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授業で教える「まちおこし」の舞台裏〜中学校編〜

先日の金曜日に、朝日中学校2年生で受け持っていた「町の職場をPRするグッズ開発」と題した、ノベルティグッズの開発の授業(中学2年生向け、全4回)が無事に終了しました。

最後の授業にはメディアも3社来てくれて、賑やかな授業ととなりました。その日の夕方に放送されたニュースはこんな感じです。

FNNプライムオンラインのニュース記事はこちらになります。

今年の依頼を受けていた1、2、3学年全ての請負授業がこれで無事完結となったので、今回の記事では、実際に中学生2年生の総合的な学習として行なった地域振興(まちおこし)の授業づくりでポイントにしている事と、今回の授業用に作ったオリジナルのテキストプリント(解説つき)をご紹介します。

オーダーの受け方

授業請負のオーダーは学年主任の先生から、直接いただいています。オフィスが学校内にあるので、休み時間とかに先生がやってきて、相談(会話)ベースでまずお話がきます。

なので、最初の仕事は先生の構想を聞いてそれを企画書にまとめる事が最初の仕事となります。

今回のオーダーは、職場体験の受け入れをしてくれた地元の事業所の中から、中学生をコラボして何かをやりたいと希望する事業所2カ所と、町のゆるキャラ・桃色ウサヒを使ったグッズ制作をしたいので、授業プログラムを考えてほしいというモノでした。

ポイント① 先生とはまず話すだけ、先に依頼書などは作らせない。
気軽さを重視し、まずは話すだけでいい状態にしておくと、企画の構想段階から話してくれるようになる。キチンと書面で依頼されると修正が効きにくい。

優しさゆえの問題点、実際の企画書

今回の場合は、想定される問題点は3つでした。

  1. 職場体験を受け入れてくれた事業所は14社あるけれど、その後にコラボする会社が2社だと、残りの12社と有志2社との関係に何かしら歪みが生じる可能性がある。

  2. 有志2社は、中学校から何かコラボできないかというオファーを受けて、特に具体案が無いまま了承をしている。つまりは利益の見通しがあってではなく、中学校への貢献のためにと善意で受けてくれている。

  3. 上記2つ、関係性や通常業務へ皺寄せで問題が発生した場合、それをリカバリーする方法を中学校側が持ち合わせていない(関係修復や利益の補填)。

学校教育のためという優しさで、受け入れてくれている職場体験や、その発展での新規の授業企画が、このような負担とリスクをもった状態で行われることを避ける事が大切であるという事。
これを依頼者である先生に説明し(僕からの説教っぽくならないよう、もう1名の先生に同席いただいて)了解をもらったのち、職場体験の学びを活かしたグッズ制作というコンセプトだけは必ず盛り込んだ企画書の作成を行うことにGOサインをもらいました。

こうしてできた企画書がこちらです

2年生の授業企画書1ページ目(2ページ名以降は費用見積もりなど)

ざっくりいうと、町内の企業を紹介する缶バッジの制作です。
大きく変えた点は、グッズは14事業所全てで作成する。グッズの制作はするが販売をしない(11月の文化祭での集客用頒布)。という2点です。

なお、この企画書は校長先生と教頭先生、また予算の執行に関わる可能性がある教育員会と町役場を想定して制作しています。

ポイント② 学校が、「子どもたちの学びという善行を盾に、地域の企業や個人に無理を強いる機関」だと思われないことを常に意識して企画を構成する。
特に無条件で協力をしてくれる相手にこそ、感謝や敬意以上に「気遣い」が必要であることを忘れない。

ポイント③  企画書はお金を出してくれる人がOKを出してくれるイメージを持って制作する(それを提出する依頼人の先生が安心して使える武器になるように)

個人作業とグループワークの配分

無事に企画書が通り生徒たちへのガイダンス(面通しを目的に、企画書にはない0回目の授業)も終えていよいよ始まった今回の授業。

授業の流れとしては以下のようになります。

  • 職場体験で知った町内企業のことを振り返る

  • 缶バッジのイラストアイデアを考える → プロが清書を描く → 業社入稿()

  • パッケージ台紙のデザインを考える → グループ内で清書 →校内でプリント量産

  • パッケージング作業

授業の流れとしては、各自に配布したプリントを元に、まずは必ず個人で書き込む時間を作り、その後に同じ職場に体験にいった2〜4人のグループでそれを見せ合いながらアイデアの推敲を行うという形にしています。

初回と2回目3回目に配布したプリントはこのブログのマガジンに読者登録していただくと閲覧&ダウンロードがでいます。

マガジン「まちおこしの舞台裏」登録の方はこの記事の最下部にデータ一覧があります

最初からグループワークにしてしまうと、参加に消極的な生徒がないもしないまま、ただ黙って座っているだけになる可能性があるため、手をうご描く作業の入りは必ず個人での時間をしっかり取るよう心がけています。

ポイント④ グループワークは個人ワークをしっかりやった後にしかやらない。
プリントを利用して個人ワークをサポートし、それを持ち寄る形でグループワークでの議論を活発にしていく。

なお、このプリントを各自でこなすことによって、絵が上手い人、色塗りが上手い人、文章が上手い人、アイデアがいい人など、生徒個々人の能力が発揮できる箇所を複数設け、グループワークでの役割分担のとっかかりにもなっています。

グループワークの様子

貢献とは何か?貢献ゴッコに甘えない

今回の授業は「総合的な学習の時間」の中で全5回(授業数には7コマ)で行っており、学校の方針として地域学習・地域貢献が大きなテーマです(学校目標に準ずる)。また、学校と地域が連携して行うコミュニティ・スクールもその目標実現のために日々の活動を行なっています。

だからこそ、授業を通して大切にしたのは「本当に地域貢献になっているのか?」ということです。授業の始まりで都度確認しながら進めていきました。

何に役立てるのかがはっきりすると、課題が見えやすい

地域貢献は確かに大切だけど、では何が本当に貢献になっているのか?
この授業ははけして大人が用意した「貢献ゴッコ」ではなく、自分達のクリエイティブがちゃんと活かされて結果につながっているのか?それを生徒が自覚しながら各回の授業に臨めるかが評価の鍵になってきます。

最終回となるパッケージの授業で配ったプリントには、貢献の具体的な説明だけでなく、このグッズ制作が完了するまで、誰がどのような働きをして今に至っていのかその全体マップを生徒たちに解説しました。

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学年主任や僕、その他の先生の動きなど、生徒が見えないところの動きまでを解説して、それぞれの仕事をしっかり行う事で、完成に至っていることがわかるマップにしました。

お金の流れに関しても、町が用意していく特色ある教育づくりのための助成金の活用、それが誰に流れていくのかも組み込みました。

なによりもその中心には、生徒たちもいること、それは生徒たちにしかできない役目である事を可視化できるようにこのようなマップにしています。

ポイント⑤ 生徒たちが自らの役割をしっかりと認識するための俯瞰図を提供することで、活動の意味・価値を可視化する。

企業側へのインセンティブ

今回の授業は職場体験の受け入れ企業あっての企画であり、授業の中でもお世話になった企業への恩返しであることを生徒に説明しながら進めていきました。

その体現の方法のひとつとして、制作したバッジのゆるキャラデータは、それぞれフリー素材として14の事業所それぞれに無償配布し、印刷物やWEBなどに自由に使っていただけるようにしてあります。

受け入れ事業所の1つである西松屋菓子店では、さっそくこのデータを新しいお菓子のパッケージに採用しています。

西松屋菓子店のバターサンドにパッケージに採用

このようにな形で、中学校に協力したことによる企業側のインセンティブが発生する事で、中学校の企画に「関わってよかった」を生み出すことを目指しています。

PRグッズをPRすることを忘れない

中学生の職場体験を受け入れてくれた町内事業所をPRするためのグッズを制作した今回の授業。ではそのグッズ自体はどうやってPRするのか?

最後に謎かけ問答のような話になってしまうのですが、結構これって大人も忘れてしまいがちな落とし穴だったりします。PRのためにゆるキャラを作ったけど、そのキャラのPR戦略ができていなくて、人気がないから肝心な町のPRができないなんて事、恥ずかしい冗談みたいですが実際に起きていたりするのが現実です。

実は生徒たちには授業のはじめにこう言ってあります。
「今回はPRグッズを作成する授業なので、そのPRは僕に任せて。」と。

つまりは、授業はあくまでグッズ制作、そのグッズのPRはまったく別物であると説明して切り離しているのです。ではグッズのPRはどうやるのかというと、新聞、メディア向けにプレスリリースを発行して、取材に来てもらっています。

メディア各社に来てもらった最終授業

また、取材されたものは動画で残ることが多いので、それを町役場を通して再度発信して、最終的に今回の目的のひとつ「文化祭への集客」へと繋げることにしています。

なので、5回目の授業では、いまみなさんの周りにいるマスコミの皆さんが、この授業での重要な役割を担っているので(プリントのマップに書いてある)、みなさん積極的にインタビューに答え、笑顔で元気にPRしましょうと言っています。

ポイント⑥ PRグッズにもPRは必要

ポイント⑦ メディア・マスコミも授業の重要なピースであり、それをしっかりと認知する事で、生徒の受け答えも変わってくる。

ちなみにマスコミ向けに配布した事前のプレスリリースはつぎのようなものになります。

プレスリリース1枚目

特に今回のプレスリリースでのポイントは1枚目の黄マーカー部分です。テレビ取材の場合、授業の感想をインタビューするのに、休み時間だけだと間に合わない可能性があるため。上記のような工夫をしています。

プレスリリース2ページ目:完成品のサンプルと授業の様子の写真

プレスリリース2枚目ではサンプル画像などを掲載しました。

取材を受ける生徒の様子

授業の最後に

授業の最後、まとめの時間の最後に話したのは、僕の仕事の話でした。

生徒たちの手元のプリントには、全5回の授業に誰がどのように関わったかが記載された全体マップが図として可視化されています。

「依頼をもらった時、決められた日までに、誰にどのようなことを頼んでゴールまでもっていくのか、この全体図を描く仕事を『企画』といいます。そして、今回そのマップを描く仕事をしているのが僕の会社『まよひが企画』です。」

そう、最後の授業で僕が渡したプリントは、実は僕が一番最初に授業企画を考えたときに書いた設計図・シナリオのプロットだったのです。

僕がやっている企画の仕事をはなかなか他人に説明しづらいです。

人によってはアイデアを出す事が企画だと勘違いしている人もいます。

企画は頭に描いたゴールまでの道筋をしっかりと形にして、何かしらの結果を生み出すことです(もちろん都度軌道修正しながら)。

人とによっては新しいことを生み出す事が企画だという人もいます。

それは企画の一部であるけれど、大切なのは企画を実行することで誰の何を解決できたり、達成できたりするのかが本質です。

今回の授業ではその一端を生徒たちの実習としながらも、最終的には僕の仕事で考えている、頭の中の思考を全体図で見てもらい、「地域振興を行う会社の企画の仕事」を知ってもらうという、職業体験の授業でもありました。

11月3日は朝日町で初となる、町の文化祭と中学校の文化祭が共同で開かれます。今回の授業で制作したグッズのサンプルも展示しますし、会場のアンケートにお答えいただいた方にプレゼンとしても配布予定です(全14種から1個)。

ぜひ今回の成果をご覧いただけたら幸いです。

【使用したテキストプリント & プレスリリース一覧】

マガジン「まちおこしの舞台裏」をご登録の方専用に今回使用したテキストの一覧と、マスコミ向けプレスリリースを公開します。

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348字 / 5画像 / 5ファイル

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