空を泳ぐクジラの歌が聴ける街 #シロクマ文芸部
街クジラの歌が今日も聴こえてきました。
夕方の支度の手を止めて外に出ると、
オレンジと金色で染めた夕焼け空をゆったりと泳ぐクジラがいました。
どこから来るのか?
なぜここに来るようになったのか?
誰にもわかりませんが、夕暮れになると空に姿を現すクジラはこの街の日常です。
そして、街にやってくるので「街クジラ」と
いつの間にか皆でそう呼ぶようになりました。
今日も歌いに来てくれてありがとう。
君の歌はいつも優しいね
そして少し哀しいね
私は心の中から話しかけます。
クジラがぷしゅう〜っと潮を吹きました。
水しぶきは放たれた空で夕日に照らされ、キラキラと細かな水滴となって私に降り注ぎます。
そうすると、クジラの返事が私の心に流れてくるのです。
今日も聴いてくれてうれしいよ
いつも優しくて
でも、少し哀しく聴こえるのは
そんなあなただから。
それから、明日は晴れるけど、
夕方は雨が降るから歌は歌わないよ。
今日の挨拶と明日の天気を伝えると
クジラはゆっくりと向きを変え、山の向こうに泳ぎ始め去って行きました。
クジラが全く見えなくなり夕日が沈んでしまうと
街クジラのステージに夜が幕をおろしに来ます。
私は、ひとり、ステージの余韻に浸りながらしばらくぼんやりして、辺りがすっかり暗くなってから家の中に入りました。
そして、灯りをつけて、ひとり分の夕食の支度の続きを始めます。
写真立ての中で笑っているあの人に
今日のクジラの歌を真似して聴かせながら...
<おしまい>
#シロクマ文芸部 参加作品です。
最後までご覧いただきありがとうございます。
また、部長の小牧さん
今回もお題の準備などなどありがとうございます。
お題の「街クジラ」
最初に思い浮かんだのは細田監督アニメ竜とそばかすの姫のクジラでした。空を泳ぐクジラはファンタジーではポピュラーな設定かなと個人的に思う部分があり、もっと現実的な他の設定も考えていたのですが、やっぱり空を泳がせてしまいましたww
クジラが歌う(鳴く)というのは実在して、
仲間同士コミニケーションをとっているのでは?という研究をTV番組で見た事があります。
実は動画サイトでもそのような音声が公開されていますが実際は少し怖い感じにも聞こえてしまうのが私の個人的な印象です。
でも、海の中も宇宙と同じ位神秘を感じる世界です。
それから、実は今回は以前書いた詩の別の日バージョン(?)的な感じから着想しました。
このご時世、未亡人という表現も、使っていいものかどうなんだと…いまだに悩ましく感じていますが.…(^▽^;)
というわけで、参加部員のみなさまもお疲れ様でした
ご縁がありましたら、また、次の部活動でお会いしましょう。
前回の参加作品↓
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