忘れられない人
誰にも[忘れられない人]というのはいる。
過去の恋人や、恩師の先生。
どんなに長い時間経ったとしても、忘れることができない人物。
私は未だにあの人を忘れられずにいる。
あの人の声。
あの人の匂い。
あの人の手の感覚。
あの人との記憶。
あの人と別れてからもう1年経ったというのに、未だに感覚が残っている。
瞼を閉じるとあの人とキスをした思い出が濃く映し出される。
その度に下半身が疼くのは、私が単純だからだろうか。
あの人が好きだと言った卵焼き。
それまで料理もなにもしてなかった私は、卵焼きさえ難しく感じた。
けれど、私はあの人の笑顔が見たくて頑張って作ってみた。
その時に作った卵焼きは、涙が出るほどしょっぱくて。
一言で言えばまずくて。
けれど、あの人はそれを『美味しい』と言って全て食べてくれた。
それが嬉しくて、もっと美味しいのを作ろうと思った。
結局、練習した結果をあの人にあげることはなかったけれど、それを思い出して今日その卵焼きを作ってみた。
やはり、私には料理は向いていないのかな。
あの時と同じように不恰好で、すこししょっぱかった。
けれど、今日食べた卵焼きはあの時のよりもおいしかった。
すこしは成長したのだろうか。