日記 福砂屋の手作りもなかがうまい
ご近所の仲良くしている方がお正月に長崎に帰省していて、お土産に福砂屋の「手作りもなか」を頂いた。
このご近所さんとは、たまたまお子さんがうちの8歳長女と同級生で、たまたま転校してきたタイミングも一緒で、たまたま家も近所(というか裏)で、そしてたまたま私たち夫婦と同郷の長崎出身といろいろ縁があり仲良くさせてもらっている関係だ。わが家から正月帰省のお土産で五島名産のかんころ餅を渡しに行ったところ、逆にこの福砂屋の手作りもなかを頂いたのだった。
お互い長崎のお土産を渡し合うというのもややこしいなと思いつつ、しかし大切にしなくてはいけないのがご近所付き合いというものである。引越し初日に駐車に失敗して隣の家のブロック塀を破壊するなど言語道断。そんなことは決してやってはいけないのである。みんな私の屍を越えていくといいよ。
私がお隣りのブロック塀を破壊した話はさておき、福砂屋の手作りもなかの話をしたい。福砂屋といえば有名なのはやっぱりカステラだろう。長崎では福砂屋と文明堂と松翁軒のカステラ御三家が初代ポケモンでいうヒトカゲ、ゼニガメ、フシギダネのごとく人気を争っているわけで、その中でも福砂屋は魅力がカステラだけにとどまらないところが他とは違うと私は思っている。
福砂屋のお店に入ると、ショーケースの真ん中にどーんと並ぶカステラの山。5号とか10号とかいろいろなサイズが1本単位で売られており、その隣にはカステラキューブという小さくてカラフルな1人用サイズの箱もある。積み上げるとツムツムみたいでかわいい。そしてそのさらに奥、お店の中で一番日の当たらない場所に手作りもなかがひっそりと売られているのである。
なぜ福砂屋はもなかを作るのだろう。観光客がたくさん来るお店なんだからせめてもっと長崎にちなんだ商品を作ればいいのに、と思う。もなかってカステラのようにポルトガルから長崎へ伝わった由緒正しい歴史のあるお菓子?ノン。じゃあ長崎産の素材にこだわって作っている?ノン。おい長崎になんら関わりがないじゃないか。しかも福砂屋のコウモリのマークが箱やもなかの皮についていて絶妙にこわい。ドラキュラが創業したんか。
しかし、私はこれにひとつの説を唱えている。あえてちょっと初見では買いにくい商品を作ることで、真のじげもん(長崎弁で地元民)かどうかを見極めているのではなかろうか。福砂屋ではカステラの方が圧倒的に売れているだろうが、地元民がもらって本気で喜ぶ地元のお菓子はなにかといえば、実はこの手作りもなかなのだ(私調べ)。
カステラという王道に釣られることなく、手作りもなかを選ぶ者こそがプロのじげもん。じげもんマスターになるためのじげもんリーグ会場への入口はここにあるのでないかと私は睨んでいる。それが福砂屋の手作りもな」
妻「いいからはやく食べるよ」
はい食べます。箱を開けます。
箱の中にはもなかの皮と餡子が別々に入っている。「手作りもなか」というのは職人さんが手作りしたもなかという意味ではなく、自分で手作りするもなかのことなのである。
付属のへらで皮のくぼみに餡子を塗りたくっていく。残量を気にして贅沢に使えず、最後に餡子を大量に余すのが手作りもなかあるあるである。じげもんリーグ試験の過去問には一個あたりの適切な餡子量を計算する問題もでるのでよく練習しておくように。
妻「いいから食べるよ」
はい食べます。
手作りの楽しさもありつつ、作りたては餡子で皮がしっとりとしないので皮がふわっふわのサックサクで、これがめちゃくちゃにうまい。私の味覚が雑で「うまい」しか説明できないので、誰か食べてちゃんとしたレポートをしてほしい。カステラに慣れた人や和菓子好きはぜひ試してみてはいかがでしょうか。ブロック塀を壊した隣人へのお詫び菓子としても最適である。