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【本】下園壮太・前田 理香『家族が「うつ」になって、不安なときに読む本』


いま私の近くで心が弱くなっている人がいます。
その人のために、自分がどう動くのか、動かないほうが良いのかを知りたくて、身近な人の心がつらくなっている時の本を読み始めています。

メンタルクリニックにも同席させてもらったりしてお医者様のお話も聞いていますが、やはり、自分のなかで考えを深めていくには、内省しながら知識を得られる読者が一番です。

今回読んだのはこの本です。


これは、いまのところご自身も周りの人もメンタル的にまったく問題がない人も、読んでおくべき本だと思います。

知っておけば、いま世の中にかなりある、メンタル不調に対する知識不足による誤解がゆるむのではないかと思います。

学校で、会社の研修で、この本に記されている以下のようなことが広まっていくことを強く望みます。

うつについてみんなで知っておきたいポイント

・うつ病は「心の骨折」。誰でもかかる可能性があり、徐々に回復し、一見治ったようにみえても回復まではかなりの時間(数年単位も)がかかる。もとのパフォーマンスが発揮できるようになるにはリハビリが必要。

・遺伝以外の他の要素の影響を受けて、うつ病になるほうが圧倒的に多い。

・うつ状態は感情プログラムが一斉発動して、生命を守ろうとしている活動。「不安のプログラム」は原始人が命にかかわる危険を察知するような感覚で、日常生活での出来事に反応してしまう。

・うつで自信が感じられない人に「もっと自信をもちなさい」というのはインフルエンザにかかっている人に「熱があると苦しいから、下げなさい」というようなもの

・好調不調を繰り返しながら回復しているが、周囲には調子の良い時の印象が強くなるため、かなり回復していると誤解しがち。リハビリ期は数ヶ月から数年続くと覚悟する。

・うつのときにインフルエンザなど他の病気にかかると、「いつもよりうつの状態がひどい」と落ち込んでしまうことがある。ほかの病気の可能性もわすれず確認する。

・蓄積疲労には3段階あり、3倍モードのときは疲れやすさも傷つきやすさも3倍。

・うつ状態のときは、結婚などの喜ばしいことでもエネルギーを消耗するため相性が悪い。

・うつ状態のつらい波は明け方に襲ってくる。自殺は4時から6時台の朝方にもっとも多い。「また1日頑張らなければならない」と思っているだけでもつらいことを周囲は理解する。

・うつ状態の人はまた失敗したときの罪悪感・無力感で3倍傷つきながら努力をしている。周囲はそれを理解して見守る。回復過程には、「落ちるところまで落ちる」プチ底つき体験が少なくとも40回はあると思っておく。

・休んでいる時間がながければ、その分回復が進むという単純なものではない。

・周囲は、その人の体調の変化に関心はもっても、一喜一憂せず、話を無理に聞き出すのではなく、話したそうなときには付き合うくらいの距離で。

「うつになる前に」チェックしておくべきことも

本書の最後には、長期戦を戦うための具体的な方法が紹介されています。
周囲を気に掛けるあまり、自分自身の疲労をおろそかにすることのないよう、著者からの気配りを感じます。

たとえば、ライフイベントのストレス得点表でうつを予測するという手段があります。

時間を「楽しく充実した時間だったか、生産性があったか、成長につながったか」という視点で振り返るだけではなく、「きちんと充電できたか」「エネルギーを使いすぎなかったか」という視点でも振り返る訓練もあります。

巻末には、メンタルの状態の「経緯表」の例もついています。

つい近視眼的になり、「昨日より今日はよくなっていそう」などの一喜一憂から助けてくれ、長期戦の心構えもできるようになっています。

最後に

本書には、「本人の大変さをできるだけリアルに想像する」ための材料がたくさん掲載されています。

「うつは弱さではなく、単なる疲労」。

なににどれだけ疲労するかは、ひとりひとり違います。
自分が気が付かないことで疲労していることもあるかもしれません。

誰もがそうなる可能性がある、という前提で、「ではどうすれば?」が考えられる本になっています。

私自身も、不安になったときや近視眼的になったときは、この本が教えてくれることを振り返り、足元を固めたいと思います。

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