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祖母姫、ロンドンへ行く/椹野道流
椹野道流さんの初エッセイ
「祖母姫、ロンドンへ行く」を拝読しました📖´-
(2024,12,7 読了)
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他のSNSでは先にチラッとご紹介し、その際にも書きましたがコトリノ・古書店の店主さんがおすすめしてくださった一冊です。
椹野さんは法医学専門の医師で現在は専門学校の講師をしている傍らで作家活動もなされている方です。ラノベやミステリー小説を執筆されていてお名前は薄らと存じ上げておりましたが、私にとっては今回が初読の作家さん。
本書の装丁が、前から気になっていたちぎり絵作家の木村セツさんというのも購入の決め手になりました。
タイトルからなんとなく旅エッセイなのはわかります。旅エッセイは読者も一緒にどこかへ連れて行ってくれているような感覚になりますよね。そんな風に思えるようになったのはつい最近のことですが。
さて、今回はロンドン!どんな旅になるのかワクワクしながら読み始めました。
まだ著者が小娘だった頃のお話。
お正月に親戚一同が集まる場で、著者がイギリスに留学経験があると話したところ80歳を越えた祖母が
「一度でいいからロンドンへ行きたい。お姫様のような旅をしたい」
と夢を語りだします。
それを聞いた叔父たち(祖母の息子たち)が、その夢を叶えてあげるために資金を用意してくれ、お供として著者も一緒に行くことになりました。
高齢で少し認知も始まりはじめた気の強い祖母を安全に、そしてお姫様として満足のいく旅になるようにと著者が奮闘する様子、旅立ってから一流のサービスを目の当たりにする様子などが面白く描かれています。
コトリノ古書店店主さんによると、この祖母姫が私の母にどことなく似てるとのことでした。性格はどちらかというと母とは真逆の祖母姫様は自信に満ちていつでも強気。
でも美しいものや素晴らしいもの、お洒落が好きなところはよく似てます。
まあ、しかし祖母姫様は徹底してこの旅を楽しもうとするわけです。それによって著者はかなり振り回されるのですが、祖母姫様の年齢を考えれば今この時をしっかり楽しんで欲しいと思うので自由奔放な振る舞いも嫌な感じはしませんでした。振り回される張本人は大変だったでしょうが。
そんな自由奔放な祖母姫様ですが、時折語る言葉がズンと胸に沁みるのです。
言葉は厳しいのだけれど自分の人生としっかり向き合ってきた方の言葉は深くて。
「謙虚と卑下は違うものなの。自信がないから、自分のことをつまらないものみたいに言って、相手に見くびってもらって楽をしようとするのはやめなさい。それは卑下。とてもみっともないものなのよ」
著者と一緒に読者の私もグサグサグサグサ。
人生の折り返し地点間際の私でもみっともないことやってしまっているなって。
謙虚と卑下は似て非なるもの。そこを間違えてはいけないと反省するばかり。
ロンドンの旅は始まりから一流に触れるものばかりで、一流のサービスとはこういうものだという学びにもなります。
自分がそんな贅沢な旅をすることはないかもしれないけれど、本物を知るということはやはり大切だとも思いますし、自身もそういう心持ちを少しでも身につけてお仕事に励みたいとも思いました。私はただいま無職ですが、いつかのときのために。
この本物を知るということに関しては、また別の本で別の解釈もあったので、それはその本の感想のときにまた書きたいと思います。
本書を拝読して、私ももう少し両親との時間を大切に、そして今出来ることをきちんとやっていきたいと強く思いました。あまり考えないようにしていますが、時間は制限されたものだとも。
そして特に本書で共感したのは、祖母姫様と旅をして少し成長した著者の言葉でした。
「バタバタしていると、一緒にいない人のことが頭から抜け落ちるのは当たり前でしょ。だけど、何かあったとき……つらいときとか、逆に嬉しいときとか。そのことを話したいと思ったとき、お互いの顔が浮かぶような。根っこで繋がってて、特に何もしなくたって支え合っているような。さっき彼に会ってずっとそんな関係でいられる気がしました」
ホテルの客室係の計らいによって留学していた際にルームシェアしていたボーイフレンドと著者が再会でき、その後客室係に語った言葉です。
私、こんな風な関係になりたい人がいます。
今は連絡すらつかなくなってしまいましたが、今でも大切に思う気持ちは変わりません。いつかまた再会できることを願いつつ、その方の幸せを祈っておくとします。
帯文に同調するのはなんだかしゃくでもありますが、底抜けにおもしろくて、やがてホロリとしてしまうまさにそのような一冊でした。
✨special thanks✨
コトリノ・古書店店主さん。
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