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昔話を始めると胸が痛くて仕方が無いから、この口もこの心も全部全部取ってしまえ。
旅立っていったあの少女は、もう2度と帰ってくることは無かった。
大人という門を幼心で開けてしまったから。
遠くで誰かが叫ぶ声がする。
ああ。あの子も私と同じ。
愛されたい。
貴方から伝わる熱がどこかもどかしいから、それを確かめるように目をつぶる。
私が目を開けたら、もう貴方はいないのかな。
貴方が笑っていると不安になる。
笑顔の仮面を被って、心で泣いているんじゃないかって。
先生?先生は1度でも私の事を好きだった?
いつも見る背中が、今夜だけは逞しく見えて私の心を惑わせるの。
本当の先生を知っているのは私だけだって信じていたのは間違いだったって、なぜ言ってくれなかったの?
言ってくれていたら、貴方のことこれ程好きにならなかったのよ。
好きになってはいけない人を好きになってしまった。そんなこと分かっていた。
だけど、貴方が私の口から『好き』と出そうになるたびに悲しい顔をするから、その度に、その言葉を心の奥底に黙って沈めるの。
先生。先生。先生。
私が先生に届かなかった理由はどこにあるのでしょうか。
先生の前ではいい生徒を演じたかったのに。
貴方の前になると、私の口からは本心しか出てこないの。
先生。
なんでこんなにも先生に呼ばれる私の名前は、暖かく感じるんでしょうか。
『振り向かないで』と言われて貴方がこっそり、私の3歩後ろで泣いていたのを気づいていたのに。
振り向いて3歩後ろの君を抱きしめる事さえできなかった私には、もう貴方に会う資格なんてないのです。
愛されたいと思うほど、心がチクリと痛む。
誰かに抱きしめられたいとと思うほど、涙が溢れる。
そうなったのは、何もかも私のせい。
そうしたのは、何もかも貴方のせい。