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10年前、理不尽に父にキレて泣いたことがある

今朝、珍しく父が夢に出てきたなあと思ったら、今日は父の日だった。普段めったに夢で顔を見せないくせに、たまにこういうアピールをする。だから今日は、直接父の日のお祝いをできない代わりに、父とのエピソードを書きます。


あれは今から10年ほど前だと思う。当時、短大1年生だったわたしは、毎日のように実家のパソコンで音楽情報をチェックしたり、当時SNSツールの主流であったmixi(ミクシィ)で友人たちとコミュニケーションを図ったりしていた。

昔は3人姉妹みんなでパソコンを取りあったりしたものだが、その頃には姉たちは実家を出ていたので、パソコンは日ごろわたしだけが気ままに遊ぶオモチャとなっていた。

とはいえ、わたしはパソコンやその周辺機器に強いわけではなかった。自分が問題なく使える範囲でしかそれらの知識を持っておらず、ときどきパソコンの挙動が遅くなると、父がパソコンの中を”掃除”して軽くしていた。(今でも何をやっていたのかよく分からないけど、不要なデータを消したり、バージョンをアップデートしたりしていたのかも…)


そんな中、いよいよパソコンの寿命が近づいてきた、という事態になった。パソコンの起動にも、データを開くにも、めちゃくちゃ時間がかかり、使い物にならなくなってしまうのも、時間の問題と思われた。

そこで父がわたしに言った。
「メーコ、パソコンが動いているうちに、必要なデータを移したほうが良いぞ」と。

当時のわたしは、「ウン、分かった」と生返事をしたに違いない。だって、データの移し方が全然分からないからだ。いや、”外付けハードディスクを使えば良いんだよ”と、父はヒントくらいくれたかもしれない。それでも、わたしはやっぱりよく分からないし、パソコン重くて嫌だな~と思いながら、何もしなかった。

それからというもの、父はわたしの顔を見ると、決まって、「メーコ、パソコンが動いているうちに、必要なデータを移したほうが良いぞ」と言うようになった。

当時父は64歳と定年をとうに過ぎていたが、会社の厚意と本人の希望から、サラリーマンとして会社勤めを続けていた。そして仕事で使うからなのか、パソコンのこともわたしよりは詳しかった。だから、”パソコンが急に使えなくなることもあるんだぞ、だから今のうちにどうにかしなさい”と警告をくれていたのだ。

でも、わたしは、何もやらなかった。
そして、何十回目の父の「メーコ、パソコンが動いているうちに、必要なデータを移したほうが良いぞ」がとうとう嫌になり、しまいには母に泣きついたのである。

しかも”泣きついた”は比喩表現ではなく、実際に「泣いた」のだ。
「お父さんが、パソコンのデータ移せ、移せってしつこい!でも、やり方が全然わからない!!」…と。


――今思うと、当然ながら父はまったく悪くないし、なぜあんなことで泣いたのかよく分からない。3人姉妹の末っ子として、どうしようもなくワガママに育ってしまった代表的なエピソードと言っても過言ではないだろう。

結局、そのあと父が外付けハードディスクを買ってきてくれて、一人でデータを移してくれた。そして、わたしにもデータの移し方をレクチャーしてくれた。そのときは、泣いたり喚いたりせず、素直に教わったと思う。

そんな父が買ってきてくれたハードディスクを、つい最近、10年ぶりに使うことになった。


猛暑のような5月のある日。わたしは気温が上がり続ける自室での作業に耐え兼ね、扇風機を引っ張り出した。いくらか過ごしやすい環境となり、仕事を続けようとパソコンに向かった瞬間、「プツンッ」と嫌な音を立てて、急に画面がブラックアウトした。それから、何度パソコンを起動しても、ものの数分でパソコンの電源が急に落ちてしまう事象が続く。どうやら、急激な暑さでパソコンが参ってしまったようなのだ。

これはまずいと思い、完全にパソコンがダウンしてしまう前に、必要なデータを避難させることにした。そこで、外付けハードディスクの存在を思い出したのである。

ハードディスクにも寿命があり、ある程度時間が経ってしまうと使えない場合もあるそうなのだが、今回は大丈夫だった。わたしは気温が下がってきた夕方頃になると、祈るような気持ちでもう一度パソコンを起動し、せっせとデータを移し始めた。幸い、また突然電源が落ちるようなことはなく、大事なデータを移すことに成功した。(しかし、数日間は不穏な動作が続いたため、当分はもう一台のノートパソコンで作業をする羽目になった)

そんなこんなで、なんと10年ぶりに、あの”因縁のハードディスク”をもう一度使う機会が訪れたのだった。
もし今日、父の顔を見て話せたのなら、ぜひあのときのことを謝りたいし、”今では一人でデータを移せるまでに成長したよ!”と言いたいものだけど、今回はこのnoteで謝らせてもらいたい。


<お父さんへ>

お父さん、あのとき、理不尽に怒って泣いてごめん。そして、この外付けハードディスクを買ってきてくれて、ありがとう。

なぜか、データを移してから数日経ったら、パソコンの調子が元通りになったので、今では問題なく仕事ができています。

本当になんであのとき泣いたのか分からない。きっとお父さんも、当時はそういう気持ちだったでしょう。

あれから10年経ち、わたしは元気でやってます。パソコンのことも、少しだけ分かるようになりました。

またどうぞ、夢に出てきてね。それではまた何十年後かに、会えることを楽しみに――。
父の日おめでとう!

<末娘 メーコより>


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