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新感覚の恋愛映画~わたし達はおとな

編集部のエイミーです。
「映画館で見る映画の良さを多くの人に伝えたい」
そんな思いで映画と映画館愛を語ります。
 
映画「わたし達はおとな」(加藤拓也監督/109分)を見ました。1993年生まれの新進気鋭の加藤監督のオリジナル脚本によるデビュー作です。

鑑賞したのは広島の町中にある映画館「サロンシネマ」。光沢のある青色の椅子は、大きめのつくりなので、ゆったり座れます。

座り心地の良い椅子

大学生の優実(木竜麻生)は、演劇サークルに所属する恋人の直哉(藤原季節)と一緒に暮らしています。ある日、自分が妊娠していることに気付き、直哉に妊娠したことと、ある事実を告白します。現実を受け入れようと2人は考え、もがき、そして、すれ違っていきます。
本作は2人の生活をこっそりのぞき見しているようなアングルを多用することで、見る側にリアリティーのある日常を突きつけます。17歳の時、ラジオ・TVの構成作家を始めた加藤監督。翌年にはイタリアへ渡り、映像演出と演劇について学びました。NHKのドラマ「きれいのくに」(2021年)では市川森一脚本賞を20代で初受賞。そんな若き才能あふれる監督が、今までにない新感覚の不思議な恋愛映画を作り上げました。
 
「新しい映画を見てしまった」と軽い興奮を覚えました。主演の2人の何気ない日常会話を、障害物である植物や柱をよけず画面に映すことで、観客はその場に一緒にいるような、隠れてのぞいているような感覚に陥ります。過去と現在が目まぐるしく交差する手法は、少し分かりにくくはありますが、画面の大きさを微妙に変えて提示するという実験的な手法を用いています。大学生の優実は信頼できる友達もいて、性のことなど何でも明るく話をします。一方、家族のことや恋人とのことなど根幹に関わる重要なことは話すことができません。恋人同士の会話やけんかは、ささいなことから大きなことへ発展する段階を長回しでじっくりとカメラがとらえます。このように、全編を通して、とことんリアリティーを追求することで、現代の若者の恋愛に対する考え方や楽しさ、切なさ、孤独感などをどの世代の観客にもすんなりと届けることができます。
「まだまだ映画にできることはある!」と無限の可能性を若き監督に教えてもらいました。
(編集部・エイミー)

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