で聴けて涙がこぼれそうだった。ポップ寄りのギターロックは非常に耳に馴染みやすく、キャッチーなリフは本当に気持ちがいい。しかしロック然としたギターの美しいメロディは健在で、対照的にドラムはパキパキとした硬派な音を奏でている。ヴォーカルの声は色気があり唯一無二。
一度サマソニで来日予定だったが、キャンセルになってしまい、今年で実に3年ぶりの来日だった。新しいアルバムもリリースしたばかり。私は彼らのことを初見であったが、確かなスケールのデカさはロックスターさながらだなと思った。革ジャンをタイトに着こなした彼らからはロックへの愛を感じた。
友人にすっごく楽しそうにしてたねって言われて気恥ずかしかった。私の大好きなバンドだ。
次は絶対に単独で来日してほしい。来てくれてありがとう。
LIAM GALLAGHER
リアムはBLURと同じでブリットポップの代表格であろうか。
私は初見である。
やっぱりブリットポップは難しい。分からない。
リアムがステージに出る前からリアムコールが会場から巻き起こり、リアムのカリスマ性の高さがうかがえた。加えてライブでは大合唱。ステージ後ろのスクリーンに映し出される観客たちの表情は本当に良い表情ばかりで、数え切れないほどの人間の青春時代を彩ってきた人物なのだなと実感する。
私はOASISについて思い入れが無いので、正直そういう人たちが羨ましい。OASISなんて10年、20年単位で好きだって人もたくさんいるだろうし。
しかしながらWonderwallだとか、Stand By Meとか、そこまでしっかり聴いたことがないにも関わらずほぼ全て歌えるくらいにメロディを知っている曲があるバンドも稀だと思う。私が聴いたつもりはないだけで、私の音楽観にも彼らの音楽は実はしっかりと根付いていたのかもしれない。
彼らのことが好きな人間がみせる表情、合唱はとても美しく力強かった。音楽史に残るひとつの頂点を観れたことを嬉しく思う。
ブリットポップやはりいつか理解できるといいな。
KENDRICK LAMAR
大本命KENDRICK LAMAR。
私の人生はおそらく、KENDRICK LAMARを観る前と観た後に分けられる。そのくらい私の中の感覚網とでも言うのだろうか、価値観が大きく揺さぶられ、拡張されたかのような、圧倒的な経験をした。
HIPHOPのパワーはものすごかった。始まる前から熱気はすさまじく、ケンドリックをまだかまだかと待ちわびる人であふれていた。
そして会場BGMが途絶え、The Heart 5 Introが流れ始める。会場のどよめきはマックスを迎え、ケンドリックが姿を見せるや否やの悲鳴にも似た歓声。続くN95では、冒頭観客の大合唱で幕を開ける。そこからクールに、至極淡々とラップを繰り出すケンドリックはものを言わせぬ雰囲気があった。
合唱が始まったというのは日本ではすごいことで、世界的に見てライブ中に静かだと言われているのが日本人。さらには英語が話せないことに世界で共通認識がある日本人。その日本人が英語歌詞を、しかもHIPHOPの一節を合唱しているのである。さらに場にいて実感したのは、歌詞が分からない人たちも歌おうと努力している姿勢が見えたことである。
ケンドリックはシンガロング、手を挙げることを促すことはあっても至って冷静。バックにはケンドリックの幼少期を模倣し、労働を想起するかのようなデニムのサロンを纏ったダンサーたち。
そのダンサーたちと共に、どでかい会場ながらも身体の芯にまで響くパキパキに研がれた音響にケンドリックのラップが紡がれ続けた。
彼らはHIPHOPという音楽をやりながらもケンドリックの内面を身体的に表現し、そして原体験を基にケンドリックが投げかける社会への批評性を纏った集団であり続けた。それはコンテンポラリーアートのようであった。
ケンドリックに関しての記事を漁っていたら、彼はNワードをぼかしてラップをしていたようである。ここでいうNワードというのはその人が持っている人種や職業など、特定の属性に関することだ。
確かに、リリックにあるからと全部を発音しなければならないわけでもなく、終始アーティストとして、聴く側に配慮があった彼の姿勢には大変好感が持てた。
LOVE、Alright、そしてSaviorで締めくくるセトリの構成も今になって思えば最高だったなと思う。リリック読んでみてくれ。最高のリリックだよ。
ケンドリックがヘッドライナーになったっていうサマソニの報せが届いたとき、私はまだHIPHOPという音楽にハマることができていなくて。
本格的に聴き始めたの6月とかじゃなかったかな。STUTSの武道館公演行ったとき、日本を代表するHIPHOPアーティストがそろい踏みしていて、そりゃもう食らってしまって。そのあたりから本格的にいろいろ漁っていたのだけれど、タイミングが良かった。
サマソニからもう一週間以上経っているのだけれど、あの余韻を私はまだぶら下げている気がする。ケンドリック、また日本来ると言っていた。
その時は全部シンガロングできるくらい暗記していくつもり。絶対に来てほしい。Backseat Freestyleとかはもう覚えました。私はやる気です。
ケンドリックを観た以降、US HIPHOPばかり漁っています。なんか本当にある種の人生の転換期だった気がする。本当にいいもの観た。感謝しかない。
まとめ
今年暑かった。Newjeansのところでも書いたけれど、そろそろ本気で死人が出るレベルで暑い。対策求む。
物販ももう少し考えてほしい。転売対策してくれればそれでいい。
あと待ち列。今回はジャニーズWESTだったりNewjeansだったりBABYMETALだったり、単発で破壊力があるアーティストがたくさんいた。
徹夜の入場待ち列が発生しており、さすがにまずいのではないかと思う。
それだけで体力の低下により熱中症は発生しやすくなるし、フェスのマナー的な意味でも好ましくない。対策をするべきだと思う。
他にも改善点はたくさんあると思うが、運営が一番わかっていると思うので、少しずつでも改善していってほしいなと思う。
しかしながら、私はサマソニ好きだ。
といってもまだ去年と今年の二回目の参加ではあるが。
私が行く唯一の夏フェスである。(いつかフジロックは行きたい)
いい意味でミーハーなアーティストが揃っており、各国でブレイクを始めているアーティストを一気にたくさん観れるので、音楽好きとしては非常に楽しい。
友人と合流した云々を書いてみたが友人云々の話がほとんど出てこなかったことに今気づいた。
私は基本ひとりで行動する。ライブとかもひとりでチケット取る事が多く、ひとりには慣れてあるつもりであるが、それでも誰かと来ると楽しいなと思う。感想の共有ができるという1点のみでもありがたい。最高だったね〜という一言だけでも楽しかった。途中合流してくれた友人には感謝したい。ありがとう。
来年のヘッドライナーはBLACKPINKとかBillie Eilishとかどうでしょうか。女性アーティストのヘッドライナー登用はどんどん後に続くべきですよ。K-POPが隆盛を極める昨今。BLACKPINKがサマソニの最後を飾るとかもストーリーとして良いと思うんですよね。コーチェラでヘッドライナー飾ったし。
他にも全然日本来てくれないMUSEとか。HIPHOPの文脈でKanye WestとかEMINEMでも最高です。
とにかく、ラインナップには期待していて。そして来年はもっといいフェスができることをを心より祈っている。
私としては今年も本当に楽しいフェスだった。
ありがとうサマソニ。
また来年の夏に会いましょう。