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日記 長崎ランタン訪問記
いつもよりだいぶ長めです(約3200字)。最後まで読む覚悟はあるか。
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急な思いつきで長崎に行ってきた。少し前から6歳次女が「眼鏡橋のハートの石を見てみたい」と言っていて、ならば眼鏡橋は今絶賛開催中の長崎ランタンフェスティバルの会場のひとつだし、ランタンを見るついでに行っちゃえば一石二鳥じゃね?と天才的なひらめきをして行くことにしたのだった。
もろもろの用事を済ませ、福岡の自宅を出発したのが土曜日の15時半。車でだいたい2時間で義理実家に着くので、そこから両親と合流して一緒にランタンを見に行き、そのまま義理実家に泊まって翌日にゆっくり帰ればいい。さくっと帰省ができる距離に住んでいるとこういうことができるから幸せだ。
長崎へ向けて高速道路を走る。外は雨がけっこう降っていたけど、夕方頃にはやむでしょうという予報だった。まあやまなくても雨のランタンというのもそれはそれで風情があってオツなものだ。『長崎は今日も雨だった』って曲があってだね、とか車内でこどもたちに話しながら、あなたひとりにぃ〜かけぇたぁ恋〜なんてのんきに歌っていた。そう。まだこの時は……。
最初にわずかな異変を感じたのは、途中でトイレ休憩に寄った川登サービスエリアだった。なんとなく、いつもよりハンドルとブレーキの効きがわずかに悪いような気がした。でも、雨だったし、そんなものかなあなんて思った。今思えばこの違和感を無視した自分に昇竜拳と波動拳と竜巻旋風脚をしてやりたくなる。オイオイ三毛田さんよォ。なんでここでそのまま行くんだよォ!
そして事件は起こる。大村インターを過ぎたあたりで、バスン!と音がしたかと思いきや、車が急にガックンガックンとなった。ハ、ハンドルがめちゃくちゃ重い!なんだなんだなんだなんだ。左前の方から煙がでているのが見える。まずい!とりあえず車を路肩に寄せよ!路肩に寄せよ!
なんとか路肩に停めて、助手席の妻がおそるおそる車から降りて様子を見ると、左前のタイヤが完全にぺちゃんこになっていた。高速道路でタイヤがパンク。状況を理解すると緊張してきた。バクバクと心臓の音が聞こえる。僕の心臓のBPMは190になったぞってあいみょんの歌詞があったな。いやいや余計なことを考えるな自分。ええと、こういう時なにすりゃいいんだっけ。そうだ。ロードサービスだ。
とりあえずダッシュボードから書類を出して調べ、保険会社のロードサービスを呼ぶ。すると不運にも、今込み合っていて向かうのに相当時間がかかるとのこと。そんな。なんのための保険なんだ……。次にJAFを調べて電話する。会員ではないので5万くらいかかりますと言われるけど、もうあなたしか助けてくれる人はいないんですお願いします!とすがる気持ちでレスキューを依頼した。
「万一衝突されると危険なので車の外に出て待っていてください」とのこと。JAFの言葉に従い、車から少しだけ離れて家族全員で路肩の草むらに避難して待つ。私があたふたしている間に、妻がテキパキと持ってきたマフラーやカイロでできる防寒をして、ひざ掛けをこどもたちの頭からかける。雨が降っているけど、目の前をすごいスピードで走り抜ける車たちの風圧がすごいので傘はさせない。風が冷たい。寒い。
緊急事態であることを感じてこどもたちが怖がっていた。そこでも妻が明るく状況を説明し、「大丈夫だからね」と言ってスマホでアンパンマンの映画を見せていた。ああ、アンパンマン。ここにも助けに来てほしい。JAFでも60分くらいかかるって言うんだ。この寒い中で雨に濡れて60分待つのか私たちは。
だんだんと空が暗くなってきた。妻の明るい振る舞いのおかげでだんだんこどもたちも落ち着いてきて、しりとりをして時間をつぶしていた。長女が「こ」から始まる言葉を探して「交通事故!」と言うと、続いて次女が「交通安全」と言って「ん」がついたのでしりとりが終わった。タイムリーなワードすぎる。
やがて、予定より早くJAFが来て、車と我々を近くのイエローハットまで送り届けてくれた。作業着では暑いだろうに車内に強く暖房を効かせてくれていて、その優しさが沁みた。優しさの神として拝みたい。営業時間ギリギリだったので車はそのまま預かって、修理は明日になるという。義理父に迎えに来てもらい、なんとか義理実家に到着したのが20時。自宅を出発して4時間半もかかってしまった。な、長かった……。
それから休憩もそこそこに、義理両親と一緒にバスに乗って長崎の街へくりだした。本当はもうヘロヘロでそんな気分ではなかったけど、私たちの目的はここからなんだ。このままただパンクして5万払って帰る人になるわけにもいかぬ。お腹が空いていたので、まずはガストに入り夕食とした。
が、次女がハンバーグを一口食べたきり動かない。どうしたの?と聞くと「おなかいたい」と言う。まあ、あれだけいろいろあったし無理もない。しばらくさすってトントンとしていると、やがて次女は義理母の膝の上で眠ってしまった。うん。小さい体でよく頑張ってくれた。ハートの石は諦めよう。
大人が順番に次女を抱っこして街を歩く。ランタンフェスティバルは長崎新地中華街を中心とする街一体にランタンが灯されている。元々は華僑の方々が中国の旧正月のお祝いをしていたものが始まりで、それを長崎市の観光名物にしようとその規模を大きくしているものなので飾りも中国色が強い。
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やっぱりきれいだなあと歩いていると、隣から妻が教えてくれた。毎年「皇帝パレード」というイベントがあるのだけど、去年の皇帝・皇后役に福山雅治と仲里依紗を呼んでしまったので今年はちょっと予算がなくてランタンの数が少ないとの噂らしい。ちょっと去年使い過ぎちゃった、てへ。みたいなところが長崎市のかわいいところである。
浜の町アーケード、長崎新地中華街を抜けて、湊公園へ行く。
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湊公園にはいろいろな味わい深いオブジェがある。
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下の写真は関帝(三国志の関羽)の祭壇。商売繁盛の神様として奉られている。刺激強めなので注意。
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ランタンを見ていて思い出す。そういえば、大学生の時にバイクで事故したのがランタンフェスティバルの頃だったなあ。入院中にテストが終わっていて、それで私の留年が決まって、ランタンの下を不貞腐れて歩いたんだっけ。ランタンには事故の思い出しかないのはなんなんだ。
やがて次女も祭りの賑わいに目を覚まし、少し元気になっていた。
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タクシーで帰ると22時半。疲れた。寝る。
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翌日、ハートの石を見るために昨日行けなかった眼鏡橋に行く。ここもランタンの会場であるけど、明るい時間の方が石も探しやすいし、まあ結果良かったような気がする。
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それほど大きくもなくそれほど特殊な感じもないこの橋がなんで観光名所なのかというと、1634年にできた日本最初の唐風石橋だからだそう。東京の日本橋と岩国の錦帯橋とあわせて日本三橋と言われている。ちょっとトップ3に入れられると荷が重くないか。地元民からすると「ただの橋じゃん」と思わなくもない。そのくらい深く生活に根付いている風景でもある。
さてここで問題です。ハートの石はどこにあるでしょうか。
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川の水が引いて近づくことができた。
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ハートの石に触ることができたので旅の目的を達成した。命のありがたさ、JAFのありがたさ、運転の怖さを思い知る旅であった。
義理父にイエローハットまで送り届けてもらい、タイヤ交換した車でまた高速道路を走って帰る。パンクのトラウマで手汗が止まらず、100キロを超えると涙目になる私に、助手席の妻がZARDの『負けないで』とかウルフルズの『笑えれば』『ガッツだぜ』とかを流してくれた。持つべきは仕事のできる妻である。