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役立たずの育児帖

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便利なTo do リストではないけれど、育児を通して感じたこと、見えてきた景色を綴っています。
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2018年8月の記事一覧

涙を贈る

涙を贈る

「子どものころ、自分の部屋に閉じこもってよく泣いた。
不思議と大泣きした後、心は晴れていた。
いつからだろう?ちゃんと泣かなくなったのは。
ちゃんと泣かないのは
ちゃんとおこっていないから。
ちゃんとくやしがっていないから。
ちゃんと笑っていないから。
ちゃんと感動していないから。
ちゃんと愛していないから。
日々の暮らしの中で
面倒臭くなっている大切なことー
思い出すため、涙の粒をつくりました。

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ベビーカーに乗って旅に出るのは私

ベビーカーに乗って旅に出るのは私

すっかりベビーカーのお出かけに慣れてしまった今となっては、少し大げさな表現かもしれないが、初めてベビーカーで街に繰り出した日のことは、忘れられない。
普段何気なく通り過ぎていた、何でもない道が、全く違って見えてくる。
歩道と道路の境目の、ほんの数センチの段差に怒りを覚えた。
いけるだろうとタカをくくって、ベビーカーをグッと押し出した瞬間、ぐわんとつんのめって、息子に衝撃が伝わる。
ごめん、ごめん、

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わがままな母に会いたい

わがままな母に会いたい

母には、もっとわがままでいてほしかった。

キャリアウーマンのはしりで、晩婚のはしり。
38歳で私を産んだ母はよく、
「私は自分の人生を思う存分楽しんだから、あとは子どもたちに全て捧げる。」と口にしていた。

例えばレストランでのこと。
私と兄がどれを頼もうか迷っていると、「お母さんがこっち頼んであげる。そしたら両方食べられるでしょ。」と言って、いつも子どもたちが食べたいものを注文してくれた。

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優先席という名の戦場

優先席という名の戦場

「妊婦」という新しい視点を授かり、
日常の景色が、少し違って見えてきた。

それによって、考えさせられることがたくさんあり、
そのことが、面白くある一方で、疑問に首を傾げたり、
憤りを感じたりすることがある。

その、一つが優先席でのふるまいだ。

妊娠初期は、お腹が目立たず、外目には妊婦とわからないものの、
最も流産の危険性が高く、気をつけねばならない時期だ。

そのため、マタニティマークを身に

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母は子を産むことができるので、父の気持ちわからず。父もまた母の気持ちわからず。

母は子を産むことができるので、父の気持ちわからず。父もまた母の気持ちわからず。

泣いてるのに、
平気で寝てる、
見ててっていってるのに、
見てるよといって、
スマホいじってる、
1秒でも早く帰ってきてほしいのに、
わりとゆったり帰ってくる…

殺意を覚えたという、
友人たちから採取したエピソードの数々。

女は新幹線の速度で母になって行くけれど、男は、徒歩で父になっていく。
という例えを聞いたことがある。

一般的に考えれば、
女性は身体的な感覚を通して、
まさに子を産み、乳

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返さなくてもいい、愛。

返さなくてもいい、愛。

もうずっと昔のことだけれど、
愛と恩返しの関係について考えた。

私は、バリバリの末っ子体質で、
周りの人間にどっぷり甘えて、
ちゃっかり生きてきた。
当時一緒にいた人は、
私とは正反対の、
弟と年の離れた妹のお兄ちゃんだった。

離れて暮らしていたので、
久しぶりに会えたたまの休み、
さぁこれから二人して出かけるぞ!
と、ほくほく楽しみに、
バイクのエンジンをふかした瞬間、
末の妹から、

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母になって、死を意識するようになった。

母になって、死を意識するようになった。

子どもが産まれて、母となり、一番変わったことといえば、
死を意識するようになったことだろう。

いつ死んでも、悲しくて嫌だけれど、仕方がないなぁ・・・
とどこかで思っていたような、ふんわりとした死に対するイメージが、
くっきりと浮かび上がってきた。

それは、
「私が死んだら、この子が路頭に迷ってしまう!」という、
責任感からというよりも(もちろんそれもあるけれど)、
この子が成長していく

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私にはおっぱいが、あなたにはギターが。

私にはおっぱいが、あなたにはギターが。

もしも私の母乳が出なくなったら、
完全に負けると思った。

胎教のためとか意図的にではないが、夫の気まぐれに、
膨らんだお腹に向かってギターの音色を聴かせていたことはある。
お腹の中でよく聴いていたからなのか、
息子はギターの音色が大好きだ。

私が入浴中、
泣き声がして、急いで風呂から上がると、
夫が奏でるギターの音色に耳をすましながら、
ご機嫌でベットに寝転ぶ姿に拍子抜けした。

先日に至

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イタリアからの伝言

イタリアからの伝言

夫の仕事の関係でお世話になった、
イタリアから来日されたご家族と、
会食をした時のこと。

私たちは、5ヶ月、
あちらは、3歳になる息子さんをつれての、にぎやかな時間だった。

基本は英語を使って、
時折、息子さんが話すイタリア語が混ざり合う会話で、
話題は自然と、子育ての話になる。

各国共通の話題といえば、
「夜は寝るのか?」という質問で、
どこの国で生まれても、
苦労する点は同じなんだなぁと

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ワンピースにさよなら

ワンピースにさよなら

幼いころ、

1番好きな絵本は、

「わたしのワンピース」だった。

ワンピース、という単語に

心がぽっと明るくなり、花が咲く。

育児が始まると、

授乳の関係で、

ワンピースが着られなくなるらしい。

女の一生のうちで、

最たる女らしい、

女にしかできない仕事をするために、

最も女らしい、

女の気分をあげてくれる服に

袖を通すことが出来なくなる。

女を脱ぎ捨て、

母になる、と

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感性の土壌をつくる

感性の土壌をつくる

ここのところ、猛暑やら、台風やらで、
なかなか外出できていなかったので、
久しぶりに息子を外に連れ出しました。

うらわ美術館で開催中の
「ぼくと わたしと みんなのtupera tupera 絵本の世界展」へ。

tupera tuperaさんは、
姪っ子が遊んでいた「顔ノート」で知りました。
傑作ですね、本当に面白い!
姪っ子の作った顔に、お腹を抱えて笑ってからというもの、
いつか自分の子

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うれしかった贈り物

うれしかった贈り物

私には、おくりもの上手な友達がたくさんいる。
自分がもらってうれしかったものをくれるだけでなく、
まだ未経験だというのに、なんと気の利いたものや言葉を選んでくれるのかと、
その想像力に感心してばかりだ。

特に、出産や育児は、
経験しないとわからないことが多く、
いくら身近に経験者がいたとしても、
聞くのとするのとでは大違いだ。

それなのに、
私の素晴らしい友人たちときたら、
なんとまあ、こちら

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人生で一番お金をかけるとき

人生で一番お金をかけるとき

出産を機に仕事をやめた。

正規雇用として、働かない生き方を選んできたのだから、すごく当然の成り行きなのだけれど、
時間ができてよく目を通すようになった新聞やウェブ上の記事では、
いかに仕事と育児を両立するか、
待機児童の問題や、
育休後の働き方を指南するアドバイザーの存在やら、
働きながら育児する事が大前提になっているんだと改めて痛感し、
わかってはいたけれど、
どこか疎外感を感じて寂しくなった

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心梳く本たち 1

心梳く本たち 1

5年近く、本に囲まれて働いてきた。
私が務めていたのは古書店で、40年以上前の本が多かったが、
どの本も、いつ読んでも新しい、発見や出会い、感動のあるいい本ばかりだった。
その本たちに、私自身どれほど救われてきたかわからないし、
たくさんの人が、本と過ごす時間を求めて訪れ、
静かに本と寄り添う姿は、なんとも言えず美しい眺めだった。

育児中、本を読む時間をつくることは難しいかもしれない。
だけど、

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