見出し画像

何者かになりたかった、何者にもなれなかった

「何か」になりたかった。
パティシエ、メイクアップアーティスト、画家。
自分でなければできない仕事がしたかった。
社会の歯車になる思考なんてなかった。
第一志望の高校に落ちた。第二志望の高校でも上の方にいられるわけでもなく、下から数えた方が早い順位にいる。
運動も、得意だった音楽も絵も勉強も、自分以上にできる人なんて死ぬほどいた。それでいて容姿が自分より整っていて、性格が良い人なんて腐るほどいた。

私には何もなかったんだ。
ただの、何も得意じゃない、普通の顔で、普通のスタイルで、普通に性格が悪いだけの怠惰で馬鹿な女だった。
何も頑張れなかった。何も頑張ろうとしなかった。尊大な自尊心と臆病な自尊心とは、まさにこのことである。
私は李徴みたいに虎になってしまうのかもしれない。
だから彼氏ができないんだ。告白の一つもされないんだよ。

中学時代の私は無駄にプライドが高かった。
賢くなければいけなかった。なんでも万能にこなせる人じゃないといけなかった。だってみんな、そんな私しか知らないから。
そうじゃない私には価値がないと思っていたから。

高校に入って、仲のいい友達の1人しか中学の友達がいない環境になった。
賢くなくても、なんでも万能にできなくても、ドジをやらかしても、馬鹿だねぇって笑ってくれる人がいた。それも、大勢いた。
私はその人たちに甘えてしまっていた。
居心地が良くて生ぬるい環境は、私の怠惰を太らせるのに十分だった。
何者にもなれないのに、何もできないのに。今だけあればいいと思ってしまった。幸せなことだ。
私は何も努力ができなくなってしまった。
このままではいけないと思っているのに、このままでも受け入れてくれる人がいる現実に甘んじてしまっている。
人間ってクソほど愚かだ。
中学時代、あんなになんでもなれる気がしていたのに、自分はこの世の全ての才能の原石でしかないと疑うこともなく信じていたのに、今は何がしたいのか、何ができるのか何もわからなくなってしまった。
私の趣味も得意なことも、やりたい学問も、何もわからなかった。進路希望調査にこんなに困ることがあるなんて思わなかった。

入学した時に先生にこの学校はぬるま湯だと言われた意味がわかった。
現状に満足して何も努力しなくなる人が大勢いたんだ、私みたいに。
この先どうしたらいいんだろう。この先があるなんて思っても見なかった。でもこの先を考える方法も、この先について努力する気も、その方法も、全部どこかに忘れてきてしまった。
どうしたらいいんだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?